The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

Aug 26 - Aug 28, 2015Toki Messe (Niigata Convention Center)
The Japanese Association of Educational Psychology
The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

Aug 26 - Aug 28, 2015Toki Messe (Niigata Convention Center)

[JA01]生徒のLINE利用の課題と解決心理教育の実践から

武田明典1, 小柴孝子2, 村瀬公胤3, 原田恵理子4, 竹内和雄5, 冨田幸子6, 青山郁子7, 河村茂雄8, 嶋崎政男#9(1.神田外語大学, 2.神田外語大学, 3.名護市教育委員会, 4.東京情報大学, 5.兵庫県立大学, 6.兵庫教育大学, 7.静岡大学, 8.早稲田大学, 9.神田外語大学)
企画趣旨
中高生による携帯電話の所持率の増加に伴い携帯,メール,SNSの利用のトラブルが学校において問題となっている。このようななか,ここ数年で急速に拡大しているスマートフォンソフトでのLINEは,メリットがあるものの,グループ内のトラブルやいじめなどの問題が発生することもあり,その特徴である閉鎖性ゆえ,外部の発見が不可能で,また,陰湿化・エスカレートするデメリットがある。この問題の背景には,生徒同士のソーシャルスキルの欠如,携帯依存,携帯利用のマナーを含む情報教育の不足などがあげられる。携帯やスマートフォンは,本来,学校とは無関係であるが,心理教育として学校や家庭教育の一環として取り上げることがますます重要になっている。
学校現場における最新の中高生の携帯・スマートフォンの利用動向の調査に基づき,学校現場における国内や海外の心理教育の実践を紹介することにより,効果的な支援方法を検討していく。

話題提供
1.千葉県における中・高生,教師の現状調査
小柴孝子・武田明典・村瀬公胤
本報告は,生徒のLINE利用について考えるために,まず状況把握のための基礎的なデータとして,千葉県の中学校と教員の意識調査についてである(なお,当日の発表では,高校生の調査も加えた三者比較を行う予定である)。
報告者が調査したA県中学生(2月実施)のアンケートの結果からは,スマートフォンの所有率は57%であった。いつ頃から使い始めたかでは,中学入学頃からが47%と多く,小学生からは26%であった。未所有者43%の半数は,高校1年を使用する予定と答えている。どのような機能・アプリを使っているかでは,1)インターネット検索,2)LINE,3)通話やメール,ゲームであった。携帯・スマートフォンへの不安では,1)犯罪への巻き込まれ,2)個人情報流失,3)携帯・ネット依存である。1日の使用時間は,平均102分であった。いじめを受けたことがあるは,8件で,トラブルがあったときの相談者は,1)保護者,2)友人であった。
中学校の調査では,3月上旬にカウンセリング便りにて生徒へのフィードバック,そして,3月中下旬に教員向け報告書の発行というように,本調査は一連のアクションリサーチであり,かつ,心理教育の一環でもあった。
2月に調査した教員のスマートフォン所持率も82%に及んでいる。教員は,児童生徒がスマートフォンを持つとしたら,高校1年くらいとしている。教員が持っている不安は,1)ネットいじめ,2)携帯・ネット依存,3)犯罪への巻き込まれ,4)不良サイトへのアクセスである。また保護者からの相談を受けたことがあるのは50%で,相談内容は,ネットいじめと友人関係である。児童生徒からのネットいじめについての相談は,38%である。校内での児童生徒向け講習会については,74%が実施している。講師は警察や携帯電話会社などの外部講師によるものである。

2.高校生対象のLINEトラブルを含むソーシャルスキルトレーニング
原田恵理子
情報モラル教育は,知識として学ぶだけでなく実際の行動に結びつくために,自らが考え判断し,行動することが大事であることが大切である。日常的な学習の中で,繰り返して確実に身に付けることが求められるため,学校教育における支援の重要性は言うまでもない。とりわけ,今日的な課題として取り上げられているLINE等のSNSでのトラブルやいじめ等は,自己肯定感や自尊心の獲得,他者への思いやりを育み,自他の生命を尊重し,規範意識や責任感を高め,豊かな人間関係を築くことを目標とする「道徳」と重なる部分が多いことからも,学校教育活動全体を通して学ぶ視点が重要になってくる。そこで,本発表では,総合的な学習の時間と特別活動をつなぐ「道徳」の授業で行った包括的なソーシャルスキルトレーニングを紹介する。千葉県の公立高等学校1年生を対象に行った道徳の授業では,円滑な対人関係の構築とLINE等のトラブルの予防を目的にLINEトラブルへの対応のスキルを含むソーシャルスキルトレーニングを2学期の2か月半をかけて,1年生全クラスを対象に担任が授業を行い,計5回実施された。ターゲットスキルは,1)ソーシャルスキルとは(ガイダンス),2)考えと気持ちを伝えるⅠ(コミュニケーションとは),3)コミュニケーションⅡ(聴く),4)怒りの感情のコントロール,5)あたたかいことばかけ(相手を思いやる)であった。5回目のあたたかいことばかけの回で,LINEのトラブルの内容を例に取りあげている。本発表では,日常生活で相手の立場に立って思いやりのある行動を取ることとネットワークでのコミュニケーションでも相手を思いやる気持ちの大切さは同じであることを教えていくことに焦点をあてたソーシャルスキルトレーニングを教科「情報」と連携させ,系統的に授業を展開させた授業の実践と成果,課題を報告する。

3.関西での子どもたち自身のスマホ対策
竹内和雄・冨田幸子
「ネット炎上」「スマホ依存」「LINEでのケンカ」などの言葉が,頻繁にメディアに登場する。スマートフォン所持率は高校生82.8%,中学生47.4%,小学生13.6%(総務省, 2014)で,急速な普及ゆえに,学校現場での対応は泥縄の状況である。
これまでの携帯電話問題対策は,基本的にはフィルタリングの設定を呼びかけることが中心であったが,スマートフォンの普及に伴い,フィルタリングの設定率が急激に下がり,さらに,フィルタリングが効かない音楽プレーヤー等からの接続も増えたため,新しい対応策が求められている。
ネットいじめ対策も含め,各地で主に大人主体の取り組みがなされている。愛知県刈谷市の「夜9時ルール」等があげられるが,子どもたちには充分に浸透するまでには至っていない。スマートフォンの使い方には子どもたちの方が熟達しており,対策の知恵ももっているので,子どもたちの出番である。今回は,関西での子どもたち自身による多様なスマートフォン対策を報告する。
竹内は,総務省近畿通信局の「スマホ連絡会」で座長をつとめている関係もあり,関西での子どもたち中心のスマートフォン対策に,20近くの実践に関わっている。そこから見えてきた成果と課題について報告する。
特に,今回は2009年から大阪府寝屋川市で,全市の中学校生徒会を集めて,「寝屋川市中学生サミット」の中心として,市全体での携帯電話対策に先駆的に取り組んだ冨田と共に,取り組みの一般化可能性について考える機会としたい。また,新たな形での評価研究を構築中でもあるので,そのあたりについても検討を深めたい。

4.海外の予防教育の動向
青山郁子
本発表では諸外国で実践されている様々ないじめ防止教育の実践を報告する。いじめ対策に国レベルで取り組んでいるフィンランドではKiva という教育プログラムがある。オンラインで自宅からも利用できるコンピューターゲームやバーチャルな学習環境が提供されておりコンテンツは教室での指導内容とリンクしている。
オーストラリアにもインターネットの安全利用に関する教育プログラムが充実している。Bullying. No way!というサイトは,子ども達にいじめに関する基礎知識を教えることを目的としており, 発達段階に応じて異なったコンテンツが容易されている。またサイト内にあるアニメ動画はYouTubeからも閲覧可能でスマートフォン向けアプリも開発されている。またインテラクティブなゲームも提供されており,様々ないじめ場面に対してとるアクションを選択することによってストーリーのエンディングが異なる。
従来の予防的プログラムはリーフレットやDVD教材が学校に配布されていたが,YouTubeやスマートフォンアプリを使用することはコスト削減だけでなく,コンテンツ修正も迅速かつ容易である。オーストラリア政府では予防教育の実践は将来の医療費削減に繋がるとして試算しているが, 今後日本の取り組みの中でも予防教育の視点は多いに参考にできるであろう。携帯電話を持たずに成人する子どもはほとんどいないなかでトラブル発生時に大人たちが慌てて対応するのではなく,トラブル防止のための教育の充実化が望まれる。そしてその教育プログラム効果の科学的測定がこれからの大きな課題であるだろう。