The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

Aug 26 - Aug 28, 2015Toki Messe (Niigata Convention Center)
The Japanese Association of Educational Psychology
The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

Aug 26 - Aug 28, 2015Toki Messe (Niigata Convention Center)

[JA06]教育臨床における認知行動療法の貢献と課題各領域の実践から探る学校教育現場への還元

嶋田洋徳1, 小関俊祐2, 五十嵐友里#3, 和田美佐子#4, 佐藤友哉#5, 相場恵美子#6, 佐藤博子7, 菅野純8(1.早稲田大学, 2.桜美林大学, 3.埼玉医科大学, 4.川越少年刑務所, 5.早稲田大学, 6.新潟大学, 7.新潟市立沼垂幼稚園, 8.早稲田大学)
企画趣旨
認知行動療法(CBT)は,今や非常に多くの実践領域があり,その有効性はいくつもの研究によって実証的に確認されている。そして,これらの実証的な知見に基づき,CBTは既に国庫金を用いて行われる「国施策的な取り組み」にも採用されており,厚生労働省(2010)は,うつ病の治療の際に用いるCBTに基づいたマニュアルを作成しているほか,法務省矯正局・保護局(2005)も,性犯罪加害者の特別改善指導の際に用いる再犯防止指導プログラムをCBTに基づいて作成している。
一方,教育臨床の実践領域においても,CBTの有効性はほぼ揺るぎないものとなりつつある。たとえば,不登校(奥田,2010)や,いじめ(杉山,2010)の問題に代表される個別支援的援助をはじめ,対人関係行動の円滑化をめざした予防的支援(小関他,2009),社会的スキル訓練(小関・高橋,2011),ストレスマネジメント教育(嶋田・五十川,2012)などの集団支援的援助(集団認知行動療法)の実践も数多く報告されている。それらに加えて,教師に対する行動コンサルテーションの枠組みからの援助(小関,2015)など児童生徒に対する間接的援助の実践も報告されており,その形態も多岐に渡ってきている。
しかしながら,これらのさまざまなCBTの実践領域の研究知見を概観すると,それぞれの領域において求められるニーズや,実践現場の固有の事情は異なっている点が多く,これらの差異が結果的に実践効果の差異として顕在化してくることも少なくないと考えられる。そこで,本シンポジウムでは,教育臨床,特に学校教育現場におけるさらなるCBTの機能的活用に向けて,CBTに基づく観点から援助を実践されているさまざまな領域の先生方に,CBTの果たしうる各領域における現状に関する話題提供をいただき,それらの実践の中から学校教育現場に還元できる観点や具体的方法について検討することを目的とする。
なお本シンポジウムでは,精神科領域の実践の立場から埼玉医科大学の五十嵐友里先生,司法矯正領域の実践の立場から川越少年刑務所の和田美佐子先生,地域民間グループの実践の立場から早稲田大学の佐藤友哉先生(国立精神・神経医療研究センターの野中俊介先生の実践を含む),小児脳外科領域の実践の立場から新潟大学の相場恵美子先生,福祉・特別支援教育の実践の立場から桜美林大学の小関俊祐(新潟県中央福祉相談センターの小山正人先生,新潟県福祉保健部の星野諭子先生の実践を含む)から話題提供をいただく。そして,幼児教育・学校教育におけるペアレントトレーニング指導者の立場から新潟市立沼垂幼稚園の佐藤博子先生,学校カウンセリングの立場から早稲田大学の菅野純先生に指定討論をお願いした。

【精神科領域における青年後期の神経発達症群に対するCBTの適用】
埼玉医科大学総合医療センター 五十嵐友里
青年期,特に青年後期に社交不安症をはじめとする不安症やうつ病などの症状を主訴として精神科を受診する患者の中には,発達的な偏りに関する背景的特徴を持っている場合も少なくない。
医療領域における診察やカウンセリングの場面は,1対1の面接構造の中で口頭の反応のみで進められることがほとんどであり,集団の中の行動を観察できない,作業課題等を容易に課すことができないといった制約があることが多い。したがって,診察等は日常生活における社会場面とは大きく異なることから,主訴に大きくかかわっている可能性のある背景的特徴に気づきにくい文脈であるといえる。したがって,主訴に即した直接的な情報収集に加えて,日常生活における適応の様子や主観的な困難感を持つ場面などを丁寧に聴取してスクリーニングを行い,心理検査等につなげることがまずは重要な第一歩となる。
また,日常生活との連続性を踏まえれば,地域リソースとのアクセスを促し,適応可能性が高い場の選定を行うという観点も重要である。その上で,検査結果等を用いて,自らの特徴に関する理解を育む必要がある。その際,生活環境における適応可能性を高めるために,自らの特徴と環境との円滑な相互作用を促すためのスキルの獲得と維持のために,CBTの観点は非常に有用である。

【司法矯正領域におけるCBTの適用】
川越少年刑務所 和田美佐子
平成18年の監獄法の改正に伴い,我が国の刑事施設においても再犯防止施策が制度化され,本格的に開始されている。具体的には,性加害や薬物使用,暴力等の問題に対して,認知行動療法に基づく体系的なプログラムを活用した再犯防止指導が多くの刑務所で実施されており,また,一部のプログラムについては,効果検証により一定の効果が確認されている。
少年院の矯正教育においても,平成24年からは薬物非行を,平成26年からは性非行を対象とする標準プログラムが体系化されるなど,認知行動療法に基づくプログラムの適用は拡大している。こうしたすう勢は,性加害や薬物使用,暴力等の問題行動の背景に学習された認知の偏りがあり,それを是正することによって問題行動の抑制を図るという考え方に基づいている。
なお,プログラム実施に伴い,幾つかの課題が浮き彫りとなっている。例えば,対象者への受講に向けた動機付けの工夫,プログラム実施担当者の育成及び専門性の維持向上,矯正施設を出所した対象者に対する(関係機関との連携を含めた)継続的支援の在り方等について,改善に向けた努力が求められている。

【地域民間グループに対するCBTの適用】
早稲田大学大学院人間科学研究科 佐藤友哉
地域民間グループにおいては,共通の困難感を有する当事者やその家族成員が参加することによって,それぞれに特有の困難感や対処方法を共有できることに特徴がある。本話題提供では,地域民間グループのなかでも,「吃音者支援」と「ひきこもり支援」を対象としたCBTの実践例を紹介する。これらの実践例に共通することは,それぞれの臨床像に合わせて,CBTの中でも比較的新しい観点の具体的手続きを取り入れている点である。まず,吃音に対するCBTの実践例においては,「Acceptance and Commitment Therapy(以下,ACT)」と称される技法が用いられている。ACTは,不快な身体反応を必ずしも減弱せずに,個人の適応やQOLの拡大をめざす手続きである。特に,吃音症状自体は変容が困難であることがあるため,ACTによって,吃音症状を必ずしも減弱しなくてもQOLの向上が期待できる。一方,ひきこもり支援におけるCBTの実践例においては,「Community Reinforcement Approach and Family Training(以下,CRAFT)」と称される技法が用いられている。ひきこもり支援の初期段階においては,ひきこもり状態にある当事者よりも家族の来談が多く,当事者に直接支援を実施することが困難であることが多い。CRAFTは,家族を対象としながらも,間接的に当事者の行動変容を促すことのできる技法として期待されている。

【小児脳外科領域でのCBT的手法の有益性】
新潟大学脳研究所 相場恵美子
子どもに生ずる脳神経外科的疾患は,先天疾患として周産期から脳損傷が明らかな場合と,幼児期や学童期になってから疾病や外傷などで高次脳機能障害を被る場合とに分けられるが,いずれの場合も就学/復学支援が大きな課題である。言語聴覚士として,子どもの認知機能改善のための訓練はもちろんのこと,きょうだいを含む家族への支援,学校への病態説明や配慮のお願いなど,子どもの発達段階に応じて就労に至るまでかかわりを持つことも稀ではない。
この際に重要なことは,当事者である子どもや家族とともに,子どもの成長に重要な役割を果たす学校との効果的な連携であり,医療現場に求められるものは,高次脳機能障害の的確な把握と,具体的で有効な援助方法の示唆であると考えている。脳に損傷がある,という説明だけでは,その子が直面している困りごとを解決することはできない。子どもの生活場面の聞き取りからの機能分析や行動変容のための具体的な声かけなど,CBT的手法や考え方は,分野を問わず,ご家族や学校の先生方にも理解していただきやすく,日々実行していただけることが多い。脳損傷によって,通常とは異なるパターンでの学習経験を積み重ねてしまうことの多い子どもたちに,社会集団へのより適応的な行動を習得してもらい,不適応などの二次的障害を起こさせないためにも欠かせないものと感じている。

【福祉・特別支援教育領域におけるCBTの適用】
桜美林大学 小関俊祐
CBTにおける行動形成や問題行動の変容を目的とした支援においては,三項随伴性を用いた機能的アセスメントを行うことが多い。問題行動に対しては,行動の機能を明らかにし,機能が等しく,比較的望ましい代替行動を設定し,その習得をめざす。これによって問題行動の減弱に直接的に力を注がなくても,適応行動が増加することによって間接的な改善をめざすことが肝要である。その際に,対象児の知的能力などの個人的資源と対象児を取り巻く社会的資源を活用することによって,より大きな効果が期待できる。
福祉の領域において,小山先生は,虐待,いじめ,不登校,非行,発達の遅れなどの問題に取り組むにあたって,家庭と学校および地域機関をつなぐ役割を果たしつつ,具体的な支援を提供されてきた。特に複数の機関が連携する際には,連絡先の交換を行うだけの連携ではなく「機能的な」役割分担を意識し,刻々と変化する状況を踏まえながら,機関が中心となってマネジメントする時期や内容と,学校や家庭にその機能を引き継ぐ時期や内容を意識した実践を行ってきた。
また,星野先生は,重度知的障害者入所施設における生活支援に従事されてきた。具体的な行動形成を考える際には,障害者の有する資源のアセスメントが不可欠であり,それらをどのように「機能的に統合」して包括的な援助手続きとするか,標準化,継続性を意識した実践を行ってきた。当該領域においては,CBTの理論的背景と実践をいかに結びつけるかという観点が重要である。