The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

Aug 26 - Aug 28, 2015Toki Messe (Niigata Convention Center)
The Japanese Association of Educational Psychology
The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

Aug 26 - Aug 28, 2015Toki Messe (Niigata Convention Center)

[JB02]境界横断活動が幼児・児童の拡張的学習・発達に及ぼす影響「カルピス」共同作製・飲用体験の家庭・保育所・小学校間越境的活動の効果

田島信元1, 小谷恵#2, 内田直人#3, 佐野公美#4, 三木陽子#5, 宮下孝広6(1.白百合女子大学, 2.カルピス株式会社, 3.カルピス株式会社, 4.カルピス株式会社, 5.白百合女子大学, 6.白百合女子大学)
企画趣旨
生態学的発達論を展開したブロンフェンブレナーによれば,子どもの学習・発達を推進する生態学的環境には,子どもと他者間の直接的な相互作用システムである「マイクロシステム(家庭・近隣・学校等のシステム)」を基盤に,「メゾシステム(家庭,近隣,学校等の間の関係性のシステム)」,「エクソシステム(マイクロ,メゾシステムに影響を与える夫婦関係や親の職場,近隣・学校活動を支える背景的な対人システム)」,「マクロシステム(マイクロ,メゾ,エクソシステムに影響を与える家族形態,近隣形態,学校形態等の制度的システム)」があると主張し,とりわけ,あるマイクロシステムにおける体験を異なるマイクロシステムで再体験するメゾシステムの「越境的相互作用」機能が,マイクロシステムの体験そのものの定着と発展に大きく寄与すると指摘する。
また,ヴィゴツキーの活動理論の流れを汲むエンゲストロームも,子どもを取り巻く複合的な相互作用システムを想定した上で,異なるシステム(領域)間で再学習する「境界横断」体験が拡張的学習を促進し,学習・発達の根底的基盤となることを主張している。
ここで重要なことは,越境性や境界横断は何も異なるマイクロシステム間の横断的活動だけを意味するものではないということである。境界横断的活動が子どもや生徒の学習・発達を促進するメカニズムとして働くとすれば,まずは,基本単位のマイクロシステム内でどのような活動が生起しているかを考えてみる必要がある。乳幼児期に典型的に見られることであるが,子どもが独力では達成できないことは,周りの大人や仲間たちと共同的作業を行いながら,その共同作業という社会的活動領域そのものを子ども自身の内に取り込んで,自己内領域において,子ども自身が大人や仲間がとっていた役割を果たしながら,共同作業を自立的に再構築するというプロセスがある。ヴィゴツキーはこうしたプロセスを“認知活動は最低二度起こる。はじめは社会的側面で,後に個人内側面として現れる”と説明し「文化的学習・発達の一般的発生原理」として定式化しているのである。
これはまさに子どもが親から自立していく発達過程を示している。自立化の過程は,最初,子どもにとって完全に親からの養育的活動を受けて世の中のことを知る段階から,徐々に,親の養育的活動の一部を任いながら親との共同作業を通して,改めて世の中のことを再認識する段階を経由し,最終的には,完全に子ども自身が親の役割を取りながら,自立的に自己内領域において再認識し,その表現として,これまで親に依存していたことを,今度は自分で親にやってあげるという段階に至ると考えられる。
そして,これらの段階を移行するのが,「他者の役割の再構築」であるが,バフチン理論で強調されるように,再構築とは決して他者の役割の単なる模倣ではなく,子ども自身の発想と他者の発想との闘争の結果,成立するものであり,まさに,親を受け入れつつ,親を乗り越える双発的,創造的過程なのである。
その意味では,すでにマイクロシステムの内部において,親の養育の受容を通した認知活動領域から,親との共同作業を通しての親の役割を取得した認知活動領域を経て,親に対する「返礼」体験を通しての子ども独自の発想を含む認知活動領域に至る3段階(過程)の「社会―自己」領域での横断的活動が行われて,その結果,子どもにおいて,新しい,しかも独創的な学習・発達(自立)が成立しているのである。
すると,マイクロシステム間の領域横断的活動(メゾシステム)では,基本的にはマイクロシステム内で生起している過程と同様の過程が生起している可能性がある。また,各マイクロシステム(家庭・地域・学校)独自の文脈的特徴を背景とした活動間での相互的な再構築による独自の過程が生起している可能性も考えられるが,詳細は必ずしも明らかになっていない。
また,こうした境界横断的活動の成果は拡張的学習としてエンゲストロームにより定式化されているが,具体的,実践的な領域での成果については,限られた知見に留まる現状にある。
そこで本シンポジウムでは,カルピス株式会社が社会貢献事業推進の一環として行っている「カルピス」親子共同希釈・飲用体験効果に関する基礎研究推進活動〔家庭内境界横断(作ってもらう⇒作ってあげる)活動〕と,地域の高齢者と保育園児間の共同希釈・飲用体験推進活動〔家庭⇔保育所,ないし保育所内境界横断活動〕,小学校での乳酸菌をテーマにした小学生向け出前授業活動〔家庭⇔小学校,ないし小学校内境界横断活動〕という3つの活動をとりあげ,それらに共通ないし独自的に見られる現象を検討することを通して,子どもの越境的(境界横断的)体験の構造と機能について考えてみる。
なお,指定討論として三木氏には自立過程のモデル,宮下氏には拡張的学習という観点から境界横断的活動について論じていただく。

「カルピス」の親子共同作製・飲用体験の特徴と効用
小谷 恵
希釈タイプの「カルピス」を親子で一緒に作って飲む活動について,幼児期(前期:3-4歳児,後期:5-6歳児),児童期(前期:小学1,2年生,後期:小学4,5年生)の子どもと親を対象に収集した年齢横断的,かつ3回にわたる短期縦断的観察データから,コミュニケーション・ツールとしての独自性とその効用について検証した。その結果,3回の活動の間に,親からの情報を取り込み,子の学習が推進される自立化の過程が認められ,親子の嬉しさ・満足感へつながる状況が示唆された。児童期後期では,作製時に算数の課題へ話題が広がり,日常生活への応用に発展するなど,学校と家庭間での学び直しを促進するツールとしての可能性が示唆され,メゾシステム推進役としても期待される。

「カルピス」と読み聞かせ体験を通じた地域交流活動の実践
内田直人
地域の保育園児と高齢者を対象に,「カルピス」共同作製・飲用と絵本読み聞かせ活動という複数のコミュニケーション・ツールを組み合わせた交流会を開催し,地域交流活動に及ぼす媒介効果について検討した。観察による行動評定,保育士と高齢者へのアンケートの結果,「カルピス」共同作製・飲用が,子どもの積極性を促し,読み聞かせ活動での円滑なやり取りにつながる等,良い影響がみられた。保育士からも「カルピス」を介した高齢者との交流による園児への影響について肯定的な回答が多く得られた。簡便に作製でき,子どもから高齢者まで一緒に取り組める「カルピス」の特徴から,世代をつなぐツールとしての有用性も考えられた。

乳酸菌をテーマにした小学生向け出前授業の実施
佐野公美
自然の恵みである生乳や乳酸菌から,発酵という自然の力を活用してつくり出された「カルピス」を通じて,ヒトが古くから利用してきた発酵のしくみや,乳酸菌に秘められた可能性を伝える,小学生向け出前授業を実施。5-6人の児童に対し,様々な部署の社員が1人ずつ付くことで,社会で働く大人と関わりながら議論を行う場をつくり,『考える力』を引き出している。コミュニケーションを取りながらサポートし,内容理解を深め,五感をつかった体験を多く取り入れ,しょくいく(食育と職育)と理科の2つの視点から育成支援にあたっている。児童からは顕微鏡観察を通じ「身近な飲み物にも理科がかくれていることがわかった」など知的好奇心を感じさせる意見が多く,教員からは「各グループに社員がつくことで,普段活躍できていない子が,楽しそうに活躍できていた。」など肯定的評価が得られた。