The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

Aug 26 - Aug 28, 2015Toki Messe (Niigata Convention Center)
The Japanese Association of Educational Psychology
The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

Aug 26 - Aug 28, 2015Toki Messe (Niigata Convention Center)

[JE02]学級集団の状態と学力定着の関連

武蔵由佳1, 河村茂雄2, 伊佐貢一3, 藤原祐喜4, 水谷明弘5, 苅間澤勇人6(1.盛岡大学, 2.早稲田大学, 3.魚沼市教育委員会, 4.甲州市立塩山中学校, 5.三重県警察, 6.会津大学)
【企画趣旨】
日本の学校教育は「メンバーが固定された学級集団で,生活や様々な活動,授業に取り組む」という制度と,「教師が,学習面とガイダンス・生徒指導面を統合的に指導する」という制度を合わせもっている(河村,2010)。学校における教育実践は学習指導とガイダンス(生徒指導)のどちらか一方ではなく,常にトータルな視点で考えなければならない。よって,児童生徒の人間関係を建設的に形成し,学級集団を良好な状態にすることは,学習面と生活面の両方の教育効果を高める前提条件となる。実際に,①学級生活満足群,②非承認群・侵害行為認知群,③不満足群の学習意欲を比較すると,学力偏差値がSS50以上,SS35~49,SS34以下のどの層の児童生徒においても,①>②>③の順で得点が高かった(河村,2015)。つまり,能力の高い児童生徒でも学級生活に不満足感を持つと学習への意欲が高まらず,持っている力を発揮できない状況に至ると考えられる。さらに,不満足感を持つ児童生徒が多くなれば,学級崩壊の様相を呈し,「学級集団が授業に適した環境になっていない」状況で多くの時間を過ごすことになる。この問題を抱えてしまっては学習面でどんなにいい教材を用意しても発問の工夫をしても効果があがらない。つまり,学級での一斉の学習指導も,学級集団の状況という環境要因に影響を受けるものなのである。
本シンポジウムでは,学校現場に介入に入っている先生方に,「学級集団の状態と学力定着」に関連して,学級・学校の教育実践課題をどのように分析し,それに応じてどのような対応を行ったのかについて報告してもらい,効果的な教育実践のあり方について検討したい。まずシンポジストの先生方に話題提供をしてもらい,それを受けてフロアの皆様がグループごとに意見を交換しあい,その結果を全体で検討する,という参加者ができるだけ多く発言できるような構成的な展開を考えている。

【話題提供】
1.小学校における学力向上と学級集団づくり
(伊佐貢一)
学級集団の状態が,学力,いじめの発生率,特別支援教育をめぐる問題等に影響を及ぼしていることが実証的に明らかになっている(河村, 2007)。そこで,学校の全学級を建設的でまとまりのある親和的な学級集団にすれば,学校経営上の多くの課題が解決に向かい,教育実践の成果が上がるという仮説を立て,学級集団づくりに学校体制で取り組んだ。
その結果,学力が向上し,特別支援教育をめぐる問題が減少した。生徒指導上深刻な問題はほとんど発生しなかった。教職員は,本来の教育活動に専念することができ,教務室は,教職員の子どものことに関する会話であふれていた。子どもたちが家庭で伝える話や学校の諸活動の参観を通して,保護者の安心感や学校への信頼感を高めることができたと思われる。
今回の取組は,成果をあげている学校の共通点(河村,2011)に合致していることが多いことが後で分かった。まず,学校で気になっている問題を整理して,課題として絞り込む。課題を解決する具体的な対応策や方法を明らかにし,それを展開する組織やシステムをつくる。実践目標を決めて,PDCAサイクルを機能させながら取り組む。これらを,教職員組織の「共通認識」の中で推進した実践について,話題として提供したい。

2.中学校における学力向上と学級集団づくり
(藤原祐喜)
本校では,「意欲的に学ぶ集団づくりと授業改善」をテーマに校内研究に取り組んできた。具体的には,「学級集団づくり」を基盤として,学力向上を目指していくものである。理由は,河村・武蔵(2008a,b)による先行研究が,学級集団の質と学力の向上には正の相関関係を有するということを示唆しているからである。
また,本校の管轄である甲州市教育委員会は,「確かな学力育成プロジェクト」を立ち上げてから4年目になる。早稲田大学河村茂雄研究室のサポートを受けての本校及び市内全小中学校の取り組みについて報告する。
まず,「学級集団づくり」として,hyper-QUを活用した学級集団分析(K-13法簡易版)を実施し,学級の状況を客観的に把握する。この分析結果を「アタックシート」にまとめ,全市内の小中学校で共有化した。学級集団づくりを行う上での具体的な方策として,ソーシャルスキルトレーニング(以下:SST)や構成的グループエンカウンター(以下:SGE )を全校で,意図的・定期的に実施した。「グルグルSGE トキドキSST」と名付け,生徒の人間関係や集団生活の形成に必要とされる「対人スキル」の育成をねらいとした。次に「授業改善」として,「授業の構造化」を取り入れる中で,学級集団にあった授業展開を行い,「構成スキル」「展開スキル」といった「授業スキル」の育成をねらいとした。この実践は,家庭学習の定着にも効果があった。生徒個々への対応として,「Q-U式座席表」を作成し,生徒の所属群ごとに言葉がけを変えていく取り組みを全教科で行った。生徒の人間関係の充実は言語活動の充実にもつながると考えられ,以上の取り組みについて紹介したい。

3.高校における学力向上と学級・学校経営
(水谷明弘)
事例紹介校は,2010年度に初めて2学級でhyper-QUをモデル実施し,学級生活不満足群,被侵害行為認知群に属する生徒を中心として個人面談等で支援する学級経営を行った。担任から個人面談での助言が行いやすくなったとの認識を受け,2011年度から全27学級で本格実施した。河村・武蔵による先行研究(2008a,b)から,親和性のある学級集団では,生徒の持っている能力以上に学力が向上し,定着するという知見があることから,取り組み目標として「学級集団づくりを基盤とした生徒一人ひとりの学力向上」を目指した。
hyper-QUを活用した学級集団づくり,教育課程に位置づけたSSTの定期的な実施により,教育指標である進学実績のさらなる向上が見られた。しかしながら,三年間継続した学力向上には課題も残ることから,学力成績層別に生徒一人ひとりに適合した指導助言を行う,ということを目標に,hyper-QUと学力偏差値のクロス集計を活用して,生徒の学習意欲の低下を防ぐ取り組みに力を入れたことにより,課題であった継続した学力向上にも改善が見られた。
進学校では,週刊誌等のマスコミ報道の影響もあり,最難関大学の合格実績に一喜一憂する姿がよく見られるが,在籍する全ての生徒の学力向上が教育の本質であり,そのためには親和性のある学級数団づくりは必要不可欠であると考える。2012年度入学生の取り組みを中心に話題提供を行いたい。

4.狛江市における学力向上の取組
(苅間澤勇人)
平成24(2012)年度から平成26(2014)年度までの3年間,東京都狛江市教育委員会と早稲田大学教育学部河村研究室等が連携して,心理尺度を用いた課題分析に基づいた教育実践が行われた。教育委員会の取組みは拠点校の設定と他県の先進校の視察,年間を通した教員研修プログラムであった。その研修を受けて学校毎に主題が設定されて教育実践が行われた。河村研究室では教育委員会と各学校に講師を派遣して教育実践をサポートした。その教育実践の成果は全体として,①不登校問題,②学力問題,③学級集団の状況,④いじめの予防,⑤特別な支援の必要な児童生徒の学級満足度と意欲等で平成23(2011)年度と比較して改善した。成果と同時に今後の課題も明らかになった。それは取組みに学校差,同じ学校内での学年差がみられたことである。つまり,課題分析に基づいて作成された指針を学校の教員の組織的な取組みに展開できたかどうかが成果に影響していると考えられるのである。教育実践の成果を向上させるために,良好な教員組織をどのように形成していくのか,またどのような組織的取組みが求められるのか,という課題である。
当日は,教育委員会と学校毎の具体的な取組みとその成果,さらに授業コンサルテーションにおいて,筆者が教員の抵抗をどのように低減させながら助言したか等を話題提供する予定である。