The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

Aug 26 - Aug 28, 2015Toki Messe (Niigata Convention Center)
The Japanese Association of Educational Psychology
The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

Aug 26 - Aug 28, 2015Toki Messe (Niigata Convention Center)

[JE05]文系学生に対する心理統計教育因子分析の教え方

山田剛史1, 村井潤一郎2, 寺尾敦3, 杉澤武俊4, 尾崎幸謙#5, 服部環6, 小松孝至7(1.岡山大学, 2.文京学院大学, 3.青山学院大学, 4.新潟大学, 5.筑波大学, 6.法政大学, 7.大阪教育大学)
企画の趣旨
心理学研究を遂行する文脈(例えば,質問紙の尺度構成など)で,因子分析は重要な役割を担う。心理学を専攻する学部生の卒業論文においても,因子分析はよく用いられる統計的方法といえるだろう。今回のシンポジウムでは,因子分析,特に探索的因子分析に焦点を当てたい。
3名の話題提供者は,いずれも心理統計を専門とする研究者であり,心理学領域を専攻する学生の研究指導の経験も豊富である。3名が普段教えている学生は,経営学を学んでいる社会人大学院生,教員志望の国立大学生,臨床心理学を専攻している私立大学生と,様々である。そうした様々なバックグラウンドを持つ学生達に対して,話題提供者はどのように「因子分析」を教えているのだろうか。本シンポジウムでは,そうした個別具体的な指導事例について取り上げていく。
具体的な話題提供の内容は,①経営学における,潜在変数を用いた手法の重要性,②因子分析の概念・原理の解説とRを用いた分析実習,③重回帰分析と関連づけた探索的因子分析の説明,を予定している。
話題提供の後,幼児期・児童期の発達心理学を専門とし,自らも尺度開発の研究を行い,因子分析を用いた卒論の指導を行っている指定討論者から,3名の話題提供に対してコメントをいただく。続いて,フロアとの意見交換を通じて,「因子分析の教え方」に関する議論を深め,情報共有を行うことで,心理統計教育の改善に寄与するセッションとしたい。

経営学を学ぶ学生に対する統計教育
尾崎幸謙
筑波大学大学院ビジネス科学研究科経営システム科学専攻では,有職社会人に対して,実践的な問題解決力を養うための教育を行っている。学生の平均年齢は30代半ば~後半であり,学部での専攻は経済・経営のみならず多岐に渡る。本専攻は,戦略・組織,マーケティング,会計,ファイナンス,オペレーションズ・マネジメント,統計,知識・情報技術,システム・ソフトウェア開発という8つの柱を持っており,統計はその中でも他の柱との関連が深い。また,昨今のビジネス現場でデータ分析力の必要性が急激に高まったこととあわせて,多くの学生は統計学に強い興味を持っている。
専攻内には,統計関係の科目がいくつかあるが,ここでは話題提供者が行っている「データ解析」「多変量解析」「統計モデル」の内容について,授業における工夫も交えつつ説明を行う。なお,すべての科目は,5回完結(1回につき,75分×2コマ連続)である。また,必修科目ではない。
「データ解析」は,いわゆる初等統計にあたり,平均,分散,相関などの基本統計量に加え,各種検定と単回帰分析までを範囲としている。「多変量解析」では,「データ解析」の復習,重回帰分析,クラスター分析,主成分分析,ロジスティック回帰分析,分散分析などを教えている。「統計モデル」は,探索的因子分析および共分散構造分析を内容としている。
すべての授業はPCルームではなく講義室で行っているが,データ分析の課題をほぼ毎回課している。「データ解析」はエクセル,「多変量解析」はRを使用している。課題はすべて採点し,次の授業で返却するとともに講評を行っている。講評も含め,復習に対してある程度の時間を毎回割いている。 「統計モデル」と他2科目との違いは,潜在変数を扱っていることである。経営学でも人を対象とした組織論や消費者行動論などでは潜在変数という考え方が必要となる。その際の教え方などについても話題提供する予定である。

概念・原理の説明からRによる分析実習まで
杉澤武俊
本話題提供では,現在本務校で実施している授業の実践例について紹介する。この授業は,原則として前年度までに記述統計および検定に関する講義を1年間受けた学生を対象に,回帰分析と因子分析を中心とした多変量解析の講義と,Rを用いたデータ分析の実習を含んでいる。受講生は教員養成系学部で心理学を専攻している学生である。半期15コマのうち,因子分析については理論の講義2~3コマとデータ分析実習1コマをあてている。教科書は特に指定せず,配布プリントと板書を中心に授業を進めている。
理論の講義では,まず導入として因子分析による尺度構成を行っている論文の結果を記述した部分を配布し,手法の全体像と,出てくる用語を概観する。次に,以下のような例を挙げながら,段階的に因子分析モデルの導入を行う。
例1:全ての変数間の相関係数が1.0である
例2:相関係数が全て1.0である変数群が2つあり,変数群間では無相関である。
例3:全ての変数間の相関係数が.81である。
これらの例を通して,共通因子,因子負荷,因子間相関(直交・斜交),独自因子の解説を行う。その後,最初に提示した研究例の記述と対応させて共通性・独自性,因子パタン・因子構造・準拠構造,因子寄与,推定法(最尤法・最小二乗法・主因子法),因子の解釈と回転(バリマックス・プロマックス)などについて解説を行う。理論の講義では可能な限り手法をブラックボックス化させないように原理のイメージを持たせるよう心掛けているが,十分な時間をとれず最低限の用語解説がメインとなってしまっているのが現状である。
Rを用いたデータ分析実習では,和田(1996)のBig Five尺度から各下位尺度5項目ずつ抽出したものと,小松・向山・酒井・西岡(2012)の擬態語性格尺度を合わせた55項目について,受講生に自分自身の性格と担当教員の印象について評定してもらったデータを用いている。このデータは安定して単純構造に近い結果が得られるので,初学者に対する導入としては都合が良いと思われる。しかし,学生が卒論等で実際に因子分析による尺度構成を行うときのことも考え,明確な結果の出にくいデータを使って試行錯誤させる課題にも取り組ませている。

心理データ解析Ⅰ・Ⅱと因子分析
服部 環
「心理データ解析I・II」(2科目とも必須科目)の受講生は現代福祉学部・臨床心理学科に在籍する2年生約90名である。2科目とも受講生を2班に分け,パソコン教室を利用して授業を行っている。2班には同一の教材を用意し,同一内容の説明と実習を行うように心掛けている。
前期の「心理データ解析I(2単位)」では平均,分散と標準偏差,共分散と相関係数,連関係数などの基本的な記述統計量,標準得点,(標準)正規分布,単回帰分析を説明する。統計量の説明に数式を用いた場合は,図を併用して統計量の基本的な概念を伝えるようにしている。5回のレポート課題を課すので,受講生のUSBメモリにR言語(R Development Core Team, 2012)をインストールし,パソコン教室以外でもR言語を利用できるようにしている。
後期の「心理データ解析II(2単位)」では分散,1・2標本の平均値,相関係数,連関などに関する検定,1・2要因の分散分析とその事後分析,重回帰分析,そして,探索的因子分析を説明する。探索的因子分析は潜在変数から観測変数を予測するモデルであるから,重回帰分析を説明した後に,重回帰分析と関連づけながら因子負荷量,共通性と独自性,因子数の決定方法,寄与,初期解と直交解と斜交解,因子間相関を説明することにしている。教材として学力テストの探索的因子分析,そして,R言語を用いた実習にはpsychパッケージ(Revelle, 2013)を利用している。探索的因子分析は質問紙尺度を作成する際に利用されることが多いので,そうした研究論文の一部を紹介し,実際の使われ方と報告方法などを説明している。後期も5回の課題を課すが,探索的因子分析に関しては,WISC-IVの評価点データもしくはパーソナリティ理論のビッグファイブデータの探索的因子分析を行い記載見本に倣って因子負荷量,共通性,因子間相関,寄与,簡単な考察などを報告するよう指導している。

文 献
R Development Core Team (2012). R: A language and environment for statistical computing.
Revelle, W. (2013) psych: Procedures for Personality and Psychological Research.

本研究・発表は,JSPS科研費26380886の助成を受けたものです。