The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

Aug 26 - Aug 28, 2015Toki Messe (Niigata Convention Center)
The Japanese Association of Educational Psychology
The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

Aug 26 - Aug 28, 2015Toki Messe (Niigata Convention Center)

[JF04]高校生のキャリア教育とクリティカルシンキング

池田まさみ1, 宮本康司#2, 平田威也#3, 田中麻未4, 沖林洋平5(1.十文字学園女子大学, 2.東京家政大学, 3.新潟県立高田高等学校, 4.千葉大学, 5.山口大学)
企画主旨
近年,キャリア教育は,「一人一人の社会的・職業的自立に向け,必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して,キャリア発達を促す教育」と再定義され(中央教育審議会答申,2011),その具体的能力として,「基礎的・汎用的能力」(人間関係形成・社会形成能力,自己理解・自己管理能力,課題対応能力,キャリアプランニング能力の4能力)があげられている。特に,社会人・職業人としての自立が迫られる時期にある高等学校におけるキャリア教育の充実は,喫緊の課題である。しかし,現場では,キャリア教育に対する共通理解や具体的な教育方法はいまだ途上の段階にあり,議論や検討の余地が残されている。
学校教育のなかで,基礎的・汎用的能力をいかに育むか。キャリア発達は,知的,身体的,情緒的,社会的発達とともに促進されるものであり,基礎的・汎用的能力は,まさに「生きる力」の根幹とされている。近年,生きる力は,「クリティカルシンキング態度」や「情報活用能力」とも密接に関連することが示されている。池田・安藤(2011)は,中学生向けのクリティカルシンキング授業を実践するなかで,適切なスキル・知識の習得が,生徒自身の思考や態度に影響し,その結果,主体的かつ社会的な行動変化をもたらす,という一連の発達プロセスを確認した。この結果は,高校生のキャリア発達においても,クリティカルシンキング態度の育成が重要であることを示唆するものである。すなわち,高校生向けのクリティカルシンキング教材や教授法を開発することは,将来,高校生の「社会に生きる力」を育むキャリア教育カリキュラムの開発につながる可能性がある。
本シンポジウムでは,高校生のキャリア教育に焦点をあて,主に以下の4点,⑴高校生向け「クリティカルシンキング」教材の開発,⑵開発教材を用いたクリティカルシンキング授業の実践,⑶クリティカルシンキング態度と精神的健康や問題行動との関係,⑷キャリア意識とクリティカルシンキング態度との関係,についてそれぞれ研究報告を行う。
高校生のキャリア意識とクリティカルシンキングがどのような関係にあるのか,クリティカルシンキング教材や授業実践の効果,および,心理的側面の観点から総合的に考察し,高校生の効果的なキャリア教育のあり方について議論する。

高校生向け「クリティカルシンキング」教材の開発研究
宮本康司
学校教育のなかでは,キャリア教育に関する統一的な教材やカリキュラムはなく,キャリア教育といえば,勤労観・職業観の育成に焦点が絞られ,社会的・職業的自立に必要な能力育成がやや軽視されてきた感がある。たとえば,体験学習は盛んに行われているが,一過的な職場・職業体験だけでは,生徒が根本的に「社会に生きる力」を身につけることは難しいと考えられる。
そこで,本研究では,基礎的・汎用的能力の涵養を視野に入れ,高校生向けのクリティカルシンキング教材の開発を行った。開発のポイントは,生徒に「自分の思考を思考する(メタ認知)」課題(トレーニング)を体系的に設定し,最終段階では,進学志望理由書の作成(主体的な選択や判断)につなげる点である。課題は段階的に,i)自らの思考の「クセ」に気付く,ii)論理的に考える,iii)因果関係を正しくとらえる,iv)自らの伝える力を知る,v)表現力を高める,とした。授業は全5回(1年時2回,2年時3回)であった(2013年7月~2015年2月)。1回目のみ講演による一斉形式とし,2~5回目はクラスごとに担任教員が同時に同じ授業内容を実施した。授業の最後には,毎回,「思考のふりかえり」を行い,生徒は,感想(自由記述),課題に対する自己採点(4段階),および,自分の「態度」「知識」「技術」「表現」「理解」の度合(5段階)を記入した。
本発表では,今後の教材展開に向けて,「思考のふりかえり」(自己採点)をもとに,課題の難易度やワークブックの構成,また,教員用の授業手引きの操作性などについて見直しと検討を行う。

高校生向け「クリティカルシンキング」教材を用いた授業実践
平田威也
新潟県立高田高等学校では,2013年よりSSH(スーパーサイエンスハイスクール)の指定校として,「高い倫理観と深い探究心を持ち,課題解決力を備えた国際的科学技術人材の育成を図る」という目標のもと,研究活動をスタートさせた。目標を達成すべく5つの事業のひとつに,「科学的探究心,論理的思考力,英語の表現能力を養う学習プログラムの開発」を設定し,そこでは,「クリティカルシンキング」を鍛えると同時に,将来,生徒が主体的に進路選択や意思決定できるようになることを目指している。
課題遂行にあたり,大学と連携し,高校生向けに開発された教材を用いて,約1年半にわたり,定期的にクリティカルシンキング授業を実践してきた。授業は,普通科理数科共通で,「総合的な学習の時間(MSB:ミラクルサイエンスベーシック)」に実施した。本発表では,授業時の生徒の様子や実際に授業を担当した教員からの意見,また,生徒の「思考のふりかえり」(感想)などを踏まえ,高校生のクリティカルシンキング教育における課題の整理と今後の授業展開について検討する。

高校生の抑うつとクリティカルシンキング態度との関連
田中麻未
近年,クリティカルシンキングの育成は,メディアリテラシー教育,言語技術教育,消費者教育や看護教育などキャリア発達に関わるさまざまな分野で重視されてきている。加えて,クリティカルシンキングという認知的側面の発達は,これらの理論的・実践的な分野における関わりだけでなく,心理的側面である精神的健康や問題行動にも影響を及ぼすと考えられる。たとえば,女子大学生を対象に,クリティカルシンキング態度とストレス反応との関連を調べた研究(池田ら,2015)では,批判的な思考態度のひとつである「探究心」が高くても,できるだけ多くの立場からものごとを考えるなどの「不偏的な思考」が低いと「抑うつ・不安」や「不機嫌・怒り」を高めること,また「決断力」の低さは「無気力」を高めることが報告されている。これらの結果から,高校生のうちからクリティカルシンキングを育成することは,精神的健康の保持・促進や問題行動の低減にもつながることが期待される。しかしながら,クリティカルシンキングが心理的側面に影響を及ぼしているのか,あるいはその逆方向の影響が見られるのかについては十分な検討が行われていない。
そこで本発表では,心理的側面の測定変数として「抑うつ」に焦点をあてて,抑うつとクリティカルシンキング態度との関連における因果関係を検証する。そして,高校生の精神的健康や問題行動を考える上でのクリティカルシンキング態度の位置づけについて考察する。

高校生のキャリア意識(進路選択に関する自己効力感)とクリティカルシンキング態度との関係
池田まさみ
クリティカルシンキングは,児童・生徒の「生きる力」,大学生の「学士力」,「社会人基礎力」に共通する重要な力である。近年,次代を担う人材が身に付けるべきスキルとして提唱された「21世紀型スキル」には,これからのグローバル社会を生き抜くために求められる一般的能力として,問題解決能力,コミュニケーション能力,コラボレーション能力,情報リテラシーと並び,「批判的思考力」が明示された。まさに,クリティカルシンキングとキャリア教育とは切っても切れない関係にあると言えよう。しかし,クリティカルシンキングがキャリア教育における基礎的・汎用的能力とどの程度関連しているかは不明である。また,クリティカルシンキングという認知的側面の発達が進路選択などのキャリア意識やその発達にどのような影響を及ぼすかについての検討も不十分である。
本発表では,高校生を対象に行った調査結果(2014年6月,2015年3月)をもとに,まず,クリティカルシンキングと基礎的・汎用的能力の関連を検証し,次に,クリティカルシンキング態度とキャリア意識(進路選択に関する自己効力感)について因果分析を行う。最後に,それぞれの研究報告を踏まえ,高校生のキャリア教育の今後の展開について議論する。