The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

Oct 8 - Oct 10, 2016Sunport Takamatsu / The Kagawa International Conference Hall
The Japanese Association of Educational Psychology
The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

Oct 8 - Oct 10, 2016Sunport Takamatsu / The Kagawa International Conference Hall

[JA04]保育・教職キャリアを支える対人関係資本資格・学位,グローバル化,能動的学修・教授,健康を推進するためのヒント

高木亮1, 福井広和2, 門原眞佐子3, 丹生裕一#4, 長谷守紘5, 西山久子6(1.就実大学, 2.就実大学, 3.就実大学, 4.就実大学, 5.愛知県西尾市立佐久島中学校, 6.福岡教育大学)
企画趣旨
(高木 亮)
 平成27年12月21日に3つの中央教育審議会答申が示された。『新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について』(以下『開かれた学校』答申)と『これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について』(以下,『教職キャリア』答申),『チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について』(以下『チーム学校』答申)である。『開かれた学校』答申は人口減少社会に入った我が国において学校が地域と支えあうという文脈を加えている。『教職キャリア』答申では教員養成と現職研修を統合しつつ,学位取得などの一層の推奨や能動的学修等の新しい教授・学習支援能力の展開・適応を求める。『チーム学校』答申は新しい教職員職種の充実と,学校組織の多忙や過重負担の配慮を成しながらの機能強化を図っている。
 このような課題に対し,まず,福井氏に小学校現職教諭として理科教科専門の視点から教育方法の革新を追求してきた立場の話題を提供頂く。次いで,門原氏に現職小学校教諭であり臨床心理士として指導力改善研修に携わりつつ,人口減少地帯の学校園経営実務までを担った経験からのご意見を頂く。あわせて,丹生氏の小学校教諭でありながら英国との学校交流を追求し,博士号まで取得した経験から学校・教師のグローバル化と学位取得の意義とコストを話題提供して頂く。最後に就実大学教育学部生という保育者・教員養成機関で学ぶ学生の視点から,学生の「幸福」,「充実」とその規定要因に関する調査研究の報告を頂く。いずれについても共通するキーワードは対人関係上の資産・負債を改善する社会関係資本(ソーシャルキャピタル)の視点が教職人生(教職キャリア)の充実に貢献するとの発想である。
話題提供
(1)教育方法改善への適応課題
(福井広和)
 勤務初任の小規模校で様々なリアリティショックを受けた。児童の体験による学習意欲・動機づけの確保が小学生の学びの前提条件と考える。内地留学による大学院(修士)で学び,平成15・16年科学研究費補助金(奨励研究・物理)「科学の原体験としての静電気教材の開発および実践研究」を小学校現場で遂行し,教科書執筆などを歴任してきた。30年近い小学校教職経験の後に教員養成大学教員として能動的学修を保育・教職志望学生に求め,彼らを通して学校園の能動的学修の充実の展望といくつかのデータを紹介したい。
(2)教師の最低限の資質と人口減少地域で学校園を支えるということ
(門原眞佐子)
 これまで教育行政(県総合教育センター,教育委員会等),管理職(校長,園長)を経て2点の話題提供を行う。前半は,「教員にとっての最低限の資質」である。対人援助を行う教員にとってコミュニケーション能力は不可欠であり,その育成は希求の課題である。コミュニケーション能力には様々な要因が含まれるため,現場での実践を通して次の2点に焦点化した。第1は,児童生徒理解が教育活動の基盤ゆえに児童生徒の表情,言動などから感情を読みとったり,些細な変化に気付いたりする感性の必要性である。児童生徒が発信する言語・非言語の中核を理解しようとすることは,集団における個を尊重した授業展開や問題行動の予防的対応,問題行動を呈する児童生徒の本質的な課題に迫ることを可能とする。対象が,同僚,管理職,保護者,地域であっても同様で,そこから信頼される教員として成長が可能になる。第2は,コミュニケーションの“伝える”ことと“伝わる”ことの違いを認識し,「伝わるように伝える」力である。コミュニケーションは双方向から情報を伝達で「伝えたはずなのに」という過信から双方の信頼関係が崩れるケースもある。「伝えたが相手には伝わっていないかもしれない」と自己省察,自己理解が重要である。
 後半は,「開かれた学校の視点から考える人口減少地域における学校園の課題」である。第1に園児児童生徒や教員が活力ある学校園にするために,教育活動への地域住民(含む高校生・大学生)参画 による好循環を創ることが重要だと考える。そのために行政と十分な連携・協働を図ること,地域住民等の同意を得るために丁寧な説明と協議する時間と場を確保すること,そして,どの年齢,各種団体とも意思疎通を図れる管理職を始め教員の適切なコミュニケーション能力が必要である。第2は,園児・児童生徒が多様な考えに触れ発達するために,園児児童生徒同士や園と小・中学校の交流の場を積極的に設定することである。充実した交流活動にするためにそれぞれの教員同士が交流・連携する研修時間の確保と教員の自主的かつ積極的な態度が望まれる。他校との交流により新たなリーダーが生まれ教員同士の学びの場となる。以上,2つの視点の充実とともにソーシャルスキル教育が大きな可能性を秘めている。
(3)学位取得と国際交流のメリットそしてコスト
(丹生裕一)
 日本の国語教育においては,教育内容(何を教えようとするのか)の内実が不明確であることが指摘されるようになってから久しい。1998年,私は国際理解教育推進のための教員の資質向上を目的とした,文科省のプロジェクトに参加し,イギリスへ派遣された。そこで参観した小学校の国語の授業は,読み書き能力に関して指導すべき事項を極めて具体的にリストアップした国の指針に沿ったものであった。「教育を別の視点や価値観から創造すると,こんなにも異なる姿として表れるものか」と強い衝撃を受けた。それが,私が研究の道に踏み込んだきっかけとなるわけだが,「イギリスの国語教育にこそ,我が国の課題を解決する答えがある」と期待をしながら調査・研究を深めていった私は,現実はそんなに単純ではないことに気がついた。それでも,日本の自分の学級(当時,私は小学校の教諭であった)で実践する授業等に取り入れるべき優れた発想や手法は確かに存在した。その成果は大きいが,論文にまとめることは容易ではない。しかし,多くの同僚に語って聞かせたり研究発表会で提案したりすることはできた。さらに有意義だったのは,イギリスの小学校における現地調査で得た,教師たちとのつながりであった。大学教員になった現在,現地調査で出会ったある教師が校長を務める小学校へ就実大学の学生たちを2週間滞在させ,すべてのクラスで日本語や日本の文化をテーマにした授業(もちろん英語で)や担任の先生の補佐をさせるプロジェクトが定着しつつある。
 現職の教諭が学位を取得することの意義はこのように大きなものがあるが,現職の教師を取り巻く環境は厳しい。教諭時代,博士課程で学んでいることを上司である校長には伝えていた。どの校長もそのことには理解を示したが,同僚や保護者には内密にするように私に求めた。「そんな暇があったら,職務に精を出せ。」という批判を私が受けることを心配したからである。その他にも現地調査や論文執筆の時間を確保することも容易ではない。勤務校の実情や担当分掌の内容,さらには自らの家庭の事情など,いくつかの条件がそろわなければ,学位所得の達成は難しいのが実情である。私の場合,運がよかったのは,研究で得た知見が,日常の教諭としての職務に応用して成果を生むことができたことである。さもなければ,自身の研究へのモチベーションを維持することすら危うかったのではなかったか。
(4)保育・教職志望者のキャリアと日常
(高木 亮)
 保育・教職志望学生の視点で「学生生活」と「学生としての充実感」をキーワードにそれらの前提探索の調査設計を行った。目的変数として「逞しさ」と「ストレス・苦しさ」,「キャリアの将来展望」を置き,説明変数として「人間関係のつながり」と「人間関係の感じ方」,そしてそれらを改善可能な態度としての「あいさつ」に注目する。なお,学会の非明文化規定で学部生非会員登壇を提出1月後に拒否されたため,形式上高木が話題提供者となっているが調査研究全般は以下の就実大学初等教育学科3年生が実施したものである。
(3)学生ストレスの検討
 研究は竹田有沙・平岡佐由里・平野海友・矢野可奈が実施した。保育・教職志望学生の認知するストレスの種類と,その対処をテーマとした。次の3点を探る。①学生のストレスとなる人間関係(TPO),②ストレスの対処法,③ストレスや不安を相談する相手や場所。それぞれの課題は以下のように予測。人間関係をストレスと感じる学生が多く,特に日々の生活や会話の中で起こると予測する。故に挨拶などの些細な関係に価値があると予測。音楽や趣味の対処選択が多いが効果は未知数。相談相手については,友人や先生,保護者の方か挙げられそれぞれの選択の法則性の存在を予測。
(3)B.学生ストレス耐性の検討
 研究は浦川優・小松万記・村上礼奈が実施した。ストレスを抱える学生が大学を休みがちになり,アルバイトが長続きしないなどの反応がある。そのため,ストレス耐性(特にレジリエンス)の効果を考える。その向上介入に挨拶の効果を期待。質問にレジリエンス項目(例:どんな困難であっても諦めな等)と,挨拶についての項目(例:友達には必ず挨拶する等)の望ましい効果に期待。
(3)C.学生の不安・将来展望の検討
 研究は竹内媛理,佐藤福起・垣内智美が担当した。保育・教職志望者は近年の在職者の精神疾患・離職増を不安に思う。大学生活で積極的で良好な人間関係の構築の有無などの充実度によってこの緩和を期待する。調査に“現在専攻している学問分野に対する興味の有無”,“将来の職業や適性について考え”,挨拶に関わる態度を尋ねる。仮説としては挨拶をする学生ほど将来展望が前向きであるなど人間関係の適応力があることを想定する。
【謝辞】 本研究の企画は科学研究費補助金(基盤研究B 26285177)「教育政策がソーシャル・キャピタルに及ぼす影響に関する調査研究」の一部助成を受けている。また,学生の旅費は「就実大学初等教育学会研究事業」助成を受けている。