The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

Oct 8 - Oct 10, 2016Sunport Takamatsu / The Kagawa International Conference Hall
The Japanese Association of Educational Psychology
The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

Oct 8 - Oct 10, 2016Sunport Takamatsu / The Kagawa International Conference Hall

[JB02]再考,学校教育相談の固有性・独自性(その3)隣接領域(学校心理学)との異同の検討を通して

藤原忠雄1, 大野精一2, 小林幹子3, 金山健一4, 今西一仁5, 石隈利紀6, 中原美惠7, 西山久子(1.兵庫教育大学, 2.日本教育大学院大学 4.神戸親和女子大学 5.高知県立四万十高等学校 6.東京成徳大学 7.東洋大学 8.福岡教育大学)
企画趣旨
 大野(1996)が,日本における学校教育相談の展開史を総括するとともに,学校教育相談の包括的な概念規定を社会に発信して,学校教育相談の混沌とした固有性・独自性を明確にしてから早20年が経とうとしている。
 その後,学校教育相談の隣接領域と考えられる様々な領域で,新たな動きが展開されてきている。石隈(1999)は,『学校心理学-教師・スクールカウンセラー・保護者のチームによる心理教育的援助サービス』を刊行し,学校心理学を広く紹介した。また,『今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)』(文部科学省,2003)を受け,特殊教育から特別支援教育へ移行し,2007年度より全ての学校で本格実施となった。さらに,約30年ぶりに『生徒指導の手引』が改訂され,生徒指導の基本書として『生徒指導提要』(文部科学省,2010)が刊行され,新たな展開が始まっている。加えて,『今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について』(中央教育審議会,2011)等に見られるように,従来の進路指導からキャリア教育への移行が進み,その実践が蓄積されようとしている。
 こうした流れの中,生徒指導,学校教育相談,特別支援教育,キャリア教育の各々の活動の明確な整理がなされないまま,学校現場は混乱した状況にある。そのため,学校教育相談の固有性・独自性というものが,再び混沌とした状況に陥っており,学校教育相談の立場としても,他の隣接領域の立場としても,この状況を整理することの意義は大きいと考える。
 そこで,本自主シンポジウムでは,3年計画で学校教育相談と隣接領域との異同を検討し明確にする。そして,学校教育相談の固有性・独自性を再度整理し直し,学校現場の混乱の収拾に寄与するとともに,学校教育相談の将来展望を示す契機とする。なお,隣接領域としては,生徒指導,キャリア教育(進路指導),特別支援教育,学校心理学の4領域に注目する。そして,1年次に生徒指導とキャリア教育,2年次に特別支援教育,3年次に学校心理学を取り上げて検討する。今回は3年次であり,3年間を総括し今後を展望する。

話題提供要旨
学校心理学と学校教育相談との重なりと協働
東京成徳大学 石隈利紀
 日本の学校心理学は,教師の子どもへの援助に対する注目と敬意からはじまり,発展してきたといえる。そして日本では,1990年代,学校心理学と学校教育相談は,それぞれの歴史の流れが合流し,「日本学校心理士会」や「日本学校心理学会」の活動の機会を活かしながら,発展してきた。
 私はアメリカの大学院で「スクールサイコロジスト」になるための訓練を受け,カリフォルニア州の小学校でスクールサイコロジスト(インターン)を行いながら,大学でアセスメントや学校心理学の講義を担当した。アメリカのスクールサイコロジーは,スクールサイコロジストの実践の理論的基盤と実践モデルを提供する。医学と医師の実践と似ている。
 一方日本では,1990年代学校教育に関する心理職の制度は確立されていなかったが,生徒指導・教育相談,特別支援教育(障害児教育),学校保健の活動は,一人一人の子どもに対する心理教育的援助サービスと呼ぶべき内容とレベルを備えていた。
 以来,日本の学校心理学は「教師,スクールカウンセラー,保護者らのチームによる心理教育的援助サービス」の理論と実践を支える体系として,学校教育相談との協働で発展してきている。とくに,三段階の心理教育的援助サービス,指導サービスと援助サービス,三層の援助サービスシステムなど,「どのように子どもや学校とかかわるか(how)」の実践モデルをエビデンス(事例と研究成果)に基づきながら,提唱してきた。
 大震災など子どもの成長や学校教育を脅かす危機的な状況を経験してきているなか,そして児童虐待,貧困など,子どもの成長をとりまく環境が学校教育に影響を与えるなか,学校心理学と学校教育相談は,協働して新たな課題に取り組んでいる。
 具体的には以下のようなものがある。
①すべての子どもの回復力(レジリエンス)をどう育てるか。「予防開発的心理教育」も含めて・・・。
②障害のある子ども,不登校・いじめ等で苦戦している子ども,外国につながりのある子ども,貧困家庭の子どもなど,プラスアルファの援助ニーズのある子どもの教育を,どう保障するか。
③学校教育を,家庭,学校,地域が協働して行う「子育て」の一貫として捉え直し,「チーム学校づくり」を学校レベル及び地域レベルでどう進めるか。
④心理教育的援助サービスのリーダーシップのとれる教育職と,学校教育を理解し,その可能性を信じる心理職(スクールカウンセラー,スクールソーシャルワーカーなど)をどう育てるか。またそれをつなぐ,コーディネーターをどう育てるか。
 そして学校心理学にとっては,学校心理学が「心理学と学校教育の諸領域の知見を融合する」方向で発展するために,学校教育相談から「教育的な援助方法(例:どう指導するか,どう叱るか,どう集団を育てるか)を学ばなくてはならない。同時に公認心理師の実践を支えるために,学校教育に役立つ心理学の知見を伝える役割も果たしながら・・・。
 本シンポジウムでは,学校心理学と学校教育相談の重なりと協働してめざすことを議論したい。

学校教育相談と学校心理学との異同と協働
日本教育大学院大学 大野精一
 学校教育相談は教師の実践活動(School Counseling Services by Teachers in Japan)として構成,構造化されてきたものである。その歴史は日本において半世紀以上にも及ぶもので,各国比較から見てもその学的な成果は特異なものである。ようやくにして昨今新しい専門職(第一次的に教育職と副次的に心理職との架橋領域)の見地からも当然の評価をうけつつあるところである。
 このことは(第一次的に)心理職と(副次的に)教育職との架橋を目指す学校心理学との異同と,それにもかかわらず本質的に協働してきた結果でもあり,学校教育相談も学校心理学も豊になってきた基盤である。
 学校教育相談と学校心理学とが協働して行ってきた東日本大震災や広島水害,熊本地震等の被災地支援活動では,以下が共通理解になっている。
1)被災地における非日常的な世界で,非日常的に起こっている問題(例えばトラウマへの対応等)へのケアも大切と考える。しかし,非日常的な世界であっても日常的な世界(勉強, 生活, 進路等)が営まれており,日常性に注目した課題支援(非日常世界の中の“日常の確保”)が求められている。
2)この「日常性の回復」のためには「子ども(教師や保護者の方々)の持つ回復力(レジリエンス)」への支援が重要である。
3)今後のことを見据えた広い「日常性の回復」には,現在どちらかというと医療・労働・福祉・教育等でバラバラになされている各種の支援を,子どもたちを中心にトータルコーディネートする必要がある。
 このシンポジウムでは下記の学校教育相談の最新の定義に基づきながら,さらに詳細に学校教育相談と学校心理学との異同と協働についてコメントすることにしたい。
 学校教育相談(School Counseling Services by Teachers in Japan)とは,児童生徒の学習面(広く学業面を含む),進路面(針路面を含む),生活面(心理社会面および健康面)の課題や問題,論題に対して,情緒的のみならず情報的・評価的・道具的にもサポートをするため,実践家に共通の「軽快なフットワーク,綿密なネットワーク,そして少々のヘッドワーク」を活動のモットーに,「反省的(省察的)実践家としての教師」というアイデンティティの下で,
0)参加的な観察を中核とする統合的なアセスメントにより子どもたちを理解してみまもり(見守る),
1)すべての子どもが持っている創造力(クリエイティビティ)と自己回復力(レジリエンス)とにていねいにかかわり(「関わる」,狭義のカウンセリングのみではなく,構成的グループ・エンカウンター等のグループ・ワークやソーシャル・スキル・トレーニング等の心理教育も含め,さらに,そうした直接的なかかわりをチームとして支える作戦会議等をいう),
2)早急な対応が必要な一部の子どもとしのぎ(「凌ぐ」,危機介入や論理療法等も含む初期対応等をいう),
3)問題等が顕在化している特定の子どもをつなげ(「繋げる」,学校内外の機関等との作戦会議を土台とする連携・協働等を言う),
4)すべての子どもがこれからの人生を豊に生き抜くために,もっと逞しく成長・発達し,社会に向かって巣立っていけるように,学校という時空間をたがやす(「耕す」,学校づくりのことをいう),
 教育相談コーディネーター教師(特別支援教育コーディネーターを包含する)を中核とするチームによる組織的系統的な指導・援助活動(指援)である。