The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

Oct 8 - Oct 10, 2016Sunport Takamatsu / The Kagawa International Conference Hall
The Japanese Association of Educational Psychology
The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

Oct 8 - Oct 10, 2016Sunport Takamatsu / The Kagawa International Conference Hall

[JB04]積極的生徒指導を考える(8)よい習慣の形成を中心に

青木多寿子1, 三宅幹子2, 笹山健作#3, 岡崎善弘4, 井邑智哉#5, 原範幸6, 小泉令三7(1.岡山大学, 2.岡山大学, 3.岡山理科大学, 4.岡山大学, 5.精華女子短期大学, 6.岡山県浅口市立寄島中学校前校長, 7.福岡教育大学)
企画主旨
青木多寿子
 私たちは誰もみな,よい品性 (character) を持つ人たちで成り立つ社会に住みたいと願っている。もし,親切で暖かい,責任感ある市民の住む地域に住みたいと願うなら,私たちにできるのは,未来の市民である児童生徒が品性ある市民になるように教育することである (CEP, 2007; 青木2014)。米国ではCEP (Character Education Partnership)が中心となって品格教育を勧めている。
 Characterは,人の性格を指す言葉であり,“彫り込む”という意味があり,無意識のうちに何度も繰り返され,習慣的に彫り込まれた人格の部分を意味する。よい習慣を持つ人はよい人生を送りやすく,アディクション(依存症)等のよくない習慣を持つ人は,意にそぐわない結果を生み出す。
 品格教育は,よい習慣(habits of the mind, habits of the heart and habits of action)を培う「3つのH」の教育とも言われる(Lickona, 1992/1997)。他方で学校は,児童生徒が一日の大半を過ごす場所であり,最低9年は在籍する。よい習慣の形成には適した場所とも言えるだろう。
 そこで今回は,よい習慣の形成に焦点を当て,児童生徒の人格の形成について考える。まず,笹山先生からは運動の習慣,岡崎先生からは長期休暇の学習習慣,井邑先生からは,VIA-ISを改良した品格尺度(井邑ら,2013)から見た習慣,原先生からは,実際の教育現場で校長として取り組んだ習慣形成について話題提供して頂く。
児童・生徒における運動習慣・体力の意義
笹山健作
 平成27年度全国体力・運動能力,運動習慣等調査(文部科学省,2015)によると,1999年以降の16年間で,体力合計点はほとんどの年代で緩やかな向上傾向を示している。しかし,この調査が開始された1964年以降で体力水準が最も高かった1985年頃と比較すると,依然として低い水準であると指摘されている。加えて,体力の高い者とそうでない者の二極化傾向が顕著になってきていると報告されている。これらの背景には社会環境の変化に伴う身体活動量の低下が考えられる。
 実際に岡山県の小学4年生男女288名と中学2年生男女314名を対象に文部科学省の新体力テストと加速度計で評価した身体活動量との関連を検討した結果,体力が低い児童生徒は身体活動量が低いという関連が示された(笹山ら,2009; 2011)。
 加えて,著者らは新体力テストで評価した体力と種々の健康アウトカムとの関連を検討した。その結果,小学4年生男女299名を対象とした体力とメタボリックシンドローム(MetS)危険因子との関連では,有酸素性体力の高い児童と比べ低い児童は腹囲,腹囲身長比,中性脂肪,収縮期血圧が高く,HDL-cが低いこと,MetS危険因子6項目を統合したMetSリスクスコアが高いことが明らかとなった(笹山ら,2015)。中学1,2,3年生男女1996人を対象とした体力と学業成績との関連では,有意な正の相関関係が認められ,体力の低い中学生は学業成績が低いという関連性が明らかとなった(笹山ら,2013)。中学2年生男女812人を対象とした体力と形態,生活習慣,メンタルヘルスとの関連では,体力が低い男子中学生において肥満度が高いこと,就寝時間が遅いこと,運動時間が短いこと,自己効力感が低いこと,不安傾向が高いことが明らかとなった(笹山,2015)。
 以上のように,体力は心身に対する多面的な関連が示されており,本発表では習慣形成の中でも運動習慣の意義について著者らのグループから得たデータや先行研究より報告する。
長期休暇中の学習習慣
岡崎善弘
 各課題に対して時間の配分を効果的に行うことは,大人だけでなく,小学生においても必要な能力の1つである。例えば,小学生になると,夏休み中に課される大量の宿題を,いつ,どのくらいのペースで行うかを考えなければならない。学校が長期休暇中に多くの宿題を課す理由は大きく分けて2つであろう。1つ目は,学習内容の定着である。学校で教わったことが次の学習の基礎となるため,復習的な意図が含まれる。2つ目は,学習習慣の維持である。計画的な時間割に基づいて形成した学習習慣を崩してしまうと,学業成績の維持および向上は難しい。学習習慣の崩壊は,上記で述べた学習内容の定着にも影響するため,長期休暇中における学習時間の管理は重要である。しかし,長期休暇中は教員の目が離れる期間でもあるため,指導することは容易ではない。
(1)長期休暇中の宿題の取り組み方と学習成績
 児童は課された宿題をいつ,どれくらい行っているのだろうか。長期休暇中における児童の宿題の取り組み方について調べた結果,「毎日少しずつ継続的に宿題を行った継続タイプ」,「宿題を早く終わらせた前半集中タイプ」,「休みの後半になってから取り組んだ後半集中タイプ」の3タイプに分かれることが明らかになった。宿題を早期に終えることは一般的に評価される傾向にある。しかし,学習にほとんど触れない期間が長く続くことは,学力の維持・向上の観点からみると望ましいとは言えない。長期休暇が終わる直前になって集中的に宿題に取り組むことも同様である。
(2)長期休暇中に積極的指導する方法を考える
 本シンポジウムで紹介する研究は,上記で紹介した長期休暇中における学習時間の管理3タイプと児童の学業成績の関係について調べた調査結果である。また,長期休暇前に宿題を終えるための計画を尋ねて,計画と取り組み方が一致していたかどうかも調べた。さらに,学習時間の管理タイプと児童の心理的特性の関係についても紹介する。これらの研究結果を踏まえた上で,長期休暇中における積極的な児童・生徒の指導の具体的な方法について議論を行いたい。
品格尺度からみた習慣
井邑智哉
 品性や品格といったものは,それを具体的に発現する習慣によって示される(新, 2011)。これまで,具体的によい行為の習慣を測定する尺度として大学生以上を対象としたVIA-IS(Values in Action Inventory of Strengths)や,児童生徒を対象としたVIA-Youth(Values in Action Inventory of Character Strengths for Youth)が作成されている(Park & Peterson, 2005; Peterson & Seligman, 2004)。これは,哲学,歴史,心理学などのあらゆる文献から,どのような文化においても妥当だと考えられる6領域(知恵と知識,勇気,人間性,正義,節度,優越性),24種類の品格を選び出し,具体的なよい行為をリストにしたものである。
 ただし,VIA-ISやVIA-Youthの項目数は200項目近くあり,日本の学校教育現場で,児童生徒が自主的,自発的に振り返りを行いながらよい行為の習慣づくりを目指すには負担が大きいといえる。そこで井邑・青木・高橋・野中・山田(2013)は先行研究(Boyer, 1995; Lickona, 1992; Noddings, 1984; Peterson & Seligman, 2004)を参考に,自分自身に関する習慣(勤勉,熱意,勇敢,自己コントロール,寛大,誠実,好奇心・興味,独創性,希望・楽観性),他の人との関わりに関する習慣(感謝,親切,平等・公平),集団と社会に関する習慣(リーダーシップ,市民生,社会的かしこさ)について25項目で測定する児童生徒用品格尺度を作成した。
 児童生徒用品格尺度の因子構造を検討した結果,児童生徒のよい行為の習慣は,①毎日を丁寧に堅実に前進するような「根気・誠実」,②新しい未来や自分を切り開く「勇気・工夫」,③自分の幅を広げる「寛大・感謝」,④社会の秩序を維持するような「フェア・配慮」の4種類に分類されることが明らかとなった。また,これらの4種類の習慣が身に付いている児童生徒ほど,生活充実感や主観的幸福感の値が高く,Lickona(1992)が指摘しているように,よい行為の習慣を通して,子どもたちが自分自身の生活をよい方向に導く可能性があることが示唆された。
望ましい習慣づくりを目指した実践
原 範幸
 本校は,平成25年度の教研式標準学力テストの偏差値が47.4,不登校の出現率も全国平均の2倍近い5.3%であった。そこで協同学習,SEL,ピア・サポート,品格教育,コミュニケーション活動を段階的に実施した。平成27年度には偏差値が50,不登校の出現率が2.6%と大きく改善した。今回は品格教育について紹介する。
 平成25年度の途中に,品格教育の実施を本校の生徒指導主事に打診したときに「生活委員会が取り組んでいる生活目標が形骸化しているので,品格教育を取り入れてやってみます」との経緯で取り組が始まった。生徒指導主事が行事や生徒の日常活動と関連付けて4月「礼節」,5月「責任」というように,月ごとのテーマを決めた。生徒は,月曜日の朝の活動の時間(8:25~8:35)に,例えば「礼節」という月のテーマに沿って「あいさつを大きな声でする」等,週の目標を決める。そして,ペアになって,目標とその目標にした理由を30秒程度で相手に伝える。相手は聞いた内容を20秒程度で伝え返す。役割を交代して同じように伝えあう。金曜日の帰りの会で,1週間の振り返りをして,その内容もペアで伝え合う。
 平成28年2月に生徒にアンケートをすると「品格教育をして望ましい習慣が身についたと思いますか」の問いに9割以上が肯定的に答え「目標を考えた後,ペアで話すことで目標を達成しようという意欲は高まりましたか」の問いには8割以上が肯定的に答えていた。さらに,自由記述では「一週間それを意識することで,終わっても良い癖がついた生活が続けられた」などのように意識化が出来た内容が41人中16人,「‥前よりあいさつが出来るようになった」のように習慣化を書いたものが14人いた。さらに「‥目標を人に話すことで自分も意識が高まるので‥」のように話すことの効果を書いた生徒が4人いた。このように品格教育の取組は習慣化に一定の成果が見られた。