The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

Oct 8 - Oct 10, 2016Sunport Takamatsu / The Kagawa International Conference Hall
The Japanese Association of Educational Psychology
The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

Oct 8 - Oct 10, 2016Sunport Takamatsu / The Kagawa International Conference Hall

[JE06]大学における学生のニーズと第二言語能力育成

マナロ エマニュエル1, シェパード クリス#2, 田中瑛津子3, 木下直子4(1.京都大学, 2.早稲田大学, 3.名古屋大学, 4.早稲田大学)
企画趣旨
 問題解決能力,批判的思考力,コラボレーション能力,セルフマネジメント能力と同様に,コミュニケーションスキルは,21世紀の教育において非常に重要なスキルの一つであると考えられる。コミュニケーションスキルは,コラボレーションやチームワークなどの対人関係に関する能力に加えて,知識獲得や活用などの認知的能力を効果的に発揮するためにも必要となる。コミュニケーションスキルの中核となるのは,言語能力の発達である。言語は,社会的相互作用の主要な媒体であり,また社会的相互作用は社会的関係性を構築・維持するための手段である (Block & Cameron, 2002)。つまり,効果的なコミュニケーションができるためには,母国語であれ,それ以外の言語であれ,使用する言語のスキルを育む必要がある。したがって,学生が今後適切に運用する必要のある言語スキルを効果的に育成するための教育の提供が求められる。グローバル化が続いている学習・労働・社会的環境において,第二言語能力の向上は必要不可欠であると考えられる。
 文部科学省による日本の大学の国際化にむけての推進事業は非常にタイムリーで,21世紀に求められるスキルの教育に沿ったものだと考えられる。文科省の目的の一つは,日本の大学が,第二言語である英語を用いてグローバルに働くための能力を有した学生を育成できるようにすることである。また,日本語を第二言語として学び,適切に運用する必要のある者の数も増えている。したがって,大学は学生のニーズに応えて,いかに第二言語能力を効果的に育成するか,という大きな課題を考えている。
 本シンポジウムでは,大学における第二言語能力向上について,効果的に学生のニーズを捉え,それに答えるための方法について検討したい。それぞれの話題提供者が取り組んでいる授業開発やそれに関わる研究について報告し,議論を行う。
高等教育機関での科学者やエンジニアのためのEFLニーズ分析及びカリキュラムデザイン
Chris Sheppard
 本発表では,東京にある私立大学の理工学部で行ったニーズ調査の分析結果とその応用を報告する。
 カリキュラムデザインの担当者は教室で教える内容や方法を決定する際,無限に近い選択肢の中からコースを組み立てて行かなければならない。その際に役立つのがニーズ分析である。ニーズ分析は,学習者の目標場面で必要な知識やスキルを習得できるように援助するプロセスである。
 Nation & Macalister(2010)によると,学習者のニーズとは,①学習者自身が将来必要となる言語的知識やスキル,②現在持っている知識やスキル,③学習者自身が学びたいと考えているもの,の3点から成ると定義づけている。
 これらを踏まえ,本研究では,1)学習者のある目標場面を取り上げ,2)その場面のニーズ調査の結果を報告している文献をまとめ,3)そこで必要だとされる英語タスクのリストを作成し,4)各タスクで,扱うべき英語スキルと知識をリスト化した。調査では,現在のレベルも測定している。
 ニーズ分析の結果は,言語プログラムの目標(リスニング,スピーキング,プレゼンテーション,読み出し,書き込み,語彙,批判的思考)を作成するために使用された。この発表でこれらのそれぞれは,ニーズ分析の結果を参照し詳細に説明し,作成したカリキュラムの評価を報告する予定である。
聞き手に配慮した英語プレゼン力を身につける
―大学院生を対象にした授業事例―
田中瑛津子
 近年,大学院生は,卒業後に研究者としてだけではなく,企業や国際機関でも活躍することが期待されるようになり,専門的な知識やスキル以外に,コミュニケーション能力やマネジメントスキルなど,より広範な資質も求められるようになってきた。英語でプレゼンし,人をひきつけ説得する力は,グローバル化した社会において,アカデミアでも産業界でも必須の能力であると言える。
 プレゼンのためのハウツー本がたくさん出版されており,またプレゼンを高める授業におけるマルチメディアや観察学習の効果を検討した先行研究もいくつか見られる(De Grez, Valcke & Roozen, 2014; Tsai, 2011)。しかし,学生のプレゼンスキルを向上させるために何をどう教えるかについての具体的な提案や特定の授業設計の効果について検討した研究はみられない。
 そこで,本シンポジウムでは,大学院生を対象に実施した英語でのプレゼン力を身につけるための授業事例を紹介するとともに,その効果について報告する。授業では,良いプレゼンのハウツーを列挙して教えるのではなく,「Audience-centered」なプレゼンが良いプレゼンであると定義し,「Logical Story」「Helpful Slide」「Attractive Conversation」が重要な要素であると考えられることを伝えた。それぞれの要素について,まず教師から留意すべき点を伝えた後,学生がプレゼンの例を分析して理解を確認し,さらに学んだことを自分のプレゼンに適用し他の学生からフィーバックを受けるという手順を踏んで授業を進めた。授業の効果は,授業前後に録画したプレゼンビデオのルーブリックに基づく評価得点によって検討した。
大学院生の研究活動における英語活用スキルの育成
Emmanuel Manalo
 多くの日本の大学院生は,国際学会の発表前には,自身の研究について発表するためのトレーニングやアドバイスを受ける。したがって,学生は研究についての発表をどのように準備すればよいかについては学ぶ機会がある。しかしながら,口頭発表,ポスター発表,シンポジウムなどにおけるプレゼンテーションは,国際学会における限られた活動でしかない。それ以外の時間において,大学院生は他の研究者と,自由で当意即妙の会話を行う必要がある。日本人大学院生はそういった場面において困難を感じることが多い。これは大学院生に限ったことではなく,海外で働く多くの日本人研究者にも当てはまる。
 英語講師は,大学院生のようなレベルの高い学生に対して,日常会話を教えるのは,体系的でないと考えることが多い。日常会話スキルは,英語能力の低い学生を対象に教えられ,トピックや場面設定が非常に単純で,学生が会話スキルを用いる実際の場面が考慮されていないことも多い。この問題について,de Silva Joyce and Slade (2000) は,学生が英語でのインフォーマルな会話において使用できる構造についての知識を育むことの有用性を強調している。しかしながら,講師が利用できる適切な教材が不足しているため,この領域の発展が必要であることも指摘している。
 本発表では,教育心理学の大学院生を対象に2つの国立大学で実施された集中講義について報告する。この講義では,英語によるコミュニケーションに関するライティングおよびスピーキングスキルの両方を育成することを目的とした。具体的には,研究論文の書き方,国際学会での発表の仕方に焦点を当てた。しかしながら,この講義では,国際学会などに参加する際に用いるのに適切なインフォーマルな会話のスキルについても扱った。そうしたスキルの教授方法について紹介するとともに,講義を受ける前後でのスピーチの変化について報告する。結果は,学生の英語の流暢さ,会話を続ける能力,会話の中の適切な表現の利用が向上したことを示した。
ニーズの多様性と自律学習支援
-発音クラスの試み-
木下直子
 本発表では,ニーズの多様性に合わせた自律学習支援として発音クラスの実践について紹介したい。
早稲田大学には,約5100名の留学生が在籍しており(2015年11月時点),そのうち約2200名が日本語教育研究センターで日本語を履修している(舘岡2016)。日本語科目履修者数の上位5か国(地域を含む)は,中国,韓国,台湾,アメリカ,日本の順となっている。国籍は日本であっても,日本語が母語でない学習者,会話はよくできるが,漢字はまったくできない学習者など,ニーズの多様化が顕著である。このようなニーズの多様性は,1つの技能クラスの中でも到達目標の設定にも見られる。
 筆者が担当する発音クラスでは,このような学習者のニーズの多様性に対応すべく,自律学習支援を取り入れようと試みている。主なものは次の2点である。
 1点目は,学習方法の選択肢を与えるということである。日本語の言語リズム,イントネーションの習得には,学習スタイルの違いが影響していたことを受けて(中川ほか2008,木下2010),学習スタイルを考慮した学習方法を提示している。
 2点目は,学習をマネジメントサイクルの1つであるPDS(Plan – Do – See)サイクルと捉え,学習者自らが目標を設定し,学習方法を選択して実行し,目標が達成できたかを音声分析ソフトPraatを利用して評価する方法を取り入れている。
 第二言語教育の中でも発音は,習得が遅いことが知られているが,発音クラスではより持続可能な学習への自律学習支援が求められており,その実践およびその成果について報告する。