The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

Oct 8 - Oct 10, 2016Sunport Takamatsu / The Kagawa International Conference Hall
The Japanese Association of Educational Psychology
The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

Oct 8 - Oct 10, 2016Sunport Takamatsu / The Kagawa International Conference Hall

[harass]いま大学で何が起こっているかハラスメントの起きる可能性を知る

高橋知音1, 内田伸子2, 金子雅臣#3, 大塚雄作4(1.信州大学, 2.十文字学園女子大学, 3.職場のハラスメント研究所, 4.大学入試センター)
 2011年の日本教育心理学会総会より毎年企画されてきた,ハラスメント防止委員会企画講演会も6回目を迎えることになる。その積み重ねの中で,ハラスメントは往々にして加害者がそれを意識しないまま進行してしまうということが,一つの課題として浮き彫りにされてきた。そこで,今回は,大学の中で,ハラスメントに関わって,どういう状況がそれに陥りやすいのか,そして,そのような状況にどう関わっていったらよいのかということに焦点を絞って議論してみることにしたい。
 まず,内田伸子氏より,大学の執行部の経験の中で,実際に起こったいくつかのハラスメントの事例を踏まえて,どのような状況に問題が生じやすいのか,それらを起こさないために,どのような教育環境,研究環境を作っていくことが望まれるのかということについて話題提供をしていただく。
 また,今年度は,「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」が4月より施行されており,公的な機関として,どの大学もそれに対応する責務を負わねばならなくなっているが,存外,障害者の範囲なども認識しないまま,ハラスメント的な状況に陥ってしまっていることも少なくないと思われる。この点に関して,どのように対応していくことが望まれるのかについて,高橋知音氏より話題提供をしていただく。
 それらを総括する形で,ハラスメント防止委員会の専門委員をお願いしている金子雅臣氏より,指定討論をいただき,質疑応答,意見交換の場を持つこととしたい。

大学の弱者<特任教員や大学院生>への白い暴力~オブラートに包んだ刃~
内田伸子  
 「アカデミック・ハラスメントは研究教育に関わる優位な力関係のもとで行われる理不尽な行為」(NPO法人「アカデミックハラスメントをなくすネットワーク<NAAH>」)と定義されている。大学教員が指導院生に対して指導するときのアカハラやセクハラは可視化されやすい。パワハラ・セクハラ・アカハラが多発する大学の「ハラスメント防止ガイドライン」の不備な点を比較対照し改善案も探ることができる。
 一方,大学や研究所など学術の職場で起こるパワハラは見えにくい。パワハラは「同じ職場で働く者に対して,職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に,業務の適正な範囲を超えて,精神的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」(厚労省,H24年1月30日)と定義されている。18歳人口激減に伴い,現在,国公私立大学のいずれも運営経営の危機に陥っている。運営経費節減のため,3年~5年の任期付きで「特別任用教員(特任教員)」を採用して教育(や研究)の質を担保しようというところが増えている。その中でアカハラやパワハラ,セクハラなどの被害に悩み,任期を全うできずに,職場を失い,将来の研究生活への夢や希望,意欲を打ち砕かれる人が少なからずいる。この話題提供では,特任教員へのパワハラ事例3件-パワハラ類型のうち⑤「過小な要求」(仕事を与えない)被害事例を2事例,【②精神的な攻撃:名誉棄損・侮辱・暴言】1事例-と大学院生へのセクハラ・アカハラ事例5件紹介することによって,パワハラ・アカハラ・セクハラが起こる背景因を探ってみたい。
 全事例に共通しているのが大学や研究所の組織全体が「出る杭は打つ」という体制にあることである。さらに,組織のトップ自らが特任教員を追い込み,孤立させたり,退職させたり(特任教員が自ら退職を選んでいるため法的には問題はないが,退職を余儀なくさせられる心理的状況に追い込む)という事例も起こっている。こうした特任教員に対するパワハラに共通するのは,大学や研究所が組織的に,「特任教員」に対して,「使い捨て」「出る杭は打つ」「何か不都合のある責任は特任に押し付ける」という状況にあることが多い。
 一度ハラスメント事件を起こした組織(学会も大学も職場も)に与えられるダメージはきわめて大きい。何よりも被害者へのダメージははかり知れない。セクハラ・アカハラ・パワハラ被害者の事例を話題提供することによって,学界や大学,研究所などの学術の世界からアカハラ・パワハラ・セクハラのない環境を創ることに連携協働で取り組む契機になればありがたい。

障害のある学生への支援とハラスメント
高橋知音  
 障害者差別解消法の施行に伴い,障害学生支援への関心が急速に高まってきている。障害のある学生への対応が,ハラスメントの問題につながる場合があることを,大学の教職員は自覚する必要がある。
 障害のある人はマイノリティであり,社会的立場も弱い。障害を理由とした差別的な規則を放置している大学はほとんどないと思われるが,キャンパス内で障害のある人に対する侮辱や攻撃的発言が行われたりすることはありうる。学生同士でもそういったトラブルが起きないよう,教育機関として啓発を行うことは必要であろう。また,発達障害等,外から見てわかりにくい障害の場合,理解不足からハラスメント的発言に至る場合も考えられる。他にも,学生のためと思った指導がハラスメントになりうるケース,独特な認知様式(ものごとの捉え方)ゆえに学生がハラスメントを受けたと誤解してしまうケース,なども考えられる。こうした事態を避けるためにも,教職員が障害について,制度について理解を深めることが重要である。
 国連の「障害者の権利に関する条約」では,障害(disability)は「機能障害(impairments)を有する者とこれらの者に対する態度及び環境による障壁(barriers)との間の相互作用」であり,それらの障壁が機能障害のある人の社会参加を妨げることで生ずると定義づけられている。この定義によれば,周囲の人の「態度」が障害を生じさせる場合もある。ハラスメントを生じさせないためには,自分の「態度」が機能障害のある学生の社会参加を妨げていないか自問することから始める必要があるかもしれない。
 本話題提供では,制度や概念について確認すると共に,模擬事例を通して,想定されるリスクや判断が難しい状況について考える手がかりを提示したい。