The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

Jun 11 - Jun 13, 2021Held Online
The Congress of the Japanese Society of Gerodontology
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Jun 11 - Jun 13, 2021Held Online

[SSY-3]成人期の歯科(歯周病)の立場から: 介護予防としての歯周病治療の必要性と健康寿命延伸へ向けた歯周病抑制

○吉成 伸夫1(1. 松本歯科大学歯科保存学講座(歯周))
【略歴】
1990年 愛知学院大学大学院歯学研究科修了,歯科保存学第三講座助手
1995年 愛知学院大学歯学部講師(歯科保存学第三講座,歯周病科)
2001年 ノースカロライナ大学チャペルヒル校 口腔と全身疾患センター留学
2006年 松本歯科大学歯科保存学第1講座教授
2012年 日本老年歯科医学会指導医
2014年 松本歯科大学歯科保存学講座(歯周)教授(講座統合に伴い名称変更)
人生100年時代に向けて、健康寿命の延伸が喫緊の課題である。近年、歯周病に罹患した歯周組織内のさまざまな物質が血液を介して非感染性疾患(NCDs)に影響する可能性が報告されている。一方、介護が必要となる主な原因が、NCDsや認知症や転倒・骨折などの老年症候群であり、老年症候群の原疾患としてもNCDsが関連している。すなわちNCDsを介して歯周病が要介護と関連し、ここに健康寿命延伸に対する歯周病抑制の意義があると思われる。
 現在、日本人の歯の喪失原因の1位は依然として歯周病であり、さらに2005年から2016年までの歯科疾患実態調査において、4㎜以上の歯周ポケットを持つ者の割合が20から40歳までの若年層において増加していることから、歯周病に対する予防対策強化が必要である。しかし、法定化された歯周病の健診は、高校卒業時の18歳から歯周疾患検診の始まる40歳までカバーされておらず、歯周炎発症好発期間における歯科健診の機会が無いに等しい。また、低出生体重児・早産との関連から重要である妊産婦歯科健康診査も未だに法制化されていない。一方、健診はあくまで歯周病を早期発見するにとどまり、発症や再発、重症化の予防対策としては不十分である。
 現在まで幼児期、成人期、高齢期とライフステージを区切って対応することが一般的であり、歯周病治療は主に成人期に属するものであったが、今後はライフコースアプローチの観点から歯周病治療に取り組むべきであると思う。すなわち、高齢者で問題となる高度に進行した歯周疾患は、幼児期から成人期におけるしっかりとした歯周病治療により、歯周病はもとよりNCDsの発症、悪化が抑制され、高齢期での予防、あるいは発症も遅延でき、要支援、要介護予防が出来る可能性がある。
 以上を踏まえて人生100年時代に向けての歯科的ロードマップを考えるときに、NCDsに対する先制医療という概念が役立つのではないかと思う。NCDsは、遺伝素因と環境因子が関与して、長い期間を経て発症する。そのため、分子レベルでの発症機構の解明や早期診断を可能にするバイオマーカーの探索が進んでいる。これらのゲノム情報やバイオマーカーを使って、疾患が発症する前にハイリスク者を同定し、その時点から適切な介入を行うことで、発症の予防や遅延、また重症化を予防しようとするのが先制医療の概念である。ここで、歯周病も成人期以降に増加するNCDsに近い多因子性疾患の1つと捉えて、先制医療という認識を持って現在の研究、臨床を整理していくことにより高齢者の歯周病治療にも生かされるのではないかと思う。
 本シンポジウムでは、「成人期の歯科(歯周病)の立場から:「成人期の歯科(歯周病)の立場から: 介護予防としての歯周病治療の必要性と健康寿命延伸へ向けた歯周病抑制」と題して考えてみたい。