The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

The 32nd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

Jun 11 - Jun 13, 2021Held Online
The Congress of the Japanese Society of Gerodontology
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Jun 11 - Jun 13, 2021Held Online

[SY1-2]加齢に伴う口腔機能低下と大脳皮質機能

○井上 富雄1(1. 昭和大学歯学部口腔生理学講座)
【略歴】
1982年 大阪大学歯学部卒業
1987年 大阪大学大学院歯学研究科修了
1993年 大阪大学歯学部講師(口腔生理学講座)
2000年 昭和大学歯学部教授(口腔生理学講座)
2010年 日本顎口腔機能学会 会長(~2012)
2020年 歯科基礎医学会 理事長
口腔領域は、咀嚼、嚥下、発語など多様な運動機能や唾液の分泌機能の遂行に関わる。これらの機能は、老化に伴って生じる骨格筋量の低下、骨格筋における運動神経支配の脱落、唾液腺の萎縮、感覚神経の機能低下、中枢神経系のニューロンの活動性の低下、中枢神経系の領域間の線維連絡の脱落など、様々な原因によって低下する。咀嚼や嚥下の遂行には、大脳皮質の一次体性感覚野や一次運動野、咀嚼野が開始と制御に重要な役割を果たす。口腔・顎・顔面・咽頭・喉頭の感覚が投射する一次体性感覚野とこれらの領域の運動に関わる一次運動野は、手足など他の身体部位に関わる領域に比べて面積が非常に大きい。さらに手足の場合は、例えば左側の大脳皮質が反対側である右側の手足の運動を主としてコントロールする。これに対して、口腔・顎・顔面・咽頭・喉頭の運動機能には両側の大脳皮質がコントロールに関わる。すなわち手足に比べて極めて多くの大脳皮質のニューロンが口腔・顎・顔面・咽頭・喉頭の運動機能の遂行に関与している。大脳皮質などの中枢神経系は、環境の変化によって神経回路が組み替えられる可塑性を持つ。したがって、これらの運動機能に関わる大脳皮質の感覚野や運動野のニューロンは、老化による末梢の組織や神経系の機能低下に対応してその神経回路の特性を変化させることで、老化による機能低下を代償して正常な機能に保つための余力が大きいことを示唆している。また、感覚野や運動野だけでなく、前頭前野、補足運動野も高齢者の機能低下の代償に関わることが示されている。加齢による機能低下の種類によって、これらの高次脳による代償作用が有効なものとそうでないものがあり、それが機能低下の予後を左右するひとつの要因である可能性が推察される。
 老化による口腔機能低下の背景にある中枢神経系の変化を解析する実験は、老齢動物を使った実験の難しさから、これまで詳細な解析は進んでいなかった。私たちの研究室では、2光子顕微鏡を用いたカルシウムイメージング法や光遺伝学を応用した特定のニューロンの刺激法などを応用して、大脳皮質咀嚼野の機能に対する老化の影響、セロトニン神経系の活動による咀嚼運動パターンの変化を解析している。さらに、中枢性の機能低下が原因で生じる口腔乾燥症の病態の解明を目指して、唾液分泌の一次中枢である上唾液核ニューロンの活動をコントロールする神経メカニズムの解析を行っている。これらの研究結果の一部も併せて紹介したい。