The 33rd Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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Jun 10 - Jun 12, 2022Ryutopia Niigata City Performing Arts Center
The Congress of the Japanese Society of Gerodontology
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[SL2]口腔と他臓器との関連 その医学的根拠-新潟市高齢者コホート調査-

○葭原 明弘(新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔保健学分野)
【略歴】
1987年3月:新潟大学歯学部卒業
2007年4月:新潟大学大学院医歯学総合研究科 准教授
2011年9月~現在:新潟大学大学院医歯学総合研究科 教授
2012年1月~現在:新潟大学歯学部口腔生命福祉学科長


【抄録】
 1992年、JAMAにEBM宣言が掲載された。「根拠に基づいた医学は、直感、系統的でない臨床経験、病態生理学的合理づけを、臨床判断の十分な基本的根拠としては重要視しない。そして、臨床研究からの根拠の検証を重要視する」と記載されている。
 医学的根拠とは何であろうか。EBM宣言が出された背景には、根拠に基づかない医療が多く実施されてきた過去への反省があろう。専門医の私見、思弁、通念に基づくエビデンスは水準が低いことが知られている。評価を踏まえず慣例的に継続されてきた治療方法も存在する。また、動物実験を中心とする基礎研究の結果が因果関係を証明する最重要エビデンスであるとの考えは根強く残っているが、動物実験の結果と患者の治療結果が異なる例も少なからず存在している。治験で実施されているように、やはり疫学研究によって実証されたものが医学的根拠に値すると考える。
 日本歯科医師会は歯と口の健康週間の標語として「強い身体に丈夫な歯(昭和11年)」、「いつも清い歯、丈夫な体(昭和26年)」、「良い歯で、よくかみ、よいからだ(昭和30、 31、34-43年)」を採用したが、明確な根拠に基づいているとは 言いがたかった。高齢化社会に対処するためにさまざまな分野での取り組みが始まっている。行政の場で も、研究の場でも、教育の場でも、産業の場でも、形は違ってもその切実感に変わるところはない。 しかし、いかなる分野においても、老化や老人間題を取り扱うことは難しい。老化や老人の問題は特定の分野からのアプローチでは不十分であり、あらゆる分野からの取り組みが必要なことによる。
 そのような背景の中で1998年、厚生省(当時)による、口腔と他臓器との関連の評価をテーマとした、通称「8020データバンク調査」が全国4地域で行われた。その一環として新潟市では70歳と80歳の住民、全員に対し質問紙を送付し、調査への参加希望を確認できた方のうち無作為に抽出した763名を対象に口腔および全身健康状態に関する健康調査を実施した。その後、70歳の対象者600名に対しては80歳まで10年間のコホート研究(新潟市高齢者コホート調査)を継続した。2008年に一端は区切りとしたが、フォロー調査が現在も実施されている。我々歯科関係者が本調査をマネジメントし、医科、栄養、運動、感染症等の専門家も加わる形で、それぞれの視点から口腔を中心とした研究テーマが設定された。その結果、縦断、横断の150を超える調査より、口腔の健康は栄養、運動、生活習慣病、メンタルヘルス等に対し影響を及ぼし合っていることが明らかになってきた。
 「元気で長生き」は全ての人たちの願いであり、口腔の健康づくりは切り離せない重要なテーマである。もちろん、口腔の健康だけで健康寿命の延伸を達成することはできないが、口腔の健康なしでは健康寿命の延伸はかなわないことは明確である。今後とも、口腔健康状態の位置づけを明確にすべく研究を推進していく必要がある。