The 35th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

The 35th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

Jun 28 - Jun 30, 2024Sapporo Convention Center
The Congress of the Japanese Society of Gerodontology
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Jun 28 - Jun 30, 2024Sapporo Convention Center

[大会長講演]高齢者の日常診療におけるピットフォール~口腔内科学的観点の重要性~

○山崎 裕1(1. 北海道大学大学院歯学研究院口腔健康科学分野 高齢者歯科学教室)
【略歴】
1985年3月 北海道大学歯学部卒業
1985年4月 北海道大学歯学部第一口腔外科入局 (現:口腔診断内科)
1993年8月 北海道大学歯学部附属病院助手
2006年6月 北海道大学病院口腔内科講師
2013年8月 北海道大学大学院歯学研究科口腔健康科学講座高齢者歯科学教室教授
2022年4月 北海道大学病院 病院長補佐
【抄録(Abstract)】
一般に歯科の多くの先生方は、日常臨床において口腔粘膜の変化や口腔異常感の訴えに関して、あまり関心を持たれていないのではないでしょうか。超高齢社会が進展する今日、高齢者の時には不貞愁訴とも思えるような難治性の種々の訴えは確実に増加しています。そのなかには、歯や顎骨などの硬組織や義歯などの補綴物に関する訴えの他に、舌、歯肉、頬粘膜、口唇、咽頭などの軟組織におこっている訴えが少なくありません。近年、口腔機能低下症に注目が集まり本学会員の先生方も、口腔機能低下に関心が寄せられていると思いますが、健全に口腔が機能するためには口腔粘膜が良い状態になっているのが前提になります。体表を被覆・保護している皮膚と口腔粘膜の大きな違いは、皮膚が乾燥状態で機能しているのに対し、口腔粘膜は湿潤状態でないと十分な生理的機能を発揮できないところにあります。皮膚は細胞からの水分の蒸発を防ぐため上皮、特にその表層の角化層は厚くならざるをえませんが、口腔粘膜は湿潤状態ですので厚くなる必要はなく歯肉、硬口蓋、舌背を除いては非角化粘膜で薄くしなやかです。ところが口腔内が乾燥状態になると、生理的に角化上皮である糸状乳頭が伸長し上皮が厚くなるため外見は白っぽくなります。このように口腔粘膜は口腔の環境に応じて変化しています。
近年、高齢者の口腔内は乾燥傾向にあり、それと関係して「舌のひりひり」「口内の苦味・渋み」「口内のねばねば」などのさまざまな症状を訴えるようになっています。これらは、舌がひりひりするから舌痛症、口内の味がおかしいから味覚障害というような単純な関係ではなく口腔乾燥症、舌痛症(2次性)、味覚障害、口腔カンジダ症などが互いに密接な関係を有しています。例えば口腔乾燥症状が強くなると、舌がヒリヒリすると訴える舌痛症(2次性)、味が感じにくい、口内が苦いなどの味覚障害、平滑舌を呈し熱いものの飲食が痛くて厳しくなるカンジダ症などを併発する割合が高くなります。そのなかで、口腔カンジダ症は従来から、一般に健常者には発症しない、Candia albicansが原因菌である、抗真菌薬により容易に除菌可能である、培養検査で容易に検出されるなどと考えられていましたが、現在では必ずしも正しくない認識となっています。
本講演を通して、今後の高齢者の日常臨床において口腔の軟組織にも興味を持っていただければ幸いです。