[2-1-SY8-1]Slipped capital femoral epiphysis: epidemiology and pathophysiology
○Toshio Kitano(Dept. of Pediatr. Orthop. Surg., Osaka City Gen. Hosp.)
大腿骨頭すべり症(slipped capital femoral epiphysis、SCFE)は、前思春期から思春期前期の限られた時期に生じる成長期特有の股関節疾患である。大腿骨頭を形成する骨端-骨幹端間の成長軟骨板内において、骨端が骨幹端に対して後方(骨幹端が骨端に対して前上方)にすべることにより生じる。病因および疫学に関して、SCFE発症には肥満や外傷などの力学的因子に加えて成長が旺盛なこの時期における成長ホルモンや性ホルモンなどのホルモンバランス異常が関与しているとされる。下垂体機能低下症、甲状腺機能低下症、副甲状腺機能低下症・亢進症、性腺機能低下症、ビタミンD活性化障害や二次性副甲状腺機能亢進症などによる腎性骨ジストロフィー、などの明らかな内分泌異常を認める例は下垂体腺腫などホルモン分泌に関係する組織の腫瘍性病変に続発する例も含めてSCFE全体の数%を占めるにすぎない。1997年から2000年の米国での調査では発症率10.8人/10万人、男女比は1.65と男児に多く、発症時年齢について男児では11歳から14歳に集中し平均12.7歳、女児では10歳から12歳時の発症が多く平均11.2歳と女児の発症年齢が男児のそれに比べて1-2歳低く、以前の報告と比較して発症時年齢は低下傾向にあるとしている。日本での大規模疫学調査報告である2002年発表の日本小児整形外科学会マルチセンタースタディは、1997年から1999年の3年間に国内医療機関において診断されたSCFEから推測される発生率を男児2.2人/10万人、女児0.8人/10万人、男女比は3.1と報告している。正確な疫学調査と病態の解明そして治療法に関する最新の情報発信がSCFEの発症およびすべりの進行予防につながる。現在、日本小児整形外科学会では、2017年以降医療機関において診断されたSCFE例の全国調査を行っている。また、2020年1月以降診断例に対して登録を開始した日本小児整形外科学会会員によるJPOAレジストリーに本疾患を加えている。