The 15th Annual Meeting of Japan Academy of Critical Care Nursing

The 15th Annual Meeting of Japan Academy of Critical Care Nursing

Jun 15 - Jun 16, 2019別府国際コンベンションセンター B-Con Plaza
Japan Academy of Critical Care Nursing
The 15th Annual Meeting of Japan Academy of Critical Care Nursing

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Jun 15 - Jun 16, 2019別府国際コンベンションセンター B-Con Plaza

[SL2]SL2

○上園 保仁1(1. 国立がん研究センター研究所がん患者病態生理研究分野)
 せん妄は急性脳機能不全症候群のひとつであり、高齢者に発症しやすい。せん妄が消失したとしても死亡率の上昇及び認知機能低下につながりやすく、予防、早期発見、発症後の対応、せん妄からの離脱後のケアは大変重要となる。長時間の手術時および手術後にはせん妄が起こりやすく、注意力障害を中心に幻覚や妄想、コミュニケーション障害を起こし、患者・家族、特に最前線でケアにあたる看護師に大きな苦痛を招く。さらにせん妄は、手術成績ならびに患者のQuality of Life(QOL)の維持にも深刻な影響を及ぼす。私たちの先行研究では、緩和ケア医が支持療法・緩和ケアの中で治療や対応に苦慮する症状として、「しびれ」(77.2%)「だるさ」(72.3%)に次いで「せん妄」(54.7%)が挙げられた(H22-25年度厚生労働科学研究費補助金第3次対がん総合戦略研究事業)。この中で対応が一番遅れているのがせん妄である。しかしながら、せん妄発症の機序はほとんどわかっておらず、確立した予防および治療法がないのが現状である。
 国立がん研究センター中央病院における術後せん妄発症率の研究では、外科的がん切除後例の32%にせん妄発症が認められており、精神腫瘍科への診察依頼ではせん妄が最も多い。集中治療室(Intensive Care Unit, ICU)でのせん妄対策としては、認知機能の維持、鎮静などがあり、非挿管下でも行える鎮静方法として、アドレナリン性α2受容体アゴニストであるデクスメデトミジン(Dex)が広く用いられている。Dexはせん妄予防効果が示されているものの、Dexの効かないせん妄もある。またDexを処方されても約3割の患者がせん妄を発症すること、さらにDexの副作用として重篤な除脈や低血圧が惹起されることもあり、せん妄対策としてDexが真に必要な患者を見極めるマーカーが切望されている。
 私たちは現在、日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受け、Dexが効くあるいは無効な患者を見分けるバイオマーカーを見つけ、それを応用することでせん妄の発症を防ぎ、早期発見をめざすための研究を行っている。現在国立がん研究センター中央病院で6時間以上の手術(長時間手術と定義)を受ける患者の術前、術後および回復期の血液を採取し、その血漿を用いてさまざまなサイトカインの動き、ならびに血漿メタボローム解析(血漿中の代謝物質を網羅的に解析し、候補物質を探索する解析)を行い、せん妄を起こしやすいマーカー、せん妄が重篤化、長期化しやすいマーカー、Dexが効きやすいあるいは不応なマーカーなどの探索を行っているところである。
 さらにこれらの研究の取り組みに加え、ICUにおける鎮静管理せん妄状態の改善にその有効性が認められてきた漢方薬抑肝散について、その作用メカニズムなど、科学的エビデンスが明らかになったものを紹介しながら現状を伝えたい。せん妄に対する予防、早期発見、症状への対応ならびに離脱後のケアなど、クリティカルケアに携わる看護師の皆様の手術時、手術後せん妄の理解の一助になれば幸いである。