第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

Jun 11 - Jul 31, 2022北九州国際会議場/アジアインポートマートAIM
Japan Academy of Critical Care Nursing
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Jun 11 - Jul 31, 2022北九州国際会議場/アジアインポートマートAIM

[W1-14]記憶のゆがみに着目したPICSの早期発見・回復のための教育プログラム実施
−一般病棟看護師の看護実践の変化−

○吉井 裕子1、林 優子2(1. 大阪医科薬科大学病院 看護部、2. 前関西医科大学大学院 治療看護分野 クリティカルケア看護学領域)
〔研究目的〕本研究の目的は、ICU患者の記憶のゆがみに着目したpost intensive care syndrome(PICS)の早期発見・回復のための教育プログラムの実施による看護実践の変化を明らかにすることである。
〔研究方法〕文献を基に研究者が独自に作成した教育プログラムをICU退室後の患者を受け入れる一般病棟に勤務する看護師8名を対象に実施した。教育プログラムは、PICSと看護支援の知識を提供し、事例を用いたロールプレイングで構成されている。教育プログラム実施時に、PICSの早期発見・回復のための看護支援手順書を配布して、教育プログラム実施後に活用してもらった。データは、教育プログラム前後のグループインタビューにより、患者の言動や観察項目から気づいた点や重要と思い実践していることを収集した。データ分析は、グループインタビューによって得られたデータを、データ解析ソフトWord Miner1.5®を用いてテキストマイニング法により行った。本研究は所属大学医学倫理審査委員会の承認を得た上で実施した(承認番号:2021111)。
〔結果〕分析の結果、教育プログラム実施前後の看護実践の語りに出現していた語は、実施前は、《家族》《意識》《興奮》《環境》《安心》《安全》であり、実施後は、《私》《情報》《PICS》《説明》《不安》《帰室》などへ変化していた。さらに、実施後は、《ICU》《記憶》《話》《記録》《体験》の語が実施前より増加し、《病棟》の語が減少していた。看護実践については、実施前では9、実施後では13のクラスターが導き出され、看護実践の特徴が示された。それらの特徴は、実施前では、【患者の記憶や言動の異変に注意を払う、看護師主導の安心・安全を志向する関わり】であり、実施後では、【患者の思いや体験を引き出すタイミングを見極め、患者情報や患者の主体性を志向する関わり】と【知識発信の必要性と自己の振り返りによる行為の気づき】であった。看護実践の特徴は、看護師主導の安心・安全重視から、患者情報や患者の主体性重視に変化していた。さらに看護師自身の取り組む姿勢に影響を及ぼしていた。
〔考察〕PICSという概念は、約10年前から集中治療医学で用いられ、病棟看護師は、ICU看護師よりPICSの認知度が低いことが明らかになっている。記憶のゆがみは患者の主観的な体験であるため、患者が体験を表出しない限り見逃されやすい。看護師は、患者から表出されたネガティブな体験を記憶のゆがみとして捉えることが難しく、問題を認識しつつも適切な対応に困惑を感じている。そのような状況に対応するために、一般病棟看護師に記憶のゆがみに着目した教育プログラムを実施した結果、看護師主導の安心・安全を重視する関わりから、患者情報や患者の主体性を重視する看護実践に変化していた。このことは、教育プログラムにより看護師の患者を見る視点や患者への対応方法が変化したものと考えられた。教育プログラムによる介入によって変化をもたらした要因は、知識の提供である講義に加えて、事例を用いたロールプレイングを取り入れたことで、対応方法をイメージしやすくなったことと、看護支援手順書を配布し、臨床で活用できるようにしたことが、看護実践に変化をもたらしたと考えられた。これらの結果から、記憶のゆがみに着目したPICSの早期発見・回復のための教育プログラムが看護実践に変化を及ぼす効果があったと考えられた。
〔結論〕一般病棟看護師に、記憶のゆがみに着目したPICSの早期発見・回復のための教育プログラムを実施した結果、実施前後における看護師の看護実践が変化したことから、教育プログラムの効果が示された。今後は、患者のPICSの早期発見・回復のための看護支援の効果を検証することが課題である。