The 126th Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

The 126th Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

Sep 17 - Sep 20, 2019Iwate University
The Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science
The 126th Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

The 126th Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

Sep 17 - Sep 20, 2019Iwate University

[LS2-02]ジビエの捕獲と利活用に資する衛生検査システムの開発

*山﨑 朗子1(1. 岩手大農共同獣医)
 現在,我が国の地方自治体ではシカ,イノシシをはじめとする野生動物による被害が大きく,農業における経済損失は200億円に迫る.この現状を解決すべく,第一選択として捕獲による個体数コントロールが行われているが,大部分を狩猟者に委託するため,更なる経費が発生している.そのため,害獣による経済損失と捕獲に掛かる経費の緩和と新たな財源の獲得を目的として,捕獲された野生動物の肉をジビエとして産業化する動きが推進されている.家畜を対象とした食肉生産の場に置いては衛生管理基準が定められており,施設や生産物に対する定期的な衛生検査や衛生指導などが実施されているが,食肉衛生管理の専門家を配備していないイノシシやニホンジカ等の解体処理施設において同様のシステムが導入される事は期待できない.また,これらの検査については,経験値と主観に大きく結果が左右される,目視による方法から,高度な技術が必要とされる専門的な微生物検出法まで多様であり,検査経験のない人が手技を取得することは容易でない.そのため,現在は専門機関等に外注されているため,受検に対するコストと検査結果を得るまでに数日間を要することがネックとなっている.そのため,捕獲現場や解体処理施設においては,施設およびジビエの衛生状態を認識することが困難な状況にある.結果として,食べなれた家畜とは異なる素性の分からない肉というイメージに加え衛生面での保証がない不安を消費者が感じることは当然であり,このことが消費拡大を妨げる一因ともなっている.
 以上の問題点を解決するにあたり,捕獲者の精神的負担と労力を軽減し,且つ,高度な検査技術を必要としない簡便で精度の高い検査法の開発が求められている.この成果によって,生産段階の効率化と消費の増加,ひいては需要と供給の双方を同時に拡大することが期待される.
 そこで,本研究では国内外の衛生基準に照らし合わせた上,国内での感染事例があり,かつ重篤な症状を引き起こす感染症及び食中毒を選定し,それらを捕獲や解体の現場レベルで簡易に検査できる検査システムを開発することを目的とした.特に捕獲現場では使える機材が限定されており,使用者の衛生管理レベルもまちまちであることから,現地実証を行ないながら,遺伝子系検査技術とイムノクロマト検査技術の料技術を用いた検査キットを開発する.また,ここで得られたデータは現在開発中であるアプリを用いた野生動物個体情報認識システムに反映させ,疫学情報として広く共有される.そのため,本研究にて開発された検査機器を用いて衛生検査が簡便に出来るだけでなく,捕獲・解体現場での検査が継続するにつれ,検査結果と位置情報が蓄積されることで疫学情報として価値のあるものになる.この情報はアプリにアクセスすることで共有でき,この情報をもとに産地や個体情報によるリスクが予め想定できること,リスクの程度により肉の利用方法を効率よく決定できることが,将来的にも持続可能なジビエ産業の発展への貢献という着地点になると考える.