The 128th Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

The 128th Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

Mar 27 - Mar 31, 2021Kyushu University
The Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science
The 128th Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

The 128th Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

Mar 27 - Mar 31, 2021Kyushu University

[SSY1-04]乳牛におけるエコフィードの利用 -野菜未利用部サイレージの乳生産への利用

〇Kan Sato1,2(1.Tohoku University, Graduate School of Agricultural Science, 2.Tokyo University of Agriculture and Technology, Department of Science of Biological Production)
我が国の飼料自給率はカロリーベースで25%と低く、食料自給率を引き下げる要因となっている。さらに、輸入飼料は国際情勢によってその値段が変動するため、その価格により大きく畜産経営が左右される。このような背景から、日本の畜産農家ではエコフィードを含めた自給飼料の利用の拡大が進められてきた。食品加工工場などから排出される野菜未利用部(野菜端材)は、良質な粗飼料としての価値が期待できる一方で、廃棄量が非常に多いわけではない、水分が多い、品質が均一ではない、保存性が悪いなどの欠点が多く、十分に利用されてはいなかった。本講演では、キユーピー(株)と共同で開発した、キャベツの未利用部分で作成したサイレージ(キャベツサイレージ)の生産性評価を紹介し、乳牛用のエコフィードとしての有用性を解説する。
キユーピー株式会社により新たに開発された本製品は、硝酸態窒素含量が少なく、CP(粗たんぱく質)17.5、TDN(可消化養分総量)69.2と良質な飼料であり、TMRの一部をそのまま代替できる栄養素組成であった。
そこで、トウモロコシサイレージの乾物重1/3をキャベツサイレージで代替し、乳牛の生産性とルーメン発酵を含めた体内栄養代謝に対する影響を観察した。実験は、東京農工大学農学部付属FSセンターFM府中のホルスタイン種泌乳牛を供試し、1期を2週間とする2期の反転試験法により泌乳試験を実施した。
乾物摂取量および乳量は、キャベツサイレージにおいて有意に増加した。乳成分に関しては、対照区との間に差は認められなかった。よって、キャベツサイレージをTMRに混合すると、乳牛の乳生産向上に有効であることが示された。
ルーメン内容液中の総VFA濃度は、給与後2h、5hでトウモロコシサイレージと比べ有意な差は認められず、酢酸の割合が給与後2時間にキャベツサイレージ給与により有意に低下し、プロピオン酸の割合が給与後2時間に有意に高くなった。ルーメン内容液中のアンモニア態窒素濃度およびpHにキャベツサイレージ給与の影響は認められなかった。また、血中の生化学的性状も、キャベツサイレージ給与で変化は認められなかった。よって、キャベツサイレージは正常なルーメン発酵を維持するとともに、粗飼料と濃厚飼料の両面を持つ飼料である可能性が示唆された。
最後に、キャベツサイレージを1/3混合したTMRの消化率を測定した。乾物、タンパク質、NDFのいずれの消化率もトウモロコシサイレージと差はなく、乾物摂取量が増加にしたにもかかわらず、適切な消化率を維持していた。
以上の結果から、野菜未利用部により作成したサイレージは、エコフィードとして使用できるだけでなく、乳牛の生産性も向上することができる良質の飼料原料であるといえる。欠点としては、脱水を行っているにも関わらず水分含量が多く、長期保存に若干の不安があること、また、脱水のため細切していることから、多量の給与はルーメンの正常性を損なう可能性が考えられることがあげられる。さらに、キャベツの未利用部分を用いていることから、栄養素組成にロット間の差がある可能性も考えられる。しかしながら、キャベツサイレージ給与時の乳牛の乳生産はトウモロコシサイレージ給与時よりも優れており、乾物摂取量はキャベツサイレージで増加し、粗飼料原料として十分使用できるとともに、乳牛用配合飼料や大豆粕といった蛋白源となる濃厚飼料を節約できる飼料原料であることは、本研究から疑う余地はない。飼料自給率の上昇および食品製造残渣の有効活用につながる飼料原料として、今後の現場での活用に期待したい。

【略歴】
佐藤幹・教授
1992年東北大学 農学研究科修了、1992年 東北大学, 大学院・農学研究科, 助手、2006年 東京農工大学, 大学院共生科学技術研究院若手人材育成拠点, 特任助教授、2008年 東京農工大学, 農学研究院, 准教授、2016年 東京農工大学, 農学研究院, 教授、2020年 東北大学農学研究科, 教授