The 128th Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

The 128th Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

Mar 27 - Mar 31, 2021Kyushu University
The Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science
The 128th Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

The 128th Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

Mar 27 - Mar 31, 2021Kyushu University

[SSY2-01]食事パターンおよび血中β-アラニン濃度と認知症リスクの関連:久山町研究

〇Toshiharu Ninomiya1(1.Department of Epidemiology and Public Health, Graduate School of Medical Sciences, Kyushu University)
【要旨】
わが国は、4人に1人が高齢者という超高齢社会を迎え、認知症の増加が医療・社会問題となっている。さらに、認知症予防に有効な食事について関心が高まっている。近年の海外の臨床・疫学研究の成績では、地中海式食事パターンが認知症の発症リスクを減少させるという報告が散見される。しかし、わが国には固有の食文化があるため、認知症予防に有効なわが国固有の食事パターンを同定することが重要である。

福岡県久山町では、地域住民を対象とした生活習慣病や認知症の疫学研究(久山町研究)を継続している。そこで、1988年の生活習慣病健診で食事調査を受診した認知症のない60~79歳の住民1006人を17年間追跡調査した成績をもとに、日本人の地域住民における食習慣と認知症発症の関係を検討した。その結果、大豆製品と豆腐、緑黄色野菜、淡色野菜、藻類、牛乳・乳製品、芋類、果実類、魚の摂取量が多く、米とアルコールの摂取が低いという食事パターンを有する者では、全認知症の発症リスクが有意に低かった。病型別の検討では、アルツハイマー型認知症、血管性認知症ともに発症リスクが低かった。

さらに、近年、鶏肉に多く含有するイミダゾールジペプチドとして知られるカルノシン・アンセリンの摂取が抗酸化作用・抗糖化作用・抗炎症作用を介して認知機能障害に予防的に作用することが報告されている。そこで、カルノシン・アンセリンの分解産物であるβアラニンの血中濃度と認知症の発症リスクとの関連について検討した。血清βアラニン濃度は液体クロマトグラフ質量分析法により測定した。その結果、血清βアラニン濃度の上昇に伴い、全認知症およびアルツハイマー型認知症の発症リスクは有意に低下した。

将来の認知症を予防する上で、高血圧や糖尿病、喫煙などの危険因子の予防・管理に加え、食習慣にも留意することが重要であると考えられる。また、鶏肉などカルノシン・アンセリンあるいはβアラニンを含有する食事は、認知機能障害に対し保護的に作用することが示唆された。

【略歴】
1993年 九州大学医学部卒。2000年 九州大学医学博士取得。2003年 久山町研究、学術研究員。2006年 シドニー大学ジョージ国際保健研究所に留学、その後九州大学病院助教、シドニー大学留学(2度目)、九州大学附属総合コホートセンター・教授を経て、2016年 同大学 衛生・公衆衛生学分野・教授に就任。