The 131st Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

The 131st Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

Sep 18 - Sep 21, 2023Obihiro University
The Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science
The 131st Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

The 131st Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

Sep 18 - Sep 21, 2023Obihiro University

[AW-01]家畜の下垂体前葉からのホルモン分泌調節と生殖生理に関する研究および後進の育成

*Tsutomu Hashizume1(1. Iwate University)
(A) 研究業績: 家畜繁殖学における多岐にわたる分野において研究を行い、その成果を本学会誌や国内外の学術雑誌に発表した。研究業績は、「家畜の下垂体前葉からのホルモン分泌調節に関する研究」、「雄性家畜の生殖生理と生殖技術等に関する研究」および「雌性家畜の生殖生理と生殖技術等に関する研究」に大別される。(1)家畜の下垂体前葉からのホルモン分泌調節に関する研究では、神経ペプチドと反芻家畜の成長ホルモン(GH)等の分泌に関し検討し、脳内に存在するVIP、PACAPなど6種の神経ペプチドやプロスタグランジン(PG)がウシやヤギのGH等の分泌に関係していることを明らかにした。この研究により、日本畜産学会賞(1995年)が授与された。GH放出ペプチド(KP102)および胃から発見されたグレリンのウシやヤギにおけるGH放出効果を明らかにした。また脂肪細胞から分泌されるレプチンのウシ下垂体前葉細胞からのLHやGHの放出作用を明らかにした。キスペプチン(Kp10)と反芻家畜の性腺刺激ホルモン分泌に関して検討し、Kp10のウシ下垂体前葉細胞からのLH放出作用や、ウシやヤギに投与した時のLHとFSHの放出反応を明らかにした。また雄ヤギではKp10はテストステロンも放出させることを明らかにした。日長とヤギのGH分泌に関して検討し、長日条件は短日条件に比べGHパルスの振幅が高まり、平均GH濃度が高くなることを明らかにした。またこの現象にはメラトニンや脳内のドーパミン(DA)が関係していることを示した。サルソリノール(SAL)による反芻家畜の新しいプロラクチン(PRL)分泌支配機構に関して検討し、SALはウシ下垂体前葉細胞からPRLを放出させること、SALのウシへの脳室内投与やウシ、ヤギへの静脈内投与は血中PRL濃度を上昇させること、またSALによるPRL放出機構には脳内のDAが深く関わっていることを明らかにした。(2)雄性家畜の生殖生理と生殖技術等に関する研究では、ブタ精液の凍結保存方法について検討し、凍結精液の作製が難しかったブタ精子でも錠剤化法で凍結すると極めて良い成績の得られることを見出した。PGFの家畜精液中における出現と作用について検討した結果、ウシおよびブタ精液中には微量のPGFが出現すること、またPGFは射精機構に関与していることを明らかにした。(3)雌性家畜の生殖生理と生殖技術等に関する研究では、GH-IGF-I軸と家畜の生殖生理との関わりについて検討し、ヤギの血中GHとIGF-I濃度の妊娠期間中および分娩後の変化や子ヤギの成長に伴う変化を明らかにした。また発情期にはIGF-I濃度が上昇することも示した。ウシおよびブタ初期胚の発生に関わる様々な遺伝子発現動態について研究し、数々の新しい知見を加えた。以上、主な研究内容について紹介したが、本研究の実施にご協力頂いた学生ならびに共同研究者の方々に感謝申し上げたい。
(B) 後進者の指導育成: 岩手大学在職中は40年間にわたり、学部ならびに修士課程学生の家畜繁殖学分野に関する教育・研究に携わり、数多くの優秀な人材を多方面に輩出した。また岩手大学大学院連合農学研究科では博士課程の学生を指導した。博士課程で指導した学生の中の2名は日本畜産学会奨励賞を、また博士取得後、研究が継続できた他の1名は日本畜産学会賞を受賞した。修士課程で指導した学生の中の2名は東北畜産学会奨励賞を受賞し、他の1名は日本畜産学会優秀論文賞を受賞した。外国人の指導としては、ナイジェリア、エジプト、中国からの留学生や客員研究員計5名を受け入れ指導した。家畜人工授精師養成講習会を毎年開催し、多数の資格取得者を輩出した。
(C) 学会活動への貢献: 日本畜産学会の理事、代議員、機関紙編集委員などを務めたほか、東北畜産学会の学会長、幹事長、評議員、編集委員を務めた。第66回東北畜産学会大会を大会長として主催した。日本繁殖生物学会では長らく評議員を務め、現在名誉会員になっている。家畜人工授精研究会誌(現日本胚移植技術研究会)の編集委員や日本養豚研究会誌(現日本養豚学会)の編集幹事も務めた。また米国のDomestic Animal Endocrinologyの編集委員を務めた。

【略歴】
1978年3月に岩手大学大学院農学研究科修士課程(畜産学専攻)を修了後、同年5月に岩手大学農学部の助手として採用された。1985年3月に農学博士(東北大学)の学位を取得し、1991年10月に助教授、2003年5月に教授に昇任した。またこの間、米国のパデュー大学(1991年4月~1992年8月)やコロラド州立大学(1999年3月~2000年1月)の客員研究員として研究活動を行った。2018年3月に岩手大学を定年退職し、同年5月に岩手大学名誉教授となった。