The 131st Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

The 131st Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

Sep 18 - Sep 21, 2023Obihiro University
The Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science
The 131st Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

The 131st Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

Sep 18 - Sep 21, 2023Obihiro University

[CPS-05]乳製品のナノ構造解析~食べれる状態のまま、ナノスケールの「混ざり方」を調べる~

*Masato Ohnuma1(1. Hokkaido University)
食品の多くは様々な相(構成要素)が混ざり合って構成されています。例えば、ドレッシングは果汁と油分とが微細に混合した状態です。この混合状態は食品の品質に大きな影響を与えます。このことは同じ割合で構成される果汁と油分でも完全に分離してしまうとドレッシングとしての機能(おいしさ)は持たないことからご想像いただけるかと思います。このように食味や食感を左右する要素には構成要素の存在割合に加えて、それらの「分散状態(混ざり方)も影響を与えている」と考えらます。 乳を構成する要素には、直径数μm以上の脂肪球、0.2μm前後のカゼインミセル(タンパク質の塊)、さらにその100分の1程度の大きさ(直径2〜4nm)のカルシウムを含むクラスター(リン酸カルシウムクラスター(CCP))、そして水分中に溶け込んでいるホエイタンパク質が挙げられます。これらの存在割合、すなわち成分は牛乳の食味や食感を左右するだけでなく、乳酸菌や酵素(レンネット)などを添加して作るヨーグルトやチーズにおいても品質を左右する最も重要な要素です。一方で、同じ原料を使っても作り方(プロセス)が異なれば食味や食感が異なってきます。我々はその違いの一端を「混ざり方」を調べることで理解できるのではないかと考え、研究を進めています。 ドレッシングの場合はこの「混ざり方」の差を肉眼で見ることができますが、光が透過しないチーズでは可視光を使って中身を見ることができません。また、構成要素が数nmから数μmと小さいため、これらの「混ざり方」を調べていくためには「数nmのものを見ることができる分解能」を有し、「構成要素よりも十分に大きな領域(数mm3以上)」を観測する必要があります。さらに、水を含む食品を乾燥させず、ありのままの姿で見なくてはなりません。そこで我々はX線を使った小角散乱という手法でチーズの混ざり方を研究しています。複雑な構造を単純な曲線としてその特徴を評価する手法であるため、少々、わかりにくいのですが、異なる条件で製造した様々なチーズを比較することで、少しずつ、チーズのナノ構造が見えつつあります。本講演では現在までに得られた結果についてご紹介させていただきます。 本研究は酪農学園大 金田勇教授、栃原孝志准教授との共同研究、雪印メグミルクとの共同研究、北海道大学ロバスト拠点の支援、および白糠酪恵舎井ノ口知良代表、ジャパチーズ長尾英治代表取締役をはじめとする複数の工房のご協力とアドバイスをいただきながら進めております。

略歴)釧路市出身 1994年3月室蘭工業大学大学院 博士後期課程終了, 博士(工学)
同年4月 科学技術庁金属材料技術研究所 研究員、
物質・材料研究機構に組織変更、主任研究院、主幹研究員、主席研究員を経て2013年より北海道大学教授。この間、1998-1999年にデンマーク リソ国立研究所客員研究員、2010-2013年 ワルシャワ工科大学 客員教授 などを兼務。
専門は物質・材料のナノ構造解析, 2017年より研究対象を食品分野にも広げ、乳製品を中心に食品のナノメートルレベルでの混ざり方と食感、プロセスとの関係を研究している。