The 131st Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

The 131st Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

Sep 18 - Sep 21, 2023Obihiro University
The Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science
The 131st Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

The 131st Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

Sep 18 - Sep 21, 2023Obihiro University

[CPS-06]世界の食料事情と畜産が支える栄養への貢献

*Sakiko Shiratori1(1. Japan International Research Center for Agricultural Sciences)
要旨

 世界の人口は2022年11月に80億人を突破しました。2050年には100億人近くにまで増加すると推計されています。この増え続ける人口を養うための食料はどうやって確保していけばよいのでしょうか。しかも、地球を破滅に導くことなく、という条件つきで。
 そのような状況の中、2019年に発表されたEATランセット報告書(Willet et al. 2019)で提唱されたプラネタリーヘルスダイエット、人々の健康と地球の持続可能性を両立させるための食事、は大きな反響を呼びました。そのキーメッセージの1つは、現在と比べて動物性食品の摂取を削減すべきというものです。
 動物性食品が槍玉にあがる一番の理由は畜産の環境負荷です。家畜生産(放牧と飼料作物生産を含む)のために世界の農地面積の50%、地球上の土地の20%、農業用水の41%を使用しています(Beal et al. 2023)。また動物由来の食品生産は世界の温室効果ガス排出量の11%を占めると推定されています(WWF 2023)。しかし、適正な規模で地域の生態系や状況に応じて生産された場合には、循環型で多様な農業生態系に貢献すると評価されることもあります(Beal et al. 2023)。
 栄養の観点から見ると、動物性食品は植物性食品では不足しがちな必須栄養素を豊富に含み、多くの栄養素において生体利用効率が良いことからも、望ましいと言える性質を持っています。私たちはマダガスカルで家計調査を行い農家の栄養摂取について調べたところ、主食に大きく偏った食事に由来する微量栄養素不足が顕著にみられ、動物性食品のさらなる摂取が望まれました。一方で、赤身肉や加工肉の過剰摂取はがんなどの非感染性疾患につながることも指摘されており、動物性食品に健康上のリスクが無いわけではありません。
 このように、健康的で環境的に持続可能な食事と言った場合の動物性食品の役割に関する議論はしばしば二極化します。健康に良いか悪いか、環境に良いか悪いかは、見方や事情によって大きく異なるからです。なおEATランセット報告書でも、プラネタリーヘルスダイエットは世界共通の基準ではなく現地の事情に沿ったものであるべきだとの注意書きがなされています。

【略歴】
東京大学農学部国際開発農学専修卒業。株式会社日本総合研究所でIT関連の業務に携わった後、英国レディング大学農業開発経済学部修士課程、米国ミネソタ大学応用経済学部博士課程修了(Ph.D. in Agricultural and Applied Economics)。JICA研究所研究員、英国シェフィールド大学客員研究員等を経て、現在国際農林水産業研究センター情報広報室主任研究員、東京大学大学院農学生命科学研究科連携准教授。