The 131st Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

The 131st Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

Sep 18 - Sep 21, 2023Obihiro University
The Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science
The 131st Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

The 131st Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

Sep 18 - Sep 21, 2023Obihiro University

[YLS-02]岐阜県における飛騨牛生産の現場と繁殖研修事業の取り組み

*Susumu Koike1(1. JA)
岐阜県における飛騨牛生産の現場と繁殖研修事業の取り組み

 岐阜県は日本のほぼ中央に位置し、総面積は10,621平方キロメートル、その大地の多くは森林が占めています。自然環境も豊かで西南部の濃尾平野では東海地方で有数の穀倉地帯が広がっている一方、北部には乗鞍岳や御岳をはじめとする北アルプス険しい山々が連なります。海抜0メートルから3,000メートルに渡る広大な大地の中の多様な気候、清らかな水、澄み渡った空気、そして季節の寒暖差と昼夜の気温差などの自然の恵みを存分に受け、我々は全国でも有数の知名度を誇る岐阜県独自のブランド「飛騨牛」を生産しています。
 飛騨牛の生産基盤は、繫殖雌牛頭数・肉用牛飼養戸数・飛騨牛認定頭数が年々減少傾向にあり、特に繫殖雌牛の減少は子牛市場への上場頭数の減少および相場の高騰を招きました。飛騨牛の素牛を全て自県産で賄うことができない本県にとって、「繁殖雌牛の増頭」および「新規就農者の確保・担い手の育成」は大きな課題であります。そこで我々は、岐阜大学・岐阜県・本会の産官学で連携し、飛騨牛が抱える課題解決を目的とした飛騨牛繁殖研修事業を開始しました。当事業では、繁殖事業、研修事業および就農支援を3つの柱としており、令和30年度に繁殖牛舎完成、令和2年に就農研修機能を付与した飛騨牛繁殖研修センターを岐阜大学美濃加茂農場内に開所、そして同年4月から研修生を受け入れ、研修がスタートしました。これまでに5名の研修生を現場に送り出しており、うち3名は独立新規就農を果たしています。
 令和5年5月に新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが、季節性インフルエンザと同等の「5類」に移行されたことで、自粛および制限が大幅に緩和され、観光・飲食業界での需要回復など、直近の畜産情勢は明るい兆しが見えてきています。しかしながら、世界情勢の変化に伴う穀物価格の上昇および為替円安等は、依然として飼料価格の高止まりを招いており、追い打ちをかけるように資材価格および光熱費高騰が、畜産農家の経営を圧迫し続けています。そのため、肥育農家の「仕入品」にあたる素牛価格は低迷し、繁殖農家の経営はさらに厳しい状況です。和牛繁殖事業は初期投資が多額な上、資金回収に時間がかかるため、資金力が脆弱な方の新規参入ハードルは一層高いものとなり、岐阜県内の繁殖研修センターで学ぶ新規就農希望もいない状況が続いています。
 現在、当センターではこのような厳しい状況の中でも繁殖農家が永続的に経営できるようにするべく、IOT技術を活用した飼養管理技術手法やバイパス蛋白を活用した育成飼料の実証、地域の資源を活用した畜産経営モデルの確立に取り組む一方で、多様な研修メニューを準備し、畜産業界に参入する人材を確保する窓口となるべく日々取り組んでいます。今回のランチョンセミナーでは、こうした取り組みと共に、飛騨牛の特徴や良さについてもご紹介いたします。