The 2024 SSJ Fall Meeting

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Oct 21 - Oct 23, 2024Toki Messe
The SSJ Fall Meeting
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Oct 21 - Oct 23, 2024Toki Messe

[S06-09]Detailed seismic structure of the tremor-to-trench area in the westernmost Nankai Trough inferred from full waveform inversion analysis

*Ryuta ARAI1, Kazuya Shiraishi1, Yasuyuki Nakamura1, Gou Fujie1, Seiichi Miura1, Shuichi Kodaira1, Tsutomu Takahashi1, Yuka Kaiho1, Yohei Hamada1(1. JAMSTEC)
南海トラフや日向灘、ニュージーランド・ヒクランギ海溝では、スロースリップや低周波微動といったスロー地震がプレート沈み込み帯浅部で発生することが確認されている(Akuhara et al. 2023; Yamashita et al., 2021; Iwasaki et al., 2022)。これらの現象は断層内の高圧流体と関連して発生すると考えられているが、発生域の構造や物性に関しては依然不明な点が多い。南海トラフ内においては熊野灘、室戸沖および日向灘・足摺沖で、浅部スロー地震の発生が確認されているが、東海沖のように発生が報告されていない場所も存在する。プレート境界で発生する多様な断層すべりのメカニズムを理解する上で、こうした発生場所の地域差が生まれる要因についても理解する必要がある。海洋研究開発機構海域地震火山部門では、2018年度以降、南海トラフ全域のプレート沈み込み構造を高解像度で明らかにし、プレート境界断層でのすべり現象の多様性を支配する要因を理解することを目的として、稠密な地震波構造探査を継続的に実施している。2021年度には、海溝軸近傍で低周波微動が発生する場所の一つである日向灘・足摺沖において反射法・屈折法地震探査を実施した。本発表では、低周波微動発生域を沈み込み方向に縦断する探査測線(HYU04測線)での解析結果に基づき、プレート境界周辺の詳細構造について議論する。
2021年に取得した屈折法データに2008年に同一測線上で実施した既存データ(HY01測線; Nakanishi et al., 2018)を統合し、海底地震計1.7 km間隔の稠密な屈折法データを作成した。このデータセットに対して初動走時トモグラフィおよび波形インバージョン解析を適用し高解像度のP波速度構造を推定したところ、深さ5–8 kmのプレート境界周辺に明瞭な低速度域が点在することがわかった。この低速度パッチは海溝軸から沈み込み方向に約50 kmの範囲に局在しており、また低周波微動の活動域(Yamashita et al., 2021)と整合的であることから、微動活動と関連した構造であることが示唆される。同様の構造的特徴として、熊野灘で発生した低周波微動の波形を解析したToh et al. (2023) は、数メートルから数十メートルスケールの微小な散乱体が微動発生域に多数分布するモデルを提示している。その地質学的実態としては、Hirose et al. (2021) が同じく浅部スロー地震の発生領域である室戸沖での掘削孔から噴出する流体を観測し、デコルマ面直下に数百メートル幅、数十メートル厚の高圧な帯水層が存在することを指摘している。本研究で検出された低速度パッチもプレート境界断層に局在した帯水層に関連した構造を反映している可能性がある。

参考文献
Akuhara et al. (2023) Geophys. J. Int., 235, 2727–2742
Hirose et al. (2021) J. Geophys. Res. Solid Earth, 126, e2021JB021831
Iwasaki et al. (2022) J. Geophys. Res. Solid Earth, 127, e2021JB022161
Nakanishi et al. (2018) in Geology and Tectonics of Subduction zones: A Tribute to Gaku Kimura, 69–86
Toh et al. (2023) Geophys. Res. Lett., 50, e2022GL101851
Yamashita et al. (2021) Earth Planets Space, 73, 196