The 2024 SSJ Fall Meeting

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Oct 21 - Oct 23, 2024Toki Messe
The SSJ Fall Meeting
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Oct 21 - Oct 23, 2024Toki Messe

[S09-04]Evaluating earthquake criticality from frequency-magnitude distribution and seismic moment efficiency (2)

*Satoshi MATSUMOTO1(1. Institute of Seismology and Volcanology, Faculty of Science, Kyushu University)
マグニチュードと地震発生頻度の関係はグーテンベルグ・リヒター則におおむね従い,そのべき定数b値は時間空間的に変化することが多く報告されている.特に,b値は地殻中の差応力に逆比例する結果が得られている.Matsumoto et al.(2024)は高精度の発震機構解をもとにして,応力状態を示すモール円上に多数の地震をプロットし,その区分ごとにb値をもとめて,その場応力臨界状態に近づくとb値が小さいこと(規模の大きい地震が発生する)を示した.すなわち,b値は差応力と臨界状態に関係していることが明らかになった.
松本(2023)で示したように,多様な地震モーメントテンソルを足し合わせと個々の地震モーメントの和の比(地震モーメント比,Mst,/M0)を通してみる.弾性ひずみは主応力と45度をなす最大せん断方向の面で滑りが発生するとき最も“効率的”にひずみエネルギーが解放され,比は1になる.既存の亀裂が非最適面でかつ流体圧が高い場合,モーメント比は徐々に低下する.これは,モール円で考えると円の頂点に近い場合高く,内側に入ると低下することに対応する.ここから,地震で解放されるモーメントと解放される非弾性ひずみの比は地殻の臨界状態を示していると考えられる.
そこで本研究では,差応力と臨界状態に関係するb値とモーメント比の大地震前後における時間変化,さらに地震による非弾性変形レートを見ることで地震発生臨界度の評価を試みる.2016年熊本地震発生前10年間と本震発生後およそ3年間の発震機構解(Mitsuoka et al. (2022))と気象庁一元化カタログから得た震源データを用いた.震源域ではb値の小さい領域がみられたことは従来の研究で指摘されている.震源を含む深さ(10-20㎞)レンジでみると,最大前震発生前はおおむね誤差範囲で一定の値を持つ.本震発生後,b値やMst,/M0は大きくばらつくが,非弾性ひずみ速度が安定するとある一定値に落ち着く様子が見られる.地震断層付近では,震源領域で地震前に低b値,高Mst,/M0をとり,臨界状態であることが示されている.前後を見てみると,b値は大きくは変化していないがMstk/M0は低下している.そのほかのb所では地震前後でb値が上昇もしくは変化せず,Mstk/M0は低下する傾向がある.地震断層外では領域によって異なる.断層南部では地震前から低b値であったが地震後も変わらず,Mst,/M0が上昇する領域がみられた.北部や西部ではb値上昇もしくは変化なし,Mst,/M0低下もしくはほぼ変化がない.一方ひずみレートは上昇しており,活動の活発化がみられた領域もある.これら多様な様相は地震による応力変化だけではなく,流体圧上昇による強度低下に起因すると考えられる場合もあり,地震活動を分析するうえで重要な情報が得られることが示唆される.