[S09-07]Seismic activity in the transition zone between the ordinary earthquake and shallow slow earthquake in Hyuga-nada, southwest Japan
*Issei Hirata1, Yusuke Yamashita2, Takeshi Matsushima1, Yukihiro Nakatani3, Shuichiro Hirano3, Hiroshi Yakiwara3, Kazuo Nakahigashi4, Kentaro Emoto1, Satoshi Matsumoto1, Shukei Oyanagi2, Yoshihiro Ito2, ChingYu Hu5, Tomoaki Yamada5, Masanao Shinohara5(1. Kyushu University, 2. Kyoto University, 3. Kagoshima University, 4. Tokyo University of Marine Science and Technology, 5. The University of Tokyo)
日向灘はユーラシアプレートの下にフィリピン海プレートが沈み込んでいる領域で,通常の地震とスロー地震の両方が発生している.プレート境界地震が発生する深さ15-30 km の地震発生層のdown-dip側では長期的スロースリップが,up-dip側では浅部テクトニック微動や浅部超低周波地震が発生していることが測地観測や地震観測研究により,ここ10年の間で明らかとなっている.通常の地震については気象庁一元化震源カタログがあるが,日向灘で発生する地震は陸上観測点のデータのみで解析しているため,震源決定精度は低く,特に深さの詳細な分布は得られていない.そこで,2021年から2022年にかけて,日向灘の浅部スロー地震と通常の地震の発生領域境界部において,それぞれの現象がどの場所で発生しているのかを明らかにするため,海底地震計を用いた直上観測が行われた.
平田・他(2024, JpGU)では,この観測データを用いて,本研究領域で実施された地震波構造探査(Arai et al., 2023)の結果をもとに作成した一次元速度構造を使用し,一次元速度構造と観測点ごとの走時の系統的なずれを補正するために観測点補正も行ったうえで,気象庁一元化カタログに掲載されている通常の地震の震源再決定と発震機構解析を行い,震源分布や発震機構解の特徴について報告を行った.その結果,地震のクラスターが気象庁一元化震源と比較して水平方向で北西(陸の方向)に約10 km 異なる位置に決められたこと,それらが深さ15 km 付近に集中することを示した.しかし,クラスターを含め,対象としていた地震のほとんどが観測網の外側で発生していることが明らかとなり,観測点配置に依存していると見られる震源分布が得られるなど,得られた結果の解釈および議論には限界があった.
海底観測網の外側に決められた震源の絶対的な位置の精度を少しでも向上させ,発震機構解を精度良く求めるためには,震源に対して観測網のカバレッジを向上させることが重要である.そこで,これまで使用していた海底地震計のデータに加えて宮崎県沿岸の陸上地震観測点も使用し,現時点で使用可能な三次元速度構造を用いたdouble-difference法による震源決定を行うとともに,三次元速度構造を用いて計算された射出角を使って発震機構解析を行うこととした.陸上観測点は宮崎県南部沿岸の気象庁,防災科学技術研究所,九州大学,京都大学,鹿児島大学の10点を使用し,宮崎県沿岸部~海底地震観測網の間の領域で海底観測期間中に発生したM0以上の地震を気象庁一元化震源カタログから抽出して解析に用いる.対象となったイベント数は既に海底地震計のみで解析を行っていたイベント83個を含む408個である.陸上観測点のP波,S波の読み取り値は,気象庁の検測値がある観測点はそのまま使用した.大学独自の観測点においては,京都大学防災研究所宮崎観測所による読み取り値があれば使用し,ない場合は新たに読み取りを行った.海底地震観測点については読み取りが確実に行える観測点でのみ読み取りを実施した.初期震源の計算にはhypoMH(Hirata and Matsu’ura, 1987)を用い,三次元速度構造での震源計算にはtomoDD(Zhang and Thurber, 2003)を用いた.本発表ではこれらの結果を紹介するとともに,地震活動の特徴およびスロー地震と通常の地震の関係性についてについて考察と議論を行う予定である.
謝辞:本研究は文部科学省委託研究「防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト」および文部科学省「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)」の一環として実施されました.解析には気象庁一元化震源カタログおよび検測値を利用しました.海底地震計の設置・回収は長崎大学水産学部附属練習船「長崎丸」および海洋エンジニアリング株式会社所属「第三開洋丸」によって行われました.両船の船員の皆様ならびに乗船された京都大学,九州大学,鹿児島大学,東京海洋大学,東京大学の皆様に感謝の意を表します.また,海洋研究開発機構の新井隆太博士には2020年の日向灘の地震波構造探査の測線データを提供していただきました.以上の方々に心より御礼申し上げます.
平田・他(2024, JpGU)では,この観測データを用いて,本研究領域で実施された地震波構造探査(Arai et al., 2023)の結果をもとに作成した一次元速度構造を使用し,一次元速度構造と観測点ごとの走時の系統的なずれを補正するために観測点補正も行ったうえで,気象庁一元化カタログに掲載されている通常の地震の震源再決定と発震機構解析を行い,震源分布や発震機構解の特徴について報告を行った.その結果,地震のクラスターが気象庁一元化震源と比較して水平方向で北西(陸の方向)に約10 km 異なる位置に決められたこと,それらが深さ15 km 付近に集中することを示した.しかし,クラスターを含め,対象としていた地震のほとんどが観測網の外側で発生していることが明らかとなり,観測点配置に依存していると見られる震源分布が得られるなど,得られた結果の解釈および議論には限界があった.
海底観測網の外側に決められた震源の絶対的な位置の精度を少しでも向上させ,発震機構解を精度良く求めるためには,震源に対して観測網のカバレッジを向上させることが重要である.そこで,これまで使用していた海底地震計のデータに加えて宮崎県沿岸の陸上地震観測点も使用し,現時点で使用可能な三次元速度構造を用いたdouble-difference法による震源決定を行うとともに,三次元速度構造を用いて計算された射出角を使って発震機構解析を行うこととした.陸上観測点は宮崎県南部沿岸の気象庁,防災科学技術研究所,九州大学,京都大学,鹿児島大学の10点を使用し,宮崎県沿岸部~海底地震観測網の間の領域で海底観測期間中に発生したM0以上の地震を気象庁一元化震源カタログから抽出して解析に用いる.対象となったイベント数は既に海底地震計のみで解析を行っていたイベント83個を含む408個である.陸上観測点のP波,S波の読み取り値は,気象庁の検測値がある観測点はそのまま使用した.大学独自の観測点においては,京都大学防災研究所宮崎観測所による読み取り値があれば使用し,ない場合は新たに読み取りを行った.海底地震観測点については読み取りが確実に行える観測点でのみ読み取りを実施した.初期震源の計算にはhypoMH(Hirata and Matsu’ura, 1987)を用い,三次元速度構造での震源計算にはtomoDD(Zhang and Thurber, 2003)を用いた.本発表ではこれらの結果を紹介するとともに,地震活動の特徴およびスロー地震と通常の地震の関係性についてについて考察と議論を行う予定である.
謝辞:本研究は文部科学省委託研究「防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト」および文部科学省「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)」の一環として実施されました.解析には気象庁一元化震源カタログおよび検測値を利用しました.海底地震計の設置・回収は長崎大学水産学部附属練習船「長崎丸」および海洋エンジニアリング株式会社所属「第三開洋丸」によって行われました.両船の船員の皆様ならびに乗船された京都大学,九州大学,鹿児島大学,東京海洋大学,東京大学の皆様に感謝の意を表します.また,海洋研究開発機構の新井隆太博士には2020年の日向灘の地震波構造探査の測線データを提供していただきました.以上の方々に心より御礼申し上げます.
