[S20-02][Invited]Dynamic processes of ocean plate uncovered by active-source seismology
*Shuichi KODAIRA1(1. Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology (JAMSTEC))
海洋プレートは、その形成、移動、沈み込みの過程において様々な変動現象を伴い、その痕跡は地球内部の構造として残されている。また、地球内部の構造不均質がこれらの変動現象の原因ともなり得る。私は、海洋プレート運動に起因する地球内部変動現象を理解するために、地震学的地下構造探査を手段として用い、海洋プレート生成の場である海嶺、移動の場である太洋底、衝突・消失の場である沈み込み帯において研究を進めてきた。
地震学的地下構造研究の結果は、現在の地球上の構造に残された地球内部変動現象を示すスナップショットであり、地球内部変動現象の過程や原因を理解するためには、地震学、測地学、地質学、岩石学、地球化学などの様々な学問分野の研究者との議論が必要である。さらに、これらの分野の研究者も、基盤的な情報として地下構造の情報を必要としている。そのため、広大な海洋プレートの変動現象を研究するには、世界中の研究者との議論が不可欠であった。
本講演では、私がJAMSTECの地下構造研究グループの皆さんと共に進めてきた、沈み込み帯や海洋底の地下構造研究の成果を紹介する。受賞理由にも記載いただいたこれらの成果には、例えば南海トラフにおける沈み込む海山や海嶺の地下構造イメージングがあり、それらがプレート境界巨大地震断層の破壊伝播過程への影響やスロースリップの原因となること関する考察を行った。これらプレート境界での断層すべり挙動と地下構造の関係を議論した研究は、世界の沈み込み帯で類似の観測研究に繋がり、国際的にも大きな影響を与えた取り組みとなった。また、2011年東北沖地震の際には、JAMSTECが実施した緊急航海で取得されたデータから、地震時の断層すべりが海溝軸まで達し海底に突き抜けた直接的証拠を明らかにした。この成果は、東北地方太平洋沖地震調査掘削(JFAST)の計画立案の最も基盤的なデータとなった。
沈み込み帯の火山帯研究としては、伊豆・小笠原弧におけるプレート沈み込み帯での地殻形成過程に関しても重要な結果を示した。例えば、伊豆・小笠原島弧の火山フロントに沿った相模湾から硫黄島に渡る地下構造探査の結果、火山フロントに沿って中部地殻が一定波長をもってその厚さが変動していることを明らかにした。この結果は岩石学的研究と統合し、海洋性島弧の玄武岩火山において大陸的地殻が生成されていることを示す根拠となった。
一方、太洋底での地震探査研究からは、地震波速度異方性を示す最上部マントルとその直上の下部地殻内に確認された海嶺側に傾斜した反射面の存在から、プレートテクトニクスの原動力が海嶺でのマントル流動である可能性を提唱した。さらに、太洋底での長大測線探査データからマントル内から反射波を捉えることに成功し、海域地下構造探査によるマントル構造探査の可能性も示してきた。講演ではこれらの成果の紹介に加え、今後の地下構造研究の展望も述べたい。
謝辞:私の研究はすべて、プロジェクトに基づく組織的取り組みの成果であり、海域観測機器の開発・運用を進めてこられた先生方・先輩方、JAMSTECの地下構造研究グループの皆さん、一緒に研究をしてくれた学生の皆さんとの共同が無ければ成し得ませんでした。ここに記して感謝いたします。また、地震学会賞に推薦していただいた皆さんに心より感謝申し上げます。
地震学的地下構造研究の結果は、現在の地球上の構造に残された地球内部変動現象を示すスナップショットであり、地球内部変動現象の過程や原因を理解するためには、地震学、測地学、地質学、岩石学、地球化学などの様々な学問分野の研究者との議論が必要である。さらに、これらの分野の研究者も、基盤的な情報として地下構造の情報を必要としている。そのため、広大な海洋プレートの変動現象を研究するには、世界中の研究者との議論が不可欠であった。
本講演では、私がJAMSTECの地下構造研究グループの皆さんと共に進めてきた、沈み込み帯や海洋底の地下構造研究の成果を紹介する。受賞理由にも記載いただいたこれらの成果には、例えば南海トラフにおける沈み込む海山や海嶺の地下構造イメージングがあり、それらがプレート境界巨大地震断層の破壊伝播過程への影響やスロースリップの原因となること関する考察を行った。これらプレート境界での断層すべり挙動と地下構造の関係を議論した研究は、世界の沈み込み帯で類似の観測研究に繋がり、国際的にも大きな影響を与えた取り組みとなった。また、2011年東北沖地震の際には、JAMSTECが実施した緊急航海で取得されたデータから、地震時の断層すべりが海溝軸まで達し海底に突き抜けた直接的証拠を明らかにした。この成果は、東北地方太平洋沖地震調査掘削(JFAST)の計画立案の最も基盤的なデータとなった。
沈み込み帯の火山帯研究としては、伊豆・小笠原弧におけるプレート沈み込み帯での地殻形成過程に関しても重要な結果を示した。例えば、伊豆・小笠原島弧の火山フロントに沿った相模湾から硫黄島に渡る地下構造探査の結果、火山フロントに沿って中部地殻が一定波長をもってその厚さが変動していることを明らかにした。この結果は岩石学的研究と統合し、海洋性島弧の玄武岩火山において大陸的地殻が生成されていることを示す根拠となった。
一方、太洋底での地震探査研究からは、地震波速度異方性を示す最上部マントルとその直上の下部地殻内に確認された海嶺側に傾斜した反射面の存在から、プレートテクトニクスの原動力が海嶺でのマントル流動である可能性を提唱した。さらに、太洋底での長大測線探査データからマントル内から反射波を捉えることに成功し、海域地下構造探査によるマントル構造探査の可能性も示してきた。講演ではこれらの成果の紹介に加え、今後の地下構造研究の展望も述べたい。
謝辞:私の研究はすべて、プロジェクトに基づく組織的取り組みの成果であり、海域観測機器の開発・運用を進めてこられた先生方・先輩方、JAMSTECの地下構造研究グループの皆さん、一緒に研究をしてくれた学生の皆さんとの共同が無ければ成し得ませんでした。ここに記して感謝いたします。また、地震学会賞に推薦していただいた皆さんに心より感謝申し上げます。
