The 2024 SSJ Fall Meeting

The 2024 SSJ Fall Meeting

Oct 21 - Oct 23, 2024Toki Messe
The SSJ Fall Meeting
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The 2024 SSJ Fall Meeting

Oct 21 - Oct 23, 2024Toki Messe

[S20-11][Invited]Development of real-time processing method for seismic intensity

*Takashi Kunugi1, Shin Aoi1, Hiromitsu Nakamura1, Wataru Suzuki1, Nobuyuki Morikawa1, Hiroyuki Fujiwara1(1. National Research Institute for Earth Science and Disaster Resilience)
地震に伴う揺れや被害の大きさ及び分布を発災直後に把握することは適切な初動対応をとる上で極めて重要である。このような目的で使用される地震動指標として日本において最も普及しているのは震度(計測震度)であり、多くの機関が震度で初動のレベルを定めているだけでなく、多くの国民が震度と揺れや被害の程度に関して相当程度の感覚を持っているなど、防災上極めて大きな役割を果たしている。従来震度は体感や被害で定められていたが、計測震度の定義により算出の自動化が図られた(平成8年気象庁告示第4号)。しかし計測震度は一定時間幅(多くの場合1分間)の地震動記録の蓄積を待って算出されることから、即時性が求められる用途には適していない。本講演では、この問題を解決するために開発された震度のリアルタイム演算法(本演算法)の概要といくつかの応用事例についての紹介を行う。 
 強震動指標の計算の多くは、強震記録にフィルタ処理(積分、応答計算等も含む)を行い、一定区間での最大値(計測震度の場合は継続時間を考慮する)を取るという処理を行っている。計測震度を逐次的に計算する場合の問題は、高速フーリエ変換を用いた周波数領域でのフィルタ演算が必要となることである。本演算法は、周波数領域のフィルタの代わりに、再帰型フィルタを複数段用いて、時間領域で近似的なフィルタ処理を行うことを特徴としている。結果として、この方法で求められる計測震度は本来のものとは異なる概算値となるが、多くの強震記録を用いた解析から、リアルタイム演算による概算値と本来の定義に基づく計測震度の違いは、99%以上の強震記録に対して0.1以内であることが確認されている。これは、SI値、最大速度、最大加速度等の強震動指標から、回帰式を用いて計測震度の換算を行う方法よりはるかに精度が高いものである。加えて、本演算法は、強震記録のサンプル毎に値を算出することで迅速性も備えるため、速報用途としての利用に適する。
 本演算法は、防災科研の強震観測網(K-NET及びKiK-net)の強震計の他、気象庁や一部の自治体の装置にも実装されている。緊急地震速報において震源要素を用いず震度を予測するPLUM法は本手法を利用することで実現されており、地震の見逃しに起因する地震動の過小評価の低減等にも貢献している。一般の利用者が目にするところでは、日本列島の現在の揺れを表示する防災科研の「強震モニタ」や、民間企業によるWEBやスマートフォンアプリ上での情報提供サービス等での活用がなされている。また、大地震発生直後対応の意思決定を支援することを目的とした防災科研のリアルタイム地震被害推定システム(J-RISQ)においても迅速化のため本演算法を採用しており、2016年熊本地震や2024年能登半島地震をはじめ、推定結果を防災クロスビュー等で公開することで、自治体の災害対策本部等での活用も進みつつある。

謝辞 本演算法の開発および活用に携わった関係者各位に謝意を表します。