The 2024 SSJ Fall Meeting

The 2024 SSJ Fall Meeting

Oct 21 - Oct 23, 2024Toki Messe
The SSJ Fall Meeting
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Oct 21 - Oct 23, 2024Toki Messe

[S20-12][Invited]Large-scale friction experiments: What has been done and what will be done

*Eiichi FUKUYAMA1,2, Futoshi Yamashita1, Shiqing Xu3, Kazuo Mizoguchi4,1, Hironori Kawakata5,1, Kurama Okubo1, Sumire Maeda6,1(1. NIED, 2. Kyoto Univ., 3. SUSTech, 4. CRIEPI, 5. Ritsumeikan Univ., 6. AIST)
地震の開始、伝播、停止といった地震の破壊過程を議論する上で、断層摩擦は欠くことのできない要素である。しかしながら、断層摩擦は地震観測データからの推定が極めて困難な物理量である。それゆえ、1960年代ごろから世界各地の実験室において岩石摩擦実験が盛んに行われてきた。ただし、種々の実験上の制約により断層サイズの影響はうまく評価されてこなかった。

我々は、防災科学技術研究所に既設の大型振動台を利用した大型岩石摩擦試験機を構築し、1.5m長のすべり面を有する岩石摩擦実験を可能にした。この第1世代試験機は2012年2月に運用を開始し、2020年に大型振動台の運用が休止されるまで、21シリーズの実験が行われた。メートルサイズの岩石試料を用いた摩擦試験機は米国地質調査所や東京大学地震研究所においても開発されていたが、本試験機の最大の特徴は最大1m/sといった大きな載荷速度と、最大0.4mといった長いすべり距離であり、このような性能を有する試験機はこれまでになかった。しかしながら、共用施設である大型振動台を利用するため実験期間が制約されることが課題であった。そこで、2016年4月、実験期間に制限を受けない第2世代の試験機が構築された。第2世代試験機はハンドポンプとフラットジャッキを用いた非常にコンパクトでシンプルな載荷機構を有しており、第1世代試験機の2倍以上となる断層長4mのすべり面を利用できるという特徴がある。ただし、手動制御のため、載荷速度一定といった条件での実験は困難という課題があった。2023年、第2世代の試験機で実現困難であった一定載荷速度の実験を可能とし,さらには第1世代試験機の4倍の断層長を持つ第3世代の試験機を休止中の大型振動台建屋内に構築した。第3世代試験機は稼働を始めたところであるが、せん断載荷速度や載荷応力、法線応力分布に関して多様な制御が可能であり、また、種々のセンサーも稠密に設置されており、今後の展開が期待されるところである。

我々のグループは、これらの試験機を用いてさまざまな成果を出しつつ、世界中の研究者に影響を与えてきた。特に、従来のcmサイズの岩石摩擦実験では、空間不均質の効果は無視して議論が行われてきたが、本試験機を用いた実験により、すべり面の空間的強度不均質が断層すべりに及ぼす影響の重要性が指摘された(Yamashita et al., 2015, Nature; Xu et al., 2023, Nat. Geosci.).また、センサーを高密度ですべり面の周囲に配置することが可能となり、破壊伝播を正確に捉えることができるようになったため、従来は実験における検証が行われていなかった破壊先端のcohesive zoneの伝播速度依存性(Fukuyama et al., 2016, J. Seismol.)や2次元破壊フロントの存在(Fukuyama et al., 2018 Tectonophys.)といった新しい観測事実も得ることができるようになった。さらに、すべり面に薄いガウジパッチを設置し、制御された強度不均質分布のもとでの摩擦実験も始まっており(大久保・他, 2024,地震学会)、広い断層面を利用した先進的な実験研究への大きな窓を開いた試験機と言える。

今後は、第3世代試験機による各種の岩石摩擦実験が予定されており、より一層の岩石摩擦、ひいては、地震発生メカニズムへの貢献が期待される。特に、第3世代試験機では、光ファイバを用いての断層面内部の多点歪み測定が計画されており、破壊核の生成と不安定すべりへの移行過程への実験的な直接のアプローチが可能となることが期待される。

最後に、大型摩擦実験は、その試験機の構築に関わった多くの方々の応援がなければ成し得ないものであり、ここで全ての方々のお名前をあげられていないご無礼をお許しいただきたい。第1世代・第3世代試験機の構築に関わっていただいた(株)巴技研および(株)JTEKT、第1世代試験機の改造および第2世代試験機の製作に尽力いただいた(株)角田製作所、大型振動台のオペレーションを行っていただいた(株)AES、第1世代試験機から一貫して岩石試料の調達整形を担っていただいた関ヶ原イーテック(株)、第1世代から第3世代まで試験機設置やサポートを担っていただいた(株)杉山工業、特製センサーを作成いただいた(株)共和電業、(株)東京測器、試験機の構想段階からいろいろな局面において応援いただいた、嶋本利彦氏、野田博之氏、直井誠氏、東郷徹宏氏、箕輪親宏氏、御子柴正氏、防災科学技術研究所の各職員、技術開発賞に推薦していただいた廣瀬丈洋氏、高橋美紀氏、矢部康男氏、他、多数の皆様に感謝申し上げる。