[3-A-1-01]行政が進める医療DXの現状と方向性
*田中 彰子1(1. 厚生労働省 医政局参事官(特定医薬品開発支援・医療情報担当))
近年のデジタル技術の進歩、人口構造の変化、新型コロナウイルス感染症等により、医療分野でもデジタルトランスフォーメーション(DX)が急速に進展している。国もこの動きを推進すべく2022年に医療DX推進本部を設置した。推進本部では医療DXの定義を、「保健・医療・介護の各段階(疾病の発症予防、受診、診察・治療・薬剤処方、診断書等の作成、診療報酬の請求、医療介護の連携によるケア、地域医療連携、研究開発など)において発生する情報やデータを、全体最適された基盤(クラウドなど)を活用して、保健・医療や介護関係者の業務やシステム、データ保存の外部化・共通化・標準化を図り、国民自身の予防を促進し、より良質な医療やケアを受けられるように、社会や生活の形を変えること」と定義し、2023年6月に今後の医療DXの推進に関する工程表を策定した。工程表の中では、「全国医療情報プラットフォーム」を構築することが構想され進められている。具体的には、現在のレセプト情報共有を中心としたオンライン資格確認等システムを拡充し、電子カルテ情報も共有できるようにするためHL7FHIRや標準コードの普及、さらに医療機関間や自治体との情報共有のための連携基盤の構築が進められている。2030年までには、診療所を含め概ね全ての医療機関でこのような機能を持った電子カルテの導入が目指されている。さらにこうしたプラットフォームで蓄積されていく標準化された医療データを、研究者、産業界が二次利活用しやすいよう環境整備もされていく方針で議論が進んでいる。
