[4-A-3-01]改善サイクル“LHS”の実装が医療の質改善の最大の武器となる
*中島 直樹1(1. 九州大学大学院 医学系研究院 医療情報学講座)
改善サイクルの構築にはプロセス管理が重要な役割を持つ。工業、農業領域などの他領域は一般にプロセス管理が容易で、データ駆動型にPDCAサイクル等の改善サイクルを回しやすいが、医療においては改善サイクルの構築が難しい。対象が複雑な人や疾患であること、および医療プロセスが記録される電子カルテが自由文で記載され管理が困難であることなどが理由である。生成AIの登場により前進は見られるものの、AIの性能は学習データの質に左右されるため、学習データでもある電子カルテのプロセス管理機能とデータの質を強化する必要がある。電子カルテには既にプロセス管理が可能なパス機能があり、日本医療情報学会と日本クリニカルパス学会が2018年度からAMED事業で標準化を推進し、改善サイクルであるLearning Health System(LHS)の構築を試みた(ePath事業)。ePathは既に大手ベンダー三社がパッケージに実装し、普及しつつある。2023年度からのAMEDの分散治験システム構築事業では、治験ワークシートの電子化にePathを応用し、外来パス機能、パス入出力機能なども開発され、入院から外来、臨床研究にまでパス活用の場は拡大した。
ePathは診療現場のLHSを回し、医療の質、医療安全、経営効率などを改善することに加え、標準ガイドライン診療の支援、高品質なプロセスデータを学習する良質なAIへの発展が期待される。その他にも、地域連携パス全体の電子化による地域での一貫した診療支援や長期の医療指標によるLHS運用が可能となる。疾患コホート研究などのデータ品質の向上へも貢献する。さらに患者同意の下で、外来パスと双方向で連携する個人用のLHSアプリをスマホへ導入し、患者の日常生活のデータを管理することにより、患者エンゲージメントの強化、個別性の高い診療の提供、分散治験の精緻化などにも繋がる。
真の医療DXを実現するには、このように医療分野で迅速に回り得る改善サイクルの社会実装が必須と考える。
ePathは診療現場のLHSを回し、医療の質、医療安全、経営効率などを改善することに加え、標準ガイドライン診療の支援、高品質なプロセスデータを学習する良質なAIへの発展が期待される。その他にも、地域連携パス全体の電子化による地域での一貫した診療支援や長期の医療指標によるLHS運用が可能となる。疾患コホート研究などのデータ品質の向上へも貢献する。さらに患者同意の下で、外来パスと双方向で連携する個人用のLHSアプリをスマホへ導入し、患者の日常生活のデータを管理することにより、患者エンゲージメントの強化、個別性の高い診療の提供、分散治験の精緻化などにも繋がる。
真の医療DXを実現するには、このように医療分野で迅速に回り得る改善サイクルの社会実装が必須と考える。
