日本畜産学会第130回大会

日本畜産学会第130回大会

2022年9月14日〜9月17日東京農業大学
日本畜産学会大会
日本畜産学会第130回大会

日本畜産学会第130回大会

2022年9月14日〜9月17日東京農業大学

[IIYS-03]簡便で再現性の高いウシ精巣血管灌流法の確立

*矢口 沙郁1、川邉 悠介1、鈴木 充子1、沼邊 孝2、種村 健太郎1、原 健士朗1(1. 東北大院農、2. みやぎ農業振興公社)
肉牛生産過程で産業廃棄物として生じる若齢ウシの去勢精巣を用いて体外で精子形成を行うことができれば、ウシの遺伝的多様性低下を食い止める技術への応用や、去勢で失われるはずだった遺伝子資源の保存が期待される。培養にはウシ精巣を牧場から研究室へ輸送する必要があるが、その技術は確立されていない。精巣輸送時に生じる障害を提言する方法として、輸送液を臓器へ流し込み、血液と置換する灌流に着目した。灌流を用いるには、まずウシ精巣血管における灌流法を確立する必要がある。そこで本研究では、ウシ精巣の血管灌流法の確立を目的とした。5月齢雄ウシの去勢直後の精巣から精巣上体を除去後、白膜直下の精巣血管を観察・比較し、個体差が少なく、灌流液を流し込みやすい血管を特定した。その後、灌流の様子を可視化するためトリパンブルーを用いて灌流後、精巣断面を観察して実際に灌流が可能かどうかを確かめた。観察結果から、灌流に最適な血管は精巣動脈の末端であると判明した。また、実際に灌流すると、トリパンブルーが精巣の血管へ流れ込み、血液が精巣外へ排出される様子が確認された。精巣断面の様子から、精巣内部の血管にもトリパンブルーが行き渡っており、ウシ精巣血管灌流法を確立できたと言える。当灌流技術は簡便で再現性が高く、どのウシ精巣にも利用可能である。この技術により精巣輸送技術の向上や、形態学的解析への応用が期待される。