日本畜産学会第130回大会

日本畜産学会第130回大会

2022年9月14日〜9月17日東京農業大学
日本畜産学会大会
日本畜産学会第130回大会

日本畜産学会第130回大会

2022年9月14日〜9月17日東京農業大学

[IYS-07]マルチオミクス解析を用いた採卵鶏用飼育システムの多面的評価

*野崎 ののこ1、佐藤 逸史1、松原 忠弘1、浅黄 瑛紀1、東浦 裕紀1、加瀨 ちひろ2、永野 惇3,4、友永 省三5、後藤 達彦6、白石 純一7、佐藤 幹8、新村 毅1(1. 東京農工大院農、2. 麻布大獣、3. 龍谷大農、4. 慶大IAB、5. 京大農、6. 帯畜大畜産、7. 日獣生科大応生、8. 東北大農)
【目的】現在、アニマルウェルフェアに配慮した飼育システムが導入されつつあるが、鶏個体に与える影響の全体像は未だ不明である。本研究では、各種レベルの解析(フェノーム・トランスクリプトーム・メタボローム)により、飼育システムの違いが採卵鶏に及ぼす変化を明らかにすることを目的とした。【方法】ケージ・平飼い・放牧区に、採卵鶏を導入した。①行動観察・健康状態の測定を行った。②各飼育システム5羽ずつ、中枢組織(大脳・間脳)、末梢組織(肝臓・卵巣・卵管膨大部/子宮部)を採取し、計90サンプルのRNA-seqを行い、発現変動遺伝子についてパスウェイ解析を行った。③各飼育システム4羽ずつ採血を行い、血漿中代謝物質をCE-TOFMSおよびLC-TOFMSを用いて測定し、比較した。【結果】①行動観察の結果、平飼い区および放牧区で慰安行動など行動の多様性が増加し、この両区で福祉性が向上していたことが確認された。②福祉的な環境によって多臓器の遺伝子発現に変化が生じていた。また、パスウェイ解析により、癌化リスクのマーカーでもある代謝経路や遺伝子がケージ区で亢進していた。③ケージ区において、抗炎症・抗酸化作用を有する代謝物質が有意に変動していた。以上より、福祉性の違いによって生じる多臓器の遺伝子発現・代謝物プロファイルが明らかとなり、中枢組織の神経変性により抗炎症作用のある代謝物質が変動することが示唆された。