講演情報
[150]輸液ポンプの使用年数と気泡センサAD 値の異常割合およびエラー発生率の検証
朝倉 正晃, 南條 明徳, 三戸 一孝, 原田 俊介, 金田 達也, 柳原 佑美, 松倉 友哉 (豊川市民病院 診療技術局臨床工学科)
【背景】当院では臨床工学技士が輸液ポンプの点検を実施している.しかし,使用中に気泡アラームが作動しない事例が発生した.調査の結果,131台中32台で気泡センサの性能を示す気泡センサAD値(以下AD値)が規定範囲を逸脱した.これらの輸液ポンプはメーカ耐用年数6年から3年以上稼働していた.使用年数9年以上でエラーを検出または,12年を超えた機器は廃棄,12年未満の機器はセンサを交換しているがこの基準の妥当性は不明である.【目的】輸液ポンプの使用年数とAD値異常率およびエラー発生率の関係を調査し,気泡センサ交換基準の妥当性を検証する.【方法】2011年4月から2014年6月に購入した輸液ポンプを対象に,使用年数とAD値異常率,エラー発生率を分析した.AD値異常は使用年数別に規定値超過率を集計し,12年未満と以上で差を検証した.エラー発生率も同様に機器のログを基に比較し,使用年数がエラー発生に与える影響を評価した.統計解析はEZRを用いカイ二乗検定とFisherの正確検定を使用し有意水準p<0.05を統計学的有意と判定した.【結果】AD値は,12年未満の輸液ポンプでも異常が確認され,使用年数とAD値異常率に有意な相関は認められなかった(p>0.05).AD値異常率の詳細は,12年未満の輸液ポンプで約15%,12年以上で約20%であった.エラー発生率は,12年以上の輸液ポンプで有意に高く,12年未満と以上で明確な差が確認された.Fisherの正確検定では,12年以上の輸液ポンプのエラー発生オッズは12年未満と比較して約5倍(95%信頼区間:2.5-10.0)であり,統計学的に有意であった(p<0.01).【考察】12年を超える輸液ポンプではエラー発生率が高く,12年を交換基準とすることが適切と考える.また,エラー発生率が低く,かつ12年未満でAD値異常が検出された場合,センサ交換により機器使用継続が可能である.【結語】気泡センサ交換後の経過を調査し,基準が妥当であるか検討する.