第23回認知神経リハビリテーション学会学術集会

第23回認知神経リハビリテーション学会学術集会

2023年10月7日〜10月8日東京大学 伊藤国際学術研究センター
一般社団法人認知神経リハビリテーション学会
第23回認知神経リハビリテーション学会学術集会

第23回認知神経リハビリテーション学会学術集会

2023年10月7日〜10月8日東京大学 伊藤国際学術研究センター

[CD-04]運動学習下において可能なメタラーニングとは何か?- 脊髄小脳変性症患者の学習戦略への介入の試み -

*奥田 悠太1(1. 公益財団法人 脳血管研究所美原記念病院 神経難病リハビリテーション課)
メタラーニングは学習則を学習するという高次の学習であるが,運動学習の基盤をなす感覚誤差学習の障害下において学習可能な学習則については明らかではない.
 本クリニカルディスカッションでは,運動学習の首座である小脳が障害される脊髄小脳変性症(SCD)を事例にメタラーニングについて検討したい.SCDは運動失調を主体とした緩徐進行性の神経変性疾患であり,感覚誤差学習や潜在的運動学習(implicit motor learning)に問題が生じる.臨床観察上,残存している報酬予測誤差学習や明示的な運動学習(explicit motor learning)に比して,障害されている感覚予測誤差学習による運動課題解決に固執する傾向があり,環境に即した適応的動作遂行を阻害し,環境限定的な動作遂行にならざるを得ない症例を経験する.
 症例は,60歳代,男性.現病歴は,20年前より歩行時の動揺で発症し,11年前にSCA6の診断.ADLは全自立.もともと競輪選手をしており身体能力は高い.起立や立位動作において多関節協調が困難であり,後方重心となりやすく転倒を繰り返していた.症例からは,「足の裏全体に体重をのせるようにしている」との発言が聞かれ,足底下の圧情報に注意が向きやすかった.一方で足底圧情報をもとに自己身体の空間定位をすることはできず,他の情報にも注意を向けることができなかった.そのため足底圧を利用した誤差学習が行えないことを提示し,他の情報を利用した学習を促すことや,報酬予測誤差学習を取り入れた課題を行った.また求心情報自体は利用することができたため,単一の情報との行為間比較を行なった.その結果,多関節協調が見られるようになり,転倒はなくなった.しかしながら新規の課題においては,注意を向けるべきところを言語教示することで「以前に訓練したやつですね.じゃあこうすればいいのか」と戦略を変更することはできるものの,今まで学習したことを自ら転用することはできなかった.
 このように,本例では障害されている感覚運動学習方略への固執が残存している報酬予測誤差学習や明示的運動学習の自律的な選択が困難にしていたが,課題を通した気づきにより利用できない学習戦略の認識を促すことが可能であった.利用可能な学習戦略の認識の促しは,小脳障害患者におけるメタラーニングの一助となる可能性がある.