[O-03]横方向の手すりでのみリーチング可能距離を超えてリーチし転倒を繰り返すパーキンソン病患者の臨床評価と一考察
*三上 恭平1、菊地 豊2、濵田 裕幸3、安田 真章4、加茂 力5(1. 登戸内科・脳神経クリニック リハビリテーション科、2. 脳血管研究所美原記念病院 神経難病リハビリテーション課、3. 東京大学大学院工学系研究科、4. 東京大学医科学研究所附属病院 、5. 登戸内科・脳神経クリニック 脳神経内科)
【はじめに】
パーキンソン病(PD: Parkinson’s disease)患者の中には,遠くからリーチし,届かずに転倒を繰り返す患者がいる.今回,縦方向の手すり(縦手すり)は安全に使用できるが,横方向の手すり(横手すり)の使用では,転倒を繰り返す患者を経験した.以下に報告する.
【症例】
発表に際して説明し,同意を得た70歳代女性のPD患者.Hoehn and Yahr scale stage 4で罹病期間は27年,ドパミン総換算量は920㎎/日である.認知機能はMini Mental State Examination 28点と良好であった.本症例は,一週間に1,2回程度の転倒をしていた.特に横手すりに遠方からリーチングして届かないために転倒することが多く,「分かっているんだけど手を伸ばしてしまう」と訴えた.一方,縦手すりへのリーチではこのような失敗がなかった.
【評価】
床に水平方向と垂直方向に設置した棒(横棒と縦棒)に対して,体幹を前屈せずにリーチングした際の把持可能な距離の判断(予測距離)とリーチ可能距離の実測をon時に評価した.評価方法は患者から1m離した位置から直径5cmの棒を徐々に患者に近づけ,リーチして把持可能と判断した時点を予測距離として5回実施した.なお各試行後にリーチ可能距離を実測した.
【結果】
本症例の上肢長は67cmであった.縦棒に対する予測距離は62.2±1.6cmと上肢長以下であった.一方,横棒に対する予測距離は80.6±0.8cmと上肢長を大きく超えていた.さらに横棒の際には予測距離の測定後に実測して届かないことを確認したが,その後も同様の位置で届きそうだと判断した.この時患者は「なんか掴めそうだと思っちゃう」と訴えた.
【考察】
本症例は,横棒に対して体幹を前屈させずにリーチングできる距離を繰り返し過大評価し,失敗を経験しても修正されなかった.縦と横の物体の知覚には縦方向選択性細胞と横方向選択性細胞という異なる神経細胞が関与する.また過去の経験から横棒は縦棒よりも体重を預けるという意味を持ちやすい.この視覚情報処理と物体の持つ特性の違いが縦棒と横棒の予測距離の差に影響した可能性がある.さらに失敗を繰り返す背景には,経験に基づき行為を修正するメカニズムとは異なり,届かないと自覚していても行ってしまうようなメカニズムが関与している可能性がある.
パーキンソン病(PD: Parkinson’s disease)患者の中には,遠くからリーチし,届かずに転倒を繰り返す患者がいる.今回,縦方向の手すり(縦手すり)は安全に使用できるが,横方向の手すり(横手すり)の使用では,転倒を繰り返す患者を経験した.以下に報告する.
【症例】
発表に際して説明し,同意を得た70歳代女性のPD患者.Hoehn and Yahr scale stage 4で罹病期間は27年,ドパミン総換算量は920㎎/日である.認知機能はMini Mental State Examination 28点と良好であった.本症例は,一週間に1,2回程度の転倒をしていた.特に横手すりに遠方からリーチングして届かないために転倒することが多く,「分かっているんだけど手を伸ばしてしまう」と訴えた.一方,縦手すりへのリーチではこのような失敗がなかった.
【評価】
床に水平方向と垂直方向に設置した棒(横棒と縦棒)に対して,体幹を前屈せずにリーチングした際の把持可能な距離の判断(予測距離)とリーチ可能距離の実測をon時に評価した.評価方法は患者から1m離した位置から直径5cmの棒を徐々に患者に近づけ,リーチして把持可能と判断した時点を予測距離として5回実施した.なお各試行後にリーチ可能距離を実測した.
【結果】
本症例の上肢長は67cmであった.縦棒に対する予測距離は62.2±1.6cmと上肢長以下であった.一方,横棒に対する予測距離は80.6±0.8cmと上肢長を大きく超えていた.さらに横棒の際には予測距離の測定後に実測して届かないことを確認したが,その後も同様の位置で届きそうだと判断した.この時患者は「なんか掴めそうだと思っちゃう」と訴えた.
【考察】
本症例は,横棒に対して体幹を前屈させずにリーチングできる距離を繰り返し過大評価し,失敗を経験しても修正されなかった.縦と横の物体の知覚には縦方向選択性細胞と横方向選択性細胞という異なる神経細胞が関与する.また過去の経験から横棒は縦棒よりも体重を預けるという意味を持ちやすい.この視覚情報処理と物体の持つ特性の違いが縦棒と横棒の予測距離の差に影響した可能性がある.さらに失敗を繰り返す背景には,経験に基づき行為を修正するメカニズムとは異なり,届かないと自覚していても行ってしまうようなメカニズムが関与している可能性がある.
