[O-04]両手動作時に特異的な消去現象がみられた脳梗塞後の1症例
*辻田 有希奈1、林田 佳子1、赤口 諒1、石橋 ゆりえ1、奥埜 博之1(1. 摂南総合病院 リハビリテーション科)
【はじめに】
今回,多様な高次脳機能障害を呈し両手動作時に特異的な消去現象がみられた症例に対し,片手・両手動作時の認識の違いに着目した病態解釈と介入を試み,良好な結果を得たため報告する.
【症例紹介】
症例は右頭頂葉,右頭頂-側頭接合部に脳梗塞を認めた80歳代の右利き女性である.ADL場面で服薬のために左手で把持した薬袋を鋏で切る際,薬袋を落としたことに気づかずに切る動作を続けるなど,両手動作時の消去現象がみられた.発症3ヶ月後,BRSは上肢Ⅴ,手指Ⅴ,深部・表在感覚は軽度鈍麻,左半盲を認めた.MMSEは28/30点,TMT-J Part Aは141秒,Part Bは209秒であった.BIT通常検査は116/146点,Fluff testは左上肢0/6,左体幹2/3,右体幹2/3で両下肢は共に6/6であった.左手の立体覚は2/5で,両側同時刺激に対する消去現象は,触覚0/5,視覚3/5であった.
【介入と経過】
椅子座位で机上の両手を隠し,右手で把持した素材を左手で識別する課題を2条件で行った.片手動作条件では識別できたが,両手動作条件では識別が困難であった.これは左手の高次体性感覚障害に加え,注意障害・消去現象・左身体空間無視により,両手動作時の知覚が困難となった結果であり,運動時の消去現象を反映していると考えた.そこで,上記2条件の課題を交互に実施し,両課題時の認識の違いについて比較を求める介入を20分/日,1週間実施した.その結果,左手の立体覚は5/5となり,消去現象は触覚1/5,視覚4/5で,Fluff testは左上肢2/6となった.また,鋏を用いた両手での服薬動作が可能となり,薬袋を落とした際の気づきも得られるようになった.
【考察】
触覚情報の探索のために能動的に注意を向けた結果,知覚の停滞の自覚が可能となり,特異的な消去現象の改善に至ったと考える.能動的動作時は運動による内発的な体性感覚入力を伴うため,運動時の消去現象を有する場合は受動刺激の消去現象の評価のみでは不十分であるとの報告がある.今回,両手動作時に消去現象を有する症例に対し,単に両側同時刺激での課題を行うのではなく,健側で把持した状態での識別課題や,患側のみで実施した場合との差異を求めるような能動的な知覚探索課題の重要性が示唆された.
【倫理的配慮,説明と同意】
本報告に関して書面にて説明と同意を得ている.
今回,多様な高次脳機能障害を呈し両手動作時に特異的な消去現象がみられた症例に対し,片手・両手動作時の認識の違いに着目した病態解釈と介入を試み,良好な結果を得たため報告する.
【症例紹介】
症例は右頭頂葉,右頭頂-側頭接合部に脳梗塞を認めた80歳代の右利き女性である.ADL場面で服薬のために左手で把持した薬袋を鋏で切る際,薬袋を落としたことに気づかずに切る動作を続けるなど,両手動作時の消去現象がみられた.発症3ヶ月後,BRSは上肢Ⅴ,手指Ⅴ,深部・表在感覚は軽度鈍麻,左半盲を認めた.MMSEは28/30点,TMT-J Part Aは141秒,Part Bは209秒であった.BIT通常検査は116/146点,Fluff testは左上肢0/6,左体幹2/3,右体幹2/3で両下肢は共に6/6であった.左手の立体覚は2/5で,両側同時刺激に対する消去現象は,触覚0/5,視覚3/5であった.
【介入と経過】
椅子座位で机上の両手を隠し,右手で把持した素材を左手で識別する課題を2条件で行った.片手動作条件では識別できたが,両手動作条件では識別が困難であった.これは左手の高次体性感覚障害に加え,注意障害・消去現象・左身体空間無視により,両手動作時の知覚が困難となった結果であり,運動時の消去現象を反映していると考えた.そこで,上記2条件の課題を交互に実施し,両課題時の認識の違いについて比較を求める介入を20分/日,1週間実施した.その結果,左手の立体覚は5/5となり,消去現象は触覚1/5,視覚4/5で,Fluff testは左上肢2/6となった.また,鋏を用いた両手での服薬動作が可能となり,薬袋を落とした際の気づきも得られるようになった.
【考察】
触覚情報の探索のために能動的に注意を向けた結果,知覚の停滞の自覚が可能となり,特異的な消去現象の改善に至ったと考える.能動的動作時は運動による内発的な体性感覚入力を伴うため,運動時の消去現象を有する場合は受動刺激の消去現象の評価のみでは不十分であるとの報告がある.今回,両手動作時に消去現象を有する症例に対し,単に両側同時刺激での課題を行うのではなく,健側で把持した状態での識別課題や,患側のみで実施した場合との差異を求めるような能動的な知覚探索課題の重要性が示唆された.
【倫理的配慮,説明と同意】
本報告に関して書面にて説明と同意を得ている.
