第23回認知神経リハビリテーション学会学術集会
2023年10月7日〜10月8日東京大学 伊藤国際学術研究センター
第23回認知神経リハビリテーション学会学術集会
2023年10月7日〜10月8日東京大学 伊藤国際学術研究センター
[O-06]重心移動に対する教示方法を工夫することで視覚に依存した立位姿勢制御とすくみ足が改善したパーキンソン病患者の一例 − 外的焦点化を用いた感覚再重み付け訓練の試み −
*金 起徹1、壹岐 伸弥1、石垣 智也1,2、川崎 翼3、川口 琢也1(1. 医療法人 香庸会 川口脳神経外科リハビリクリニック、2. 名古屋学院大学 リハビリテーション学部 理学療法学科、3. 東京国際大学 医療健康学部 理学療法学科)
【はじめに】
パーキンソン病（PD）患者の立位姿勢制御は視覚に依存しやすく，この依存度とすくみ足重症度は関係する．そのため，すくみ足の改善には，立位姿勢制御の方略をいかに視覚から体性感覚へ再重み付けしていくかが重要となる．一方，PD患者の立位姿勢制御の再重み付けの具体的な方法は明らかではない．本報告の目的は，重心動揺計と標準注意検査法（CAT）から病態特性を解釈した上で，外的焦点化を用いた重心移動訓練の有効性について症例考察から検討することである．
【症例紹介】
PDと診断され7年が経過した60歳代男性．主な症状は姿勢反射障害，すくみ足であった．初回評価はMDS-UPDRS-partⅢ（UPDRS）21/132点，Characterizing Freezing of Gait questionnaire PartⅡ（C-FOGQ）39/48点，重心動揺計ではロンベルグ率2.0であり，静的立位の足圧中心は右へ2cm変位していた．また，左下肢への重心移動時には「左足に体重移動する方法が分からない」と内省され，「左足に体重を乗せる」等の足底面へ注意を向ける口頭指示では重心移動が困難であり，足圧中心をリアルタイムに投影し視覚フィードバックを加えても同様であった．
【経過】
教示方法の再検討を目的にCATを評価すると，視覚ワーキングメモリ（WM）や注意の持続・分配性が低下していた．CATと重心動揺計の結果より，視覚フィードバックや複雑な口頭指示では重心移動が困難であると仮説を立て，体性感覚に注意を向けつつも，課題の理解を容易にするために「足裏のマットを踏むように」と外的焦点に注意を向けた口頭指示にて重心移動訓練を行った．結果，「マットを踏む感覚が分かりやすい」と内省され，静的立位の足圧中心は正中位へ修正された．また，初期評価から3ヶ月後にはUPDRS 20/132点，C-FOGQ 25/48点，ロンベルグ率1.1へ変化した．
【考察】
外的焦点化でのバランス練習は，注意機能の低下した症例に有効との報告がある．本症例は視覚WMと注意機能の低下に加え，視覚依存傾向の立位姿勢制御であり，このような病態特性を有する症例では，外的焦点化により体性感覚に再重み付けを促す方法が有効となる可能性がある．
【倫理的配慮】
本報告に対して，対象者の個人情報とプライバシー保護に配慮し，十分な説明を行った後に書面にて同意を得た．
パーキンソン病（PD）患者の立位姿勢制御は視覚に依存しやすく，この依存度とすくみ足重症度は関係する．そのため，すくみ足の改善には，立位姿勢制御の方略をいかに視覚から体性感覚へ再重み付けしていくかが重要となる．一方，PD患者の立位姿勢制御の再重み付けの具体的な方法は明らかではない．本報告の目的は，重心動揺計と標準注意検査法（CAT）から病態特性を解釈した上で，外的焦点化を用いた重心移動訓練の有効性について症例考察から検討することである．
【症例紹介】
PDと診断され7年が経過した60歳代男性．主な症状は姿勢反射障害，すくみ足であった．初回評価はMDS-UPDRS-partⅢ（UPDRS）21/132点，Characterizing Freezing of Gait questionnaire PartⅡ（C-FOGQ）39/48点，重心動揺計ではロンベルグ率2.0であり，静的立位の足圧中心は右へ2cm変位していた．また，左下肢への重心移動時には「左足に体重移動する方法が分からない」と内省され，「左足に体重を乗せる」等の足底面へ注意を向ける口頭指示では重心移動が困難であり，足圧中心をリアルタイムに投影し視覚フィードバックを加えても同様であった．
【経過】
教示方法の再検討を目的にCATを評価すると，視覚ワーキングメモリ（WM）や注意の持続・分配性が低下していた．CATと重心動揺計の結果より，視覚フィードバックや複雑な口頭指示では重心移動が困難であると仮説を立て，体性感覚に注意を向けつつも，課題の理解を容易にするために「足裏のマットを踏むように」と外的焦点に注意を向けた口頭指示にて重心移動訓練を行った．結果，「マットを踏む感覚が分かりやすい」と内省され，静的立位の足圧中心は正中位へ修正された．また，初期評価から3ヶ月後にはUPDRS 20/132点，C-FOGQ 25/48点，ロンベルグ率1.1へ変化した．
【考察】
外的焦点化でのバランス練習は，注意機能の低下した症例に有効との報告がある．本症例は視覚WMと注意機能の低下に加え，視覚依存傾向の立位姿勢制御であり，このような病態特性を有する症例では，外的焦点化により体性感覚に再重み付けを促す方法が有効となる可能性がある．
【倫理的配慮】
本報告に対して，対象者の個人情報とプライバシー保護に配慮し，十分な説明を行った後に書面にて同意を得た．