第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

2020年11月22日〜11月24日オンライン開催
日本小児循環器学会総会・学術集会
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2020年11月22日〜11月24日オンライン開催

[II-DB01-3]高度肺高血圧をともなう未加療の成人期部分肺静脈還流異常症への統合的治療

若松 大樹1, 佐戸川 弘之1, 黒澤 博之1, 横山 斉1, 桃井 伸緒2, 青柳 良倫2, 林 真理子2, 富田 陽一2, 中里 和彦3, 竹石 恭知3(1.福島県立医科大学医学部 心臓血管外科, 2.福島県立医科大学医学部 小児科, 3.福島県立医科大学医学部 循環器内科)

キーワード:

成人先天性心疾患、部分肺静脈還流異常症、外科治療

<はじめに>高度肺高血圧を合併した未治療の成人先天性心疾患の手術適応判断は難しい。また上大静脈高位に還流する部分肺静脈還流異常症(PAPVR)の場合は心房内re-routingが困難なため工夫が必要となる。内科的に肺高血圧治療を行ったのちにWarden変法による修復術を成人例に行った。<症例>43歳男性。20歳頃から胸部異常陰影を指摘されたが放置。3年前から労作時呼吸苦を自覚し近医受診。肺高血圧を認め当院紹介となった。エコーで右心系拡大を認め、心臓カテーテル検査を施行。PAP 123/68(91)mmHg, Pp/PS= 0.88, PVR 20.8 wood.Uの高度肺高血圧を認めた。造影CT上、右上中肺静脈がSVCに還流し、上大静脈還流型PAPVRと診断した。肺高血圧治療を開始し、マシテンタン10mg,タダラフィル40mg,セレキシバグ3.2mgを投与した。半年後のカテーテル検査でmean PAP 49mmHg, Pp/Ps=0.35, PVR 8.6 wood.Uと改善を認め、さらに半年後はmean PAP 45mmHg, Pp/Ps=0.33, PVR 2.7 wood.Uとさらに改善し、心内修復術の方針とした。肺高血圧の改善とともに短絡率は1.4、2.0、3.2と漸増傾向にあった。拡大した右肺動脈により右肺静脈は遠位側に押し上げられ、卵円窩までの距離は約7.5cmと離れていた。心房内re-routingはPV,SVC狭窄の懸念から困難と判断し、Warden法による修復の方針とした。<手術>SVCはPV合流部頭側で離断し心臓側は縫合閉鎖した。心房間交通は認めず、径15mmの交通孔を作成。心房内で心房間交通孔とSVC orificeを舟形PTFE patchでroutingした。SVC再建はright atrial wall flapを用いて後壁作成、前壁は新鮮自己心膜で再建した。NO併用し人工心肺から離脱。洞調律。術後Pp/PSは0.5であった。<まとめ>高度肺高血圧を合併した成人期PAPVRに対し、肺高血圧治療と評価を行ったのち、心内修復術を施行した。SVC高位に還流するPAPVR症例では、Atrial wall flapを用いることで、余裕を持ったSVC再建が可能であった。