講演情報

[P7-2]FGFR1遺伝子変異陽性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症における臨床所見の評価

佐藤 直子1,2, 小笠原 敦子3, 曽根田 瞬2, 佐藤 詩子4, 門脇 弘子5, 岸 健太郎2, 野田 雅裕2, 田中 裕之1, 北中 幸子6, 田中 敏章2 (1.東京大学医学部附属病院 小児科, 2.たなか成長クリニック, 3.茨城県立こども病院 小児科, 4.三楽病院 小児科, 5.国際医療福祉大学 小児科, 6.きたなかこども成長クリニック)
【背景】FGFR1は、常染色体顕性遺伝形式を示すKallmann症候群(KS)・嗅覚正常低ゴナドトロピン性性腺機能低下症(nHH)の責任遺伝子である。FGFR1変異陽性例の臨床像は未だ不明な点がある。【目的】乳児期~成人期のFGFR1変異陽性例の遺伝型・表現型解析を行い、FGFR1陽性例の特徴を示す。【対象・方法】HH疑いの85例を対象に次世代シークエンスによるエクソーム変異解析を行い、FGFR1陽性例を抽出し、臨床評価を行う。【結果】11例(思春期遅発症7例、乳児期停留精巣・小陰茎1例、不妊症1例、nHHの家系解析2例)にFGFR1変異が同定され、家系例は7例であった(ミスセンス変異7例、スプライスサイト変異2例、ナンセンス変異2例)。nHH9例、KS1例、嗅覚評価不能1例であった。重症例[前思春期レベルのゴナドトロピン(Gn)値、精巣容量<3mLの男性]はスプライスサイト変異かナンセンス変異を有していた。典型的KSの女性例はoligogenicityを有していた。ミスセンスヘテロ変異陽性例の一部に、ほぼ正常な性成熟とGn分泌能を示す例、Gn分泌能が比較的保たれ、初診時検査では体質性思春期遅発症(CDP)との鑑別が困難な軽症例がみられた。双生児HHの家系解析では、児と母に同じミスセンス変異が同定され、母親は不妊治療で妊娠していた。下垂体機能検査で第一子はGn単独欠損症を、第二子と母は複合型下垂体機低下症(MPHD)を示した。【考察】FGFR1において、スプライスサイト変異・ナンセンス変異・oligogenicityを伴う場合、重症な性腺機能障害により典型的なnHH/KS発症が予測される。一方ミスセンス変異では蛋白機能残存による軽度な性腺機能障害のため、CDPと鑑別困難な軽症例やadult HHの存在が推測される。【結論】FGFR1陽性HHの性腺機能はほぼ正常~重症まで様々であった。FGFR1陽性例においてMPHDの存在も考慮する必要がある。遺伝子変異解析は、停留精巣・小陰茎を伴う乳児においてもHHの確定診断に有用である可能性が示唆された。