The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

Nov 7 - Nov 9, 2014Kobe International Conference Center
The Japanese Association of Educational Psychology
The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

Nov 7 - Nov 9, 2014Kobe International Conference Center

[JA05]自閉症スペクトラム障害における言語コミュニケーション機能の評価と支援神経心理学的、音声学的、学校臨床的立場から

林安紀子1, 坂爪一幸2, 近藤綾子3, 橋本創一1, 霜田浩信4(1.東京学芸大学, 2.早稲田大学, 3.東京学芸大学大学院, 4.群馬大学)
【企画趣旨】

DSM-5(2013)において,自閉症スペクトラム障害の診断基準は,「社会的コミュニケーションおよび相互関係における持続的障害」及び,「限定された反復する様式の行動,興味,活動」の主な2つの領域に注目している。また,これらの領域に関わる症状が,幼児期を過ぎてから顕在化する可能性についても言及している。
これらの自閉症スペクトラム障害の中核的症状は言語コミュニケーション機能の発達過程に影響し,さまざまな問題の背景となると考えられる。個々の自閉症スペクトラム障害児者の症状と言語コミュニケーション機能の関連を発達的観点から検討することは,自閉症スペクトラム障害の理解と支援に貢献するものと考える。
本シンポジウムでは,神経心理学的立場,音声学的立場,学校臨床的立場からの話題提供をもとに,自閉症スペクトラム障害の言語コミュニケーション機能の評価と支援について考えたい。

【話題提供】

<言語機能の神経心理学的症状と
臨床評価と支援>
(坂爪一幸)

自閉症スペクトラム障害(ASD)では概して言語が遅滞する。言語の確認は支援(指導)に欠かせない。ASDの原因は神経発達上の問題にあり,言語も神経基盤から理解して支援する必要がある。成人の失語症研究から,言語の神経基盤は「聴覚野(音声受容)→ウェルニッケ野(言語理解)→弓状束(伝達路)→ブローカ野(言語発話)→運動野(音声表出)」からなる。これに基づく言語の神経心理学的な臨床評価は次の項目になる(坂爪,2008,2011)。
1.言語発話:語音の構成(構音)・語音の連結(語構成)・語の連結(文構成)・語の連結規則(文法構成)・発話の流暢性(非努力性)・復唱・呼称(喚語)
2.言語理解:語音の知覚(音韻弁別)・語の認知(語理解)・文の認知(文法理解)・聴覚的把持力(聴覚的短期記憶容量)
3.言語運用:発話量・対人使用
ASDには言語の神経基盤の問題以外に,言語の神経基盤への制御の不全や他の高次脳機能との協調の不全とみられる言語現象(反響言語・独語・アプロソディー)も観察される。言語の各機能状態が明確になれば,支援を具体化しやすい。言語の障害(症状),ASDの言語の特徴,神経心理学的な言語の臨床評価,支援の枠組みについて考えたい。

<自閉症スペクトラム障害児の
発話におけるプロソディの特徴>
(近藤綾子)

自閉症スペクトラム障害(以下ASD)の発話において,一本調子で平坦な抑揚,独特なイントネーション,ささやき声や甲高い声といった特徴が見られることが度々報告されている。このような声の高さや話す速さ,リズム,イントネーションなどの超分節的特徴はプロソディと呼ばれ,文法構造や語義の理解といった言語的役割とともに,発話者の感情や意図などのパラ言語情報・非言語情報の伝達に寄与しており,音声コミュニケーションにおいてプロソディは重要な要素と言える。
そこで,ASD児と定型発達児の発話を収録し,音響分析と聴覚評価により,ASD児の発話におけるプロソディの特徴を検討した。音響分析の結果,ASD児は定型発達児よりも基本周波数の変動幅が小さかった。また,第三者による聴覚評価の結果,ASD児の音声は定型発達児に比べ,抑揚が平坦で,発話速度が遅いと評価され,さらに全体的な印象として何らかの違和感を伴うことが示された。以上の結果から,ASD児の発話において,定型発達児とは異なる物理的特徴と聴覚的印象の存在が示唆された。

<自閉症児の言語コミュニケーションと学校適応のプロフィール分析>
(橋本創一)
小1~4の児童の言語コミュニケーション発達を測定するLCSA(学齢版言語コミュニケーション発達スケール)は,5領域10下位検査で構成される
〔<1>文や文章の聴覚的理解(1.口頭指示の理解,2.聞き取りによる文脈の理解),<2>語彙や定型句の知識(3.語彙知識,4.慣用句・心的語彙),<3>発話表現(5.文表現,6.対人文脈),<4>柔軟性(7.柔軟性),<5>リテラシー(8.音読,9.文章の読解,10.音韻意識)〕。
ASIST学校適応スキルプロフィールは,A尺度[適応スキルの把握]にある生活習慣,手先の巧緻性,言語表現,社会性,行動コントロールの5領域と,B尺度[特別な支援ニーズの把握]の学習,意欲,身体性・運動,集中力,こだわり,感覚の過敏さ,話し言葉,ひとりの世界・興味関心の偏り,多動性・衝動性,心気的訴え・不調の10領域から構成されており,学校適応の様相をプロフィール化できる。
両スケールからみる自閉症児のタイプについて検証する。言語表現やリテラシーの獲得・巧みさが必ずしも適応のよさにはつながらず,障害特性によるこだわりや過敏さが柔軟性に影響するなどの知見がみられる。複数タイプの事例から自閉症特性と言語コミュニケーションについて言及する。


【指定討論】

(霜田浩信)
コミュニケーションが成立するためには,発信者からの情報を捉え(受信),その情報を処理(理解)し,処理した結果を受信者から返信(出力)していくことが必要となる。その際,扱う情報としては,言語情報のみならず,表情,アイコンタクト,身振りなどといった非言語情報,さらにはコミュニケーションを交わしている状況や文脈をも情報として捉え,それら情報を統合して処理していくことが求められる。
しかしながら,自閉症スペクトラム障害者は,診断基準にもあるように非言語情報の理解や使用に困難を示したり,社会的な文脈に適したやりとりに困難を抱えたりするためにコミュニケーションが不成立になりやすい。さらには,他者と感情や情動,関心事を共有していくことが少ないことがコミュニケーション不成立を助長させる要因になり得る。
したがって,自閉症スペクトラム障害児者におけるコミュニケーション支援を考えた場合,語彙や統語といった側面のみならず,非言語情報の捉え,状況や文脈の捉え,他者との感情や情動の共有についてアセスメントを行い,支援方法を立案していくことが必要となる。指定討論においては,各話題提供者の発表を受け,自閉症スペクトラム障害児におけるコミュニケーション成立条件と支援についてコメントしたい。