The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

Nov 7 - Nov 9, 2014Kobe International Conference Center
The Japanese Association of Educational Psychology
The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

Nov 7 - Nov 9, 2014Kobe International Conference Center

[JA07]偶発的・即興的に生起する学びの探究明日の教育をパフォームする実験的発表

藤原由香里1, 今井裕之2, 宮元博章3, 三野宮春子4, 長谷川和代5, 岡本恵太6, 大島秀子3(1.八幡市立美濃山小学校, 2.関西大学, 3.兵庫教育大学大学院, 4.神戸市外国語大学, 5.神戸女子大学, 6.三田市立志手原小学校)
■企画趣旨
ロイス・ホルツマンのVygotsky at work and playに啓発を受けた本企画は,発表者たちの対話的な学びそのものをパフォーマンスとして再構成すること“パフォーム・ザ・カンファレンス=Perform the alternative conference”を試みるものである。

I 背景(長谷川)
英語特有のリズムの練習に,チャンツが取り入れられることが多い。ところが,ある小学校外国語活動の授業で“What color do you like? I like red. What color do you like? I like yellow”とチャンツをし始めたとき,児童たちが「やりたくない」と参加を拒否した。理由を聞いてみると,「自分で尋ねて,自分で答えるのは不自然だ」と言うのだ。児童は言葉の使い手として直感的に「何か変だ」と感じ取ったのだと気づいた。それと同時に,教師たちが英語を学習内容として考え,言葉としての英語の姿を見失っていたことにも思い至った。

II テーマ(藤原)
学校など近代型教育施設では,はじめに到達目標(result)を設定し,それを効率よく達成するための計画(tool)が立てられ,確実に計画を実行すること(tool for result)が重要視されている。この文脈において,「結果が予測できないからこそ,挑戦してみたい。やってみる過程(tool)で,自分にとって意味のある何か(result)が見つかると思うし,試行錯誤すること自体が学習だ(tool and result)」という発達の学習観は許容されにくい。
はじめから学習内容・到達度・評価方法を固定する教育に代わる,偶発的・即興的に生起する学習のチャンスを捉えてファシリテート・スティミュレートする教育の可能性を,言葉の教育に焦点をあてて探究したい。

III 方法(藤原)
本シンポジウムでは,実験的にパフォーマンスを取り入れたい。どうしたら学会発表を,〈大きな真実を明らかにする結果発表の場〉ではなく,〈継続的な活動のなかの学びを協働でパフォームする場〉として再定義できるだろうか。そのような問いに向き合うときの,もやもやとした葛藤の渦中にある感覚や,それでも対話のなかで何かが生まれているという実感を,当日の来場者と共有したい。それに相応しい形式がパフォーマンスだと考えている。ビデオ上映,ワークショップ,事例報告,フロアとのふり返りなどを予定している。

■鍵概念の整理(今井)
英語・国語・小学校外国語活動といった言葉の教育,教育を支える言葉について議論する。
これまで外国語教育を支えてきた学習観は,「言語知識をまず学び,それを運用する」ことであり,母語での説明や翻訳を通して培った語彙文法知識を運用するプロセスを自動化することであった。そして教科書の編成や指導方法の主流もその学習観を反映してきた。
この従来の学習観は,小学校外国語活動の導入,英語によるコミュニケーション活動中心の指導法の指向により変化を迫られている。知識-運用型の言語学習では,創造的で即興的な言語使用が育たず,「考えたことが英語にならない」「英語がすぐ出てこない」のが多くの外国語学習者の実感である。そして指導者たちも「実際に使わないと英語は身につかない」と暗に学校外国語教育の限界を認めてきた。とにかく英語を使って,どんどん使う機会を増やすことが学校での外国語教育に収まらないからである。
社会文化理論の観点から,外国語を「使うこと」と「学ぶこと」を教室に位置づけ直すにあたり,以下の鍵概念についての理解を,事例を共有しつつ行う。(1)tool for resultとtool and resultの違い, (2)外国語教育におけるZPD,(3)improvisation, imitation and creativity。これらの概念の理解を通して,学校外国語教育に学習観の更新を図りたい。

■実験的ビデオ上映(全員)
「パフォーム・ザ・読書会」と題し,自分たちの過去の読書会の記録をもとに,短い自作劇のビデオを上映する。なぜフレッド・ニューマンが劇で学会発表を行ったのか理解に苦しんだので,自分たちも劇を作れば何かわかるかもしれないと思ったのが,事の発端であった。
発表者たちは,2012年から不定期で読書会を開催している。初めの頃はよく「パフォームするって具体的にどうすること?」「tool for resultのtoolと,tool and resultのtoolは,見分けられるの?」と頭を抱えては,薄紙を重ねるようにアイディアを出し合った。しばしば突破口になったのが,「この読書会こそが,私たちのパフォーマンスでありtool and resultだ」という考えだった。「いま私たちは,本を見てアレコレ言い合いながら,本の中に閉じ込められた知識を獲得しているんじゃなく,新しい知識を作っているよね。この知識がresultだね。そして,みんなで集まる読書会の場やアレコレ言い合える信頼関係がtoolだよね。たしかにtoolとresultを同時に作っているね」と。
読書会の劇により,濃密なZPD空間を表現してみたい…。
脚本 三野宮 / 監督 大島
キャスト 藤原・岡本・今井
編集 宮元 / 字幕 長谷川

■ミニ・インプロ・ワークショップ(三野宮)
インプロは,台本やリハーサルの無い,即興でストーリーを紡ぎだすドラマである。事前に用意したアイディアを使うとシーンが台無しになるので,刻々と変化し続ける「いま,ここ」の状況とフルに関わることが要求される。
人が発達するには,まだやり方を知らないことをやってみる必要があるが,それにはリスクが伴う。よって,実際にやるまではやり方がわからない活動を即興的にやってみる過程で,参加者どうしが失敗の価値を認め支援し合える社会的環境も同時に作ること(tool and result)が大切になる。
希望される方は当日ぜひ,インプロの手法を用いた2つのゲームに参加していただきたい。

I お絵かき(三野宮)
インプロの基本原則である“Yes, and”(受容し発展させる)の構造を持つゲームで,協働的・弁証法的なお絵かき遊び体験を提供したい。

II プレゼント(大島)
インプロの手法を使った代表的なゲーム「プレゼント」を体験し,それをもとに,思考・身体・感情をどのように使ってコミュニケートしているか,ふり返る機会にしたい。

■実践事例報告1(長谷川)
実践事例として,背景にあげた言い慣れるための英語のみならず,英語を心のこもった言葉として捉える試みを映像で分析・解説を行う。
ここでは,6年生の小学校外国語活動で行うCan you do ~? Yes, I can. No, I can’t.の対話文を取り上げる。映像では,Can you do shogi?と教師が尋ね,それに答える児童の様子を映し出している。Yes, I can. No, I can’t.に挙手するだけの活動であるが,児童の表情に注目していただきたい。対話文を与えられ,反復して定着させる活動では見られない生きた対話としての英語が存在していると考えられる。
このビデオを小学校英語教育を履修している学生に見せたところ,「自分たちはこんなに心をこめた英語を習ってきていないことに気付いた」という感想が多くあった。
自分を表現するツールとしての英語を体験することは,英語に慣れ親しむという目的を同時に体験していると考えられる。

■実践事例報告2(岡本)
本事例は,1年生の「ひらがな」の授業の一場面である。(2013年5月8日,児童数27名)
教師が「きょうのひらがな」を提示し,プリントへの書き込みの指示をした時,児童たちが次々に教師の「まちがい」を伝えようとした。提示された字が僅かに「お手本」と違うと主張したのである。この時,次のようなルールが観察された。
(1)発表者は黒板の前に立ち,椅子に上り,字を指さして「まちがい」を説明する。
(2)次に発表したい児童は,一人だけ黒板前(発表者の後ろ)で待機する。
教師が意図しない場面で,児童たちがルールが生成したのである。本事例において,「まちがい」を指摘する児童は教師の「ふり」をしており,それが自発的なルールに結びついたと考えられる。

■実践事例報告3(三野宮)
発表者は,「ドラマの手法に学ぶことで英語教育をどう変えていけるか」と考えるようになってから,「言葉は関係性のなかに生まれる」ということを意識するようになった。
本報告では,中学・高校の現役英語教師が対象の2つの研修会で扱った“assassin”というワークを取り上げる。演劇経験を持たない参加者たちは,「暗殺者-守護者-自分」という関係性だけをリソースとして,どのように言葉を見つけ,シーンを創っていったのだろうか。
映像と分析・解釈を紹介したうえで,英語授業で多く用いられる「対話文」練習が,関係性を軽視し言葉だけ与えていることの問題を考察したい。

■まとめ(宮元)
ビデオ上映,ワークショップ,事例報告などを,テーマ「発達を支える教育の可能性」に引き寄せて総括する。また,シンポジウムそのものを“パフォーム”しようと試た本発表を自己評価する。

■ふり返り(フロアとともに)
フロアの参加者と共に,本シンポジウム全体をふり返り,意味を共有・補完し合いたい。