The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

Nov 7 - Nov 9, 2014Kobe International Conference Center
The Japanese Association of Educational Psychology
The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

Nov 7 - Nov 9, 2014Kobe International Conference Center

[JB05]認知行動療法に関する生徒指導・教育相談研修会のあり方

嶋田洋徳1, 小関俊祐2, 楠見潔2, 中條信裕3, 蓑崎浩史4, 小関真実5, 菅野純1(1.早稲田大学, 2.桜美林大学, 3.川越市立名細中学校, 4.駿河台大学, 5.愛知教育大学)
企画趣旨
近年の学校教育分野における生徒指導研修会や教育相談研修会等において,認知行動療法が研修メニューとして取りあげられることが非常に多くなった。これは認知行動療法の特徴が,従来の心理療法と比較して,問題の解決を志向していることが学校現場のニーズと合致していることのあらわれであると考えられる。認知行動療法の研修においては,「理論」面から,児童生徒の問題を「学習の結果」として理解すること,具体的な行動目標を立案すること,行動や認知の機能的側面に着目すること,行動の変容や認知の変容の技法を用いて問題の解決を試みることなどが強調されることが多いと考えられる。また,認知行動療法は,従来の心理療法と比較して,シンプルな理論的背景を有することから,研修会等においては,比較的早く研修対象者の理解が促されることがしばしばであると思われる。しかしながら,認知行動療法の「実践」の際には,その展開の中で工夫が必要なことが非常に多く,認知行動療法を適切に用いることに困難を感じる教師やSC等の相談職員が多いこともまた事実であると考えられる。そこで,教師や相談職員自身が認知行動療法の「実践」が可能になることを目指して,行動コンサルテーションと称する研修が行われることも見受けられるようになってきた。すなわち,このような研修においては,必ずしも認知行動療法の専門家が直接携わらなくても,教師や相談職員自身が認知行動療法を適切に実践できるようになることを比較的強く目指していると考えられる。
学校場面における行動コンサルテーションは,コンサルティとしての教師や相談職員,およびクライアントとしての児童生徒の抱える問題の解決を主な目的としており,問題の同定,問題の分析,介入の実施,介入の評価という手続きを経て行われる。すなわち,教員や相談職員の行動変容を通じて,間接的にクライアントである児童生徒の行動変容を行うことになる(加藤・大石,2004)。一方で,行動コンサルテーションは,実践上のコストが高く,コンサルティや取り巻く学校環境の受け入れ体制が整っていないと必ずしもうまくいかないという実践現場の声が多いことも事実である。したがって,行動コンサルテーションのエッセンスを踏まえながら,学校現場の実情に合わせて,研修内容等を工夫していく必要があると考えられる。そこで本シンポジウムは,児童生徒に対する認知行動療法の有効性の検討そのものではなく,時間や機会の限られた認知行動療法の研修会等の中で,研修の効果を高めるために,どのような点を工夫したらよいのかを議論したいと考えている。企画者の他に,教師の立場から楠見先生と中條先生,研究者・実践者の立場から蓑崎先生と小関真実先生から話題提供をいただき,学校カウンセリングに精通されている菅野先生に指定討論者をご担当いただく。

【中学校における生徒指導・教育相談研修会の実態と課題】
桜美林大学大学院心理学研究科 楠見 潔
中学校における生徒指導・教育相談研修において,特に話題となるのが,通常学級における特別支援教育のあり方である。特別支援学校においては,「在籍している幼児児童生徒のみならず、地域における特別支援教育の中核として,さまざまな障害種についてのより専門的な助言などが期待されていることに留意し,特別支援学校教員の専門性のさらなる向上を図ること」とされている(文部科学省,2007)。また,小中学校等においては,学習障害やADHDなどを含む障害のある児童生徒に対して適切な教育を行うこととされており,すべての学校・教員に対して,「校内での研修を実施したり,教員を校外での研修に参加させたりすることにより専門性の向上に努めること」といった内容が通知されており,教員に対して専門性の向上のための努力が必要とされている。
しかしながら,必要性は高まりつつも,実際には具体的な方略が欠如し,結果的に担任教師の技量に任され,現状維持が精いっぱいという学校,学級も少なくない。特に中学校においては,小学校に比べて担任教師と生徒の関係性が弱まることや,教科担任制のため,対象となる生徒の状態像について教員間で問題や対応策を共有しにくいことなどが課題としていまだに残っている。
本話題提供では,このような現状を概観しつつ,認知行動療法という観点を学校現場に組み込むことが,教員や生徒にとってどのような利点があり,現在の課題に対してどのような対応可能性があるのか,検討したい。

【事例検討型研修会が教員の生徒指導方略に与える影響】埼玉県川越市立名細中学校 中條 信裕
児童生徒の問題に対応していくために,各学校では「生徒指導マニュアル」を作成している。しかしながら,「生徒指導マニュアル」には,生徒の“実態に合わせた具体的な対応”に関する記載が不足していると感じられる。そのため,児童生徒の問題への実際の対応においては,教員が“経験的に”対応を行うことが多くなり,教員によってばらつきが生じていることが推察される。このような教員の“経験”によるばらつきを解消するひとつの取り組みとして,生徒指導に関する「校内研修会」が実施されている。坂本(2011)は,児童生徒の個々の実態に応じた具体的な対処方略を身につけるには,事例をもとに実際的な検討を行う「事例検討型」の研修会を行うことが有効であると指摘している。さらに,平澤(2008)は,「機能分析的視点」(認知行動療法)を児童生徒への対応に活かすことを目的とした事例検討型の研修会を行い,教員の対処方略の変化について有効性を示している。ところが,有効性の検討においては,研修会直後の「短期的」な変化の検討にとどまっており,日常実践における「長期的」な効果の維持に関しては十分に検討が行われていない。したがって,長期的な効果が得られるような生徒指導研修会や生徒指導の仕組みの在り方について検討を行う必要があると考えられる。
本話題提供においては,昨年度から学校現場で実践している「機能的役割分担」を取り入れた行動連携について現状の成果と課題を報告し,研修会の効果を長期的に維持するためのより良い方策を検討したい。

【認知行動療法の教員研修の効果を高める実施法の提案】
駿河台大学心理カウンセリングセンター 蓑﨑 浩史
近年の生徒指導・教育相談にかかわる研修においては,児童生徒への共感的理解をベースとしつつも,積極的に問題をアセスメントし,解決を促す認知行動療法に基づく研修会が展開されている(肥後,2007)。その一方で,「今までの対応を変えられない」という理由から,認知行動療法に基づく研修で学んだ方法を実行できない者が存在することも報告されている(平澤,2008)。研修の効果性を高めるには,このような効果の差を生じさせる要因を明らかにし,その要因を考慮した研修を実施する必要があると考えられる。
土居他(2009)は,行動理論に基づく方法の実施を阻む要因として,行動理論に基づく方法論と教員の価値観との相違が影響しうることを報告している。このことを踏まえると,教員の抱く認知行動理論に基づく方法論に対する考えが,認知行動療法に基づく研修の効果の差を生じさせる要因となりうることが考えられる。
また,認知行動療法に基づく研修は,「認知行動理論に関する講義」と「事例を用いた演習」によって構成され,講義の内容を,演習のなかで事例に当てはめるという形式で実施されることが多い(藤原,2009)。しかしながら,河村(1996)の教授法に関する研究によると,理論を説明してから事例に入るよりも,事例を扱うなかで理論に結びつけていく方が,知識の獲得や応用を促進することが示されている。
本話題提供では,これらの知見を踏まえ,限られた研修機会のなかで,認知行動論に基づく研修の効果性を高める実施法を検討した研究を紹介し,その有用性と課題について議論を深めたい。
【認知行動療法研修会とストレスマネジメントの効果】
愛知教育大学教育臨床総合センター 小関 真実
いじめや不登校等の学校不適応に関する問題への対応や,予防的な目的から,認知行動療法に基づくストレスマネジメントが学校,学級単位で広く実施され,その有効性は確固たるものとなりつつある(高橋・小関,2011など)。そして,現在は,ストレスマネジメントの効果を高め,維持するところに焦点が当てられ,研究実践が行われている。
ストレスマネジメントの効果の維持のためには,児童生徒の適応行動に対して,適切なフィードバックが必要になるが(佐藤他,1998),その役割を担う存在の1人が教員である。たとえば大石(2004)は,ストレスマネジメントに代表される心理的介入を学校現場に導入する際には,教師の持つ介入に対する受容度を検討する必要があることを示唆している。すなわち,ストレスマネジメントのような心理的介入の効果への期待や実施に対する動機づけは教員によって異なるため,教員の受容度をアセスメントすることや,教員研修会を行うことで,ある程度の受容度を担保することが必要になると考えられる。
本話題提供においては,教師の「受容タイプ」による心理的介入効果の差異について検討するとともに,教師への受容タイプを考慮した教員研修会を実施することで,教師の行動変容と,それに伴う中学生を対象としたストレスマネジメントの学校適応促進効果の検討を行った研究について報告し,認知行動療法に基づく教員研修会が果たす役割について,議論を行いたい。

【認知行動療法からみた学校における課題と対応】
桜美林大学心理・教育学系 小関 俊祐
生徒指導・教育相談研修会において共有するポイントは,問題の性質や課題,対象などにかかわらず,対象となる集団における,子どもの適応行動は何か,その適応行動が起こりやすい環境を作る,問題行動が起こりにくい環境を作る,という3点に集約されることが多い。もちろん,個別の事例として理解する場合には,確認できる問題行動の機能は何か,という観点や,対象となる子どもの知的な水準や家庭環境なども必ずアセスメントすべき事項として挙げられるが,学校規模で共有すべき観点としては,特に先に述べた3点を強調したいと考えている。
認知行動療法の考え方に基づけば,三項随伴性による機能的アセスメントを行い,先行刺激と後続刺激を操作していく,という形になる。このような観点を教員間で共有し,学校の方針として位置づけることが,全教員を対象とする研修会の意義であると考えている。教員間におけるアセスメント方略および対応方針の共有は,認知行動療法に限らず重要な観点であるが,複数の立場で確認可能な行動に着目することが,重視すべき観点である。
このような立場から,本話題提供では,学校における生徒指導研修会と,それに連動する形で実施した行動コンサルテーションの手続きを紹介し,学校における課題と対応について検討を行いたい。