The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

Nov 7 - Nov 9, 2014Kobe International Conference Center
The Japanese Association of Educational Psychology
The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

Nov 7 - Nov 9, 2014Kobe International Conference Center

[JC05]教師・学校との協働による予防教育への実践研究を拓く

今川峰子1, 山口豊一2, 家近早苗3, 西口利文4, 梶田正巳(1.中部大学, 2.跡見学園女子大学, 3.聖徳大学, 4.大阪産業大学)
【企画主旨】

近年,少子化・核家族化・地域社会の希薄化などの社会的変化を背景に,家庭や地域の教育力が低下し,教師の指示に従えない,集団で行動できない,勝手に振る舞う,キレやすい子が目立ってきている。いじめ,不登校,学級崩壊は小学校高学年から中学生に多く,文部科学省の調査(2012)では中学1年生の増加数が最多である。学級経営が困難に陥ると,児童生徒の授業態度・学習意欲は低下し,学業成績も悪くなる。クラス内の人間関係にも悪影響を及ぼし,学級が崩壊したクラスほどいじめ,不登校は多くなるとの報告もある。
昨年,日本教育心理学会総会に来日した米国のSugai 教授から保護者や地域を巻き込んだ学校環境全体の健全性を確立することを目指した予防的介入プログラムの紹介があり,Jimerson教授からは,「効果的ないじめ予防プログラム」として,いじめ・暴力行為に対して集中的に介入することも大切ではあるが,学校全体のカリキュラムと休み時間を利用したいじめ防止プログラムが効果的で重要であるとの紹介があった。
日本の学校は,米国の学校に比較して集団学習が多く,給食・掃除・クラスの係りについてもグループ活動が多い。特に小学校では学級担任は「学級づくり」を大切にして,その上で教科の授業,教科外活動,さらに生徒指導に当たっている。しかも,明るく楽しい学級集団にするために,学級担任が自らソーシャル・スキル・トレーニングや構成的グループ・エンカウンターなどの技術を修得して,いわゆる予防教育を実践していることがほとんどで,研究者を交えてエビデンスに基づいた学校や学級全体への予防教育の実践研究は少ない。
そこで,本シンポジウムでは,教師・学校との協働による,学級・学校全体への予防教育を推進する実践研究に向けて,話題提供者からそれぞれの実践研究を紹介してもらい,大学の研究者と教師・学校・教育委員会の協働による日本の学校教育に相応しい予防教育を,今後研究する道を拓くために企画したものである。

【話題提供】
「学校マネジメントの推進と予防教育」
山口 豊一
児童生徒は,不登校,いじめ,生徒間暴力等で苦戦している。また,その生徒を支援する教師,保護者等も苦戦している。支援する側が懸命に取り組んでいるにも関わらず,児童生徒の苦戦が続いているのはなぜなのだろう。
一つに,児童生徒の教育的ニーズに現在の教師が適切に応えられていない現状が考えられる。また,児童生徒や社会の変化に学校全体が追い付けていない状況もあるだろう。前者については,つまり一人ひとりの教育的ニーズに応じたサポートの充実の問題である。後者については,学校全体で,社会の変化に対応したシステムの構築という課題があると考えられる。つまり,援助サービスの学校マネジメントの課題である。
さて,学校マネジメントの中核はマネジメント委員会が担う。このマネジメント委員会が促進されることによりチーム援助体制が整い,心理職の活用が促進される(山口・水野・本田,2014)。心理職活用が促進されることで,児童生徒の問題対応の困難さが軽減され,一次的援助サービス(予防・開発)が機能する。
マネジメント委員会には,「情報共有・問題解決」「教育活動の評価と見直し」「校長の意思の共有」の3つの機能があり,特に「情報共有・問題解決」機能はチーム援助体制の「学年会・委員会の活用体制」「保健室・相談室の活用体制」を推進して,学校における援助サービスの充実を促し,それは予防的に働くと考えられる(山口・水野・本田,2014)。

「既存の組織に予防教育を位置づける取り組み」
家近 早苗
学校には,子どもの予防教育のために活用できる組織(システム)が存在する。学校心理学(石隈,1999)では,学校の援助サービスのシステムを,マネジメント委員会,コーディネーション委員会(例:生徒指導委員会,教育相談部会,特別支援における校内委員会など),援助チームの3段階で説明している。援助チームは必要に応じて招集されるが,マネジメント委員会とコーディネーション委員会は定期的に開催される。これまで,コーディネーション委員会がその機能を発揮することで,教師個人の意識の変化,学校全体の援助体制の変化,さらには教師の子どもへの援助サービスが向上することが明らかになっている(家近,2010)。予防教育を推進するのは教師であり,予防教育に対する教師の意識が高まり,適切な行動がとれるようになることは,子どもの問題状況を早期に発見し,早期に対応することにつながる可能性がある。
そこで,コーディネーション委員会におけるコンサルテーションを継続した3つの中学校(A中学校,B中学校,C中学校)の実践事例から,教師や学校に起こる変容について検討する。各学校で取り組んだ問題は,A中学校では生徒の非行の問題,B中学校では生徒の非行の問題と援助チームの充実,C中学校は,学校改革を意図した教師の意欲の向上の問題である。さらに,教師・学校と協同する際のコツや配慮などについて話題提供したい。

「協同学習を通じた予防教育」
西口 利文
いじめ・不登校等の問題に対する予防教育を,協同学習の考え方を取り入れて行うことは,日常的に行われる教科教育の活動のなかで進められるため,多忙な学校現場でも取り組みやすいという利点がある。その結果として,活動自体の持続可能性を保証することにもつながる。とりわけ,教師が学習者に対して,課題や個々の役割を明確に示すなど,学習者間の促進的な相互依存関係を支える具体的な指導方法を適切に準備して行うならば,学習者たちが,多様なものの見方に触れながら思考力や表現力を高め,学級での良好な関係性を維持し,対人能力を高めていくことが期待できる。
さて,協同学習の取り組みに対する学習者の印象についてであるが,クラスメートの発言を聞いたり,集団で共通の課題に取り組んだりする特定の活動には,概して好印象がもたれている。他方で,具体的な取り組みを最初に導入するにあっては,学級や学習者の現状に応じて工夫をする余地があるとも言える。例えば,所属学級に否定的態度をもつ学習者は,そもそも協同学習に関する取り組みを避けたがる傾向にある。とりわけ,学級が混乱している場合は,適切な方法の選択および実践が求められそうである。学級全体や個々の学習者へのアセスメントを行い,学級や学習者の状況を踏まえた協同的な学びの方法を取り入れることで,より効果的な予防教育の実践につながると考えられる。

「学校・教育委員会との協働による予防教育」 今川 峰子
学校現場で三次的支援が必要な児童生徒を集中的に援助することも必要であるが,二次的援助の対象者を三次的援助に陥らせない,一次的援助で済む子どもを二次的援助の対象者にしない予防教育がとても重要である。そのためには,児童生徒に対する包括的アセスメントをきめ細かく実施することと,学校生活を送る学級・学年・学校全体を対象にした予防教育が必要になると思う。
①授業が分かるなど学業面を含めた学校満足度が低い,②友人との自己開示・親和得点が低い,担任教師との親密さが低い児童生徒が多いクラスほど学級経営は困難になる(今川・三島,2012)。学級経営がうまくいっているクラスでは二次的支援の対象者が少ないために,発達障害児に対しても,教師の支援は手厚くなり,周りの仲間もうまく援助するようになるために,派生的な問題を押さえることができる。ところが,近年,学級経営が困難になってきている実態がある。一旦学級が崩壊したような状態に陥ると改善することは非常に困難であり,校長・学年主任・担任教師の話し合いで援助の手を差し伸べようとするが,改善は難しく悪化する場合もある(今川,2013)。
教師・学校との協働で予防教育を推進するには,①先ず研究者が教育実践の専門家として,教育委員会とも連携し,②個々の児童生徒を包括的視点からアセスメントすること,③学校の風土を理解し,教師・学校との協働のもとに,閉じた「学級担任制」から学年全体,さらに学校全体の連携体制を構築するコーディネーター役を果たすことが重要である。