The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

Nov 7 - Nov 9, 2014Kobe International Conference Center
The Japanese Association of Educational Psychology
The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

Nov 7 - Nov 9, 2014Kobe International Conference Center

[JD04]発達障害児を対象とした感情の理解と調整の教育支援の可能性

武蔵博文1, 明翫光宜2, 石川健介3, 多村真由美4, 倉橋徒夢5, 澳塩渚5, 内田香奈子6(1.香川大学, 2.中京大学, 3.金沢工業大学, 4.金沢市立南小立野小学校, 5.こどもサポート教室きらり, 6.鳴門教育大学)
【企画趣旨】
個別の教育的ニーズのある子どもに対し,ニーズに的確にこたえる指導・支援を提供することが求められる。学習上または生活上の困難だけでなく,自己・他者の気持ちや感情に気づき,理解を深めるとともに,自己の気持ちや情動を調整して,変化する状況に適応的に対応することが大切となる。それが,他児との対人関係を円滑にして,集団への参加を高め,役割の担い,協同して活動することにつながる。
発達障害児に感情の理解と調整を育成することに関して,近年,認知行動的なアプローチに基づいて,ストレスマネージメント教育やソーシャルスキルトレーニングがなされ,一定の効果が報告されている。さらに,指導・支援のあり方を検討していく必要がある。例えば,子ども自身が感情の問題を理解することの大切さに気づくこと,学校や家庭の日常の生活において自ら実行できる具体的な対処を身につけること,発達障害児の多様な特性や生活する環境や状態に応じた改良がしやすいこと等である。
そこで,本シンポジウムでは,話題提供者がそれぞれの指導実践を提案し,指導の意義と方向性,その適用の仕方,指導の工夫や配慮すべき点などについて検討する。

【各話題提供の要旨】
明翫光宜「感情のコントロールプログラムにおけるバイオフィードバックの活用」
自閉症スペクトラム障害(以下ASD)の子ども達に感情のコントロールプログラムを適用するときに,いくつか困難に出会うことが多い。様々な困難の中の1つにリラクセーションスキルの学習がある。呼吸法や漸進的筋弛緩法,イメージを使った技法を学習するメニューがある(明翫光宜 2010 気分は変えられる.NPO法人アスペ・エルデの会)。このような視覚的資料を使うことによって,呼吸法の形式面(鼻から優しく吸って,口をすぼめて細く長く吐く)について教えることができる。
一方,リラクセーションによってもたらされる身体の感覚(身体感覚)は主観的な感覚でもあり,身体感覚をつかむことの難しいASDの子どもにとって「これがリラックスなんだ」と実感することは難しい場合が多いことを演者は実感した。そこで身体の状態を音や光などで知らせてくれるバイオフィードバック機器を援用することでリラクセーションスキルの獲得に以下の利点があることに気が付いた。
(1)身体がリラックスしている状態になったとき「これがリラックスという状態だよ」と支援者と子どもが共有できる
(2)普段の状態が「緊張している状態だよね」と緊張が高いことも共有できる
(3)リラクセーションを実施してリラックス状態になっていくことを確認できる
本シンポジュウムでは上記のポイントを中心にバイオフィードバック法の活用について話題提供をしたいと考えている。

石川健介・多村真由美「特別支援学級における感情調整プログラムの実施」
公立小学校の特別支援学級において,武藏ら(2012)の開発した感情調整プログラムを実施した結果について話題提供する。
本プログラムの対象児童は,発達障害のある5年生男子児童3名で,それぞれ交流・共同学習の際にイライラ感をもっていたり,クラスメートとの関わりに困難をもっていた。
プログラムは11月から3月にかけて10セッションを,当該児童の所属する小学校の特別支援学級において実施した。セッションには,対象児童の3名以外にも,参加できる場合は他の発達障害のある児童も参加した。
プログラムは大きく2部に分かれており,第1部では自分の感情を理解するセッション,第2部では感情をコントロールするセッションが行われた。特に第2部では,オリジナルキャラクターであるカンジョウレンジャーを用いて,実際の生活に活かす方法を話し合ったり,練習したりした。
このプログラムの結果,3名の児童がいずれも「不安場面」や「イライラ場面」において,その度合いが減少することを報告した。担任教諭も子どもたちの変化を感じており,プログラムの有効性が示唆された。
本報告では,特に特別支援学級において実践する際に有効であると思われた点,また通常学級での実施の可能性を中心に話題を提供したい。また同時に,プログラム実施の注意点をいくつか検討してみたい。

倉橋徒夢・澳塩 渚「カンジョウレンジャーから見えた子どもの成長」
参加児は当事業所の利用者で,支援学級在籍児が多かったため,「選ぶ」課題を主とし,保護者に隣席に座ってもらった。体を動かす課題も取り入れ,飽きないように工夫をした。
(1)「自分の気持ちを言語化する」:「うれしい」では自分の体や声の状態の変化と感情の名前のマッチングができていない児童もおり,彼らにとって大きな収穫となった。一方で,怒りの表情・表す言葉に触れた途端に,感情の平衡を失って泣きながら参加したり,不安な状況を想起して気持ちに崩れが生じたりした児童がいた。言語化することで,「崩れ」を抑えられるかと思ったが,今後の検討が必要と思われる。
(2)「自分と他者の気持ちは違う」:どういう場面で「うれしい」気持ちになるのか選択して,各自が発表する形式で行った。他児の意見が自分の選択と同じか否かを挙手させ,人それぞれに違うことを理解させた。選択肢のすべてに印をつける児童がおり,課題提示の方法や支援員の言葉遣いなど改善すべき点も見つかった。
(3)「それぞれの感情を持つ他者へ対応する」:「うれしい」気持ちは「うれしい」気持ちで返そう。「怒り」の気持ちは収めてもらおう。他者の「気持ち」にどのように反応すればよいかをロールプレイで行った。保護者の中には「子どもが社会的に正しい行動を知っている」ことを嬉しく思う方もいて,児童,保護者のいずれにとっても実り多い時間となった。
SSTの内容から実生活への般化が大きな課題であると感じている。

武藏博文「マイキブンカードゲーム:感情の調整方法を練習する」
公立小学校に通う小学校4~6年生の男児6名を対象に,感情の理解と調整をねらいとするSSTを行うとともに,児童が感情の調整方法を進んで繰り返し練習するように,カードゲームを活用した指導を導入した。
イライラや不安な場面を記した「マイナスモンスターズ」カードに対して,感情の調整方法を記した「カンジョウレンジャー」カードを組み合わせて戦い,モンスターを倒していくというルールを設定した。
児童一人ひとりに,ゲーム盤とカード,めくり式のゲーム手順表を用意し,手順表を使ってゲームを進めるようにさせた。指導者は適時補助に入り,児童が自らゲームを進めていくように支援した。バトルコールでは,どのような調整方法を使うのかを声に出して言うように促した。
感情の理解と調整についてSSTで学んだ後に,カードゲームを導入した。ワークシートで十分に取り上げきれなかった調整方法を学ぶことに役立った。ロールプレイでは個々の児童に合わせた場面設定が難しく飽きてしまうことも多いが,繰り返して練習することができた。これらと関連を持たせた指導の展開を検討することが必要である。
保護者からは,児童が取り組む様子に肯定的な評価が多かった。ただし,学校や家庭で生かされているかという質問には,半数があまり思わないと回答した。

【指定討論の要旨】
内田香奈子「感情の理解や調整について教育支援を行う際に,留意すべき点とは」
感情の理解や調整について教育支援を行う際,留意すべき点とは何であろうか。様々な観点からの考察が可能であるが,たとえば,どの感情をターゲットとするのか(単一の感情に絞るのか,複数の感情をターゲットとするのか),またその理由は何かという点を明らかにすることもその一つであろう。また,教育支援を行う際に,何をもって成功したと判断するのか,その基準を明確にすることも重要であろう。
これらの点を明らかにすることは,指導方法を明瞭化し,各児童のニーズにあった教材の提供が可能となるだけではなく,教材の改善や指導方法の発展につながるものと考える。これらの点に関し,話題提供いただいた内容をもとに討論をお願い出来ればと考える。
また,感情の理解や調整スキルの多くは,発達障害のある児童だけではなくすべての子どもに必要なスキルである。実際,本学で取り組んでいる感情教育プログラムは,基本的にはすべての児童を対象として実施されている。支援が必要な児童でも,担任や支援学級の先生のサポートの元,授業へ参加する場合が多い。
そこで,話題提供の先生方の取り組みで使用された技法や指導法において,ユニバーサルな教育でも利用可能なスキルのご呈示をお願い出来ればと考える。このことは,援助が必要な児童に対して学校全体での支援や指導が可能となるだけではなく,子どもたち同士の相互交流から生まれるスキル向上をも期待できるものと考える。