The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

Nov 7 - Nov 9, 2014Kobe International Conference Center
The Japanese Association of Educational Psychology
The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

Nov 7 - Nov 9, 2014Kobe International Conference Center

[j-sym04]青年期研究のこれまでとこれから神戸大学の青年期心理学を中心に

相澤直樹1, 谷冬彦1, 森岡正芳1, 原田新2, 白井利明3, 大野久4(1.神戸大学, 2.徳島大学, 3.大阪教育大学, 4.立教大学)
企画の趣旨
 G.S.ホールに始まる青年期研究は,100年を超える歴史をもつ。他の学問分野にくらべるといまだ歴史は浅いとはいえ,今日心理学の中では最も伝統的な一分野となった。戦後多くの先達の研究者により青年期研究の礎が築かれ,その尽力は1993年の日本青年心理学会発足に結実している(秋葉,2008,西平,2008)。このような順風満帆にみえる歩みの中,今日においても青年期に関わる心理学的研究にはいまなお多くの謎が残されている。青年期は,近代社会以降に誕生した社会歴史的概念でもあり,身体的,心理的,社会的諸要因が絡み合った複雑さをもつ。これまで青年期の定義や時期について繰り返し議論されてきた(都筑,2013)。さらに,かつて“疾風怒濤”と表現されていた青年期心性も,実際的な多様性や時代による変質が言及されるようになった。以上のような複雑さにもかかわらず,あるいは,複雑さゆえに魅力的な研究分野であり続けている。
 我々は,日本発達心理学会第16回大会のシンポジウム「青年期研究の最前線―さまよえる青少年の心」において,以上の問題への取組みを報告した(谷,岡田,相澤,山口,佐藤,2005)。その後,青年を取り巻く社会的歴史的状況が大きく変化しただけでなく,心理学そのものが大きく変容しつつあるように思われる。幸いにして,我々の所属する神戸大学には歴代にわたる青年期研究の伝統がある。このような時期に,あらためて神戸大学における青年期研究を中心に,これまでの歴史を振り返るとともに,その現在をとらえ,さらに,これからの展望を論じることにも一定の意義があるものと思われる。
岡本重雄と津留宏 二人の青年心理学者
森岡 正芳
 一冊の本が手元にある。『若き日の自我像 青年心理の研究』(昭和22年羽田書店刊) 著者は岡本重雄(1897-1981)旧制高知高等学校元教授。その後神戸大学教育学部教育心理学教室創設期の教授となった。この書物には,当時の高校生の16の手記が集められ,それに詳しい解説コメントがつけられている。課題は青年期の苦悩。自我の覚醒にともなう葛藤。苦悩する青年たちが続々登場する。岡本の人間知にあふれたコメントは,時代性の限界を超えて,インパクトがある。歴史資料として埋もれてしまうのは惜しい。まさに疾風怒濤の青年期を描いている。心理学のロマン主義とも称すべきスクールが,神戸にあった。岡本はその後も一貫して『人間の心理学』を志向する。心理学の一つの極北を示す。
 後継の津留宏(1915-1982)は,科学的実証主義による青年心理学の基礎を固めた。岡本との共著『青年期心理学』(朝倉書店1956)は青年心理学を学問的に定位した画期的なものである。一方で津留は,日誌や手記を素材とした伝記的研究方法の価値を認め,単一事例研究法に関心を持った。岡本の心理学を研究法として洗練させたのは,先駆的である。岡本との共著『手記 青年の人生探究』(同学社1955)があり,『一少女の成長を見る』(1955初版 1980年ナツメ社より復刊)によって,きわめて独創的な心理学を形成した。岡本も津留も生きることの悩みに応えうる心理学を志向した。当日はこの二人の心理学と現代の心理学の接合点を探る形で話題を提供したい。
青年期研究の現在
-精神分析的人格論の観点から
谷 冬彦
 かつて津留(1970)は,青年心理学を発達心理学の一部門であるという基本的立場へ還って,その体系づけをすることを企図した。また,当時の青年心理学の問題点として統計手法の未熟さについても指摘している。現在の青年期研究は,津留の時代と比し,洗練されつつあると言えよう。
ここでは,谷が行った研究と,谷が指導した若手研究者たちが行った近年の青年期研究を概観し,現在の青年期研究の一端を紹介する。
 谷は,自我同一性に関する研究,「甘え」に関する研究,自己愛に関する研究などの精神分析的人格論の立場からの青年期研究を行っている。中でも,谷(2001)は,多次元自我同一性尺度(MEIS)を作成した。また,谷(2008,2014)は,MEISの共分散構造分析の結果から,自我同一性概念には層的構造があり,精神内的な層である「中核的同一性」と,現実・社会との接触によって形成される外的な層である「心理社会的自己同一性」に大別できることを指摘している。
 このような研究を継承し,神戸大学出身の若手研究者たちが様々な研究を行っている。
 大西(2008)は,精神分析理論に依拠した新たな特性罪悪感尺度を作成し,探索的因子分析と確認的因子分析によって,青年期における罪悪感が4因子構造であることを確認した。
 稲垣(2007)は,自己愛的甘えに着目した上で,自己愛的甘え尺度を作成し,探索的因子分析および確認的因子分析によって3因子構造であることを確認している。さらに,稲垣(2013)は,自己愛的甘えの思春期・青年期における発達的変化を検討し,高校生においては,自己愛的甘えは,「中核的同一性」とのみ相関するが,大学生においては,「中核的同一性」と「心理社会的自己同一性」の両者と相関することを見出している。
 原田(2012)は,自己愛と自我同一性の関連に関して発達的変化を検討している。自我同一性の潜在変数を「中核的同一性」と「心理社会的自己同一性」として,共分散構造分析に多母集団同時分析を適用した結果,青年期の発達課題として,自己愛は青年期の間に低下させておくべきものであることを示唆した。
 このように,精神分析的人格論における概念に関する青年期研究が,現在の我々の研究集団では行われていると言ってよいであろう。
青年期研究のこれから
原田 新
 これまで我が国において様々な青年期研究がなされてきた。しかし,重要な検討課題と認識されながらも十分には取り組まれず,今後の課題として残されているものも多いように思われる。近年,心理学の研究の中に,より洗練された統計分析の手法や,web調査のような新たな調査方法が取り入れられてきている。今後そういった新しい技術や方法を活用することで,これまで残されてきた検討課題についても,取り組みやすくなる可能性がある。そこで,まずは改めて今後の検討課題について整理しておくことは意義あることといえる。本発表ではそのような課題として,縦断研究および高卒就職者の研究の少なさを取り上げると共に,それらに取り組んだ発表者の研究結果の報告も行う。
 まず,これまでの我が国の青年期研究は横断調査によるものが多いが,縦断研究を行うことで,検討の可能性が広がる事案は多い。例えば,縦断調査のデータを用いた分析を行うことで,横断調査のデータよりも幾分有用な因果関係の論拠を与えることができると指摘されるなど(高橋,2012),より厳密な因果関係の検討には縦断調査の実施が不可欠といえる。また,発達段階理論の重要な検討課題として移行のメカニズムの解明(小松・白井・高橋,2013)が挙げられると共に,近年の青年心理学会のワークショップやシンポジウムでは,青年期の始期と終期についての検討など,青年期の再定義に関する議論が盛んに行われている。このような議論にも,縦断的データの分析から得られる知見は有用といえる。
 次に,青年期(青年期後期)の研究では,高卒就職者を対象とした研究は極めて少ない。自身の将来について模索する時間的猶予を与えられている大学生と,そのような模索が少ないまま社会人としての役割を求められる高卒就職者とでは,例えば発達段階間の移行のメカニズムなどに違いが見られるかもしれない。しかしそのような検討はなされないまま,主に大学生を対象とした研究結果に基づいて,青年期後期の理論構築が行われているように思われる。
 発表者は,以上のような課題を考慮し,新規学卒者の新入社員(高卒,大卒含む)を対象とした,人格特性と職場不適応との関連に関する縦断研究を開始した。今後全4回の調査を行う予定であるが,本発表では2014年4月と7月の二時点での縦断的データから得られた結果の一部を報告する。