The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

Nov 7 - Nov 9, 2014Kobe International Conference Center
The Japanese Association of Educational Psychology
The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

Nov 7 - Nov 9, 2014Kobe International Conference Center

[kicho02]学びの場が生まれるとは

佐伯胖1, 城仁士2(1.東京大学・青山学院大学名誉教授,公益社団法人信濃教育会 教育研究所, 2.神戸大学)
【講演趣旨】
従来,「学習」とよばれていたことが,最近では「学び」と言い換えられることが多い。しかし,拙著『「学び」の構造』(東洋館)が刊行された当時(1975年),「学び方」とか「学ぶ」ということばは日常語(非・専門用語)としてつかわれていたが,名詞形としての「学び」ということばは世間的にはほとんど見かけなかった。実は,同書の書名は,慶應義塾大学の村井実教授(当時)に付けていただいたものである。原稿を書き上げた後,村井教授に原稿を読んでいただき,どういう書名にしましょうかとご意見をうかがったところ,しばらくお考えになって,「九鬼周造という人が書いた『「いき」の構造』という本がある。内容はちがうが,それにちなんで『「学び」の構造』というのはどうかね。」と言われて,即座に「そうしましょう。」と決めたのである。拙著『「学び」の構造』の底流には,「行動主義心理学の学習論」への批判がある。それは米国で,はっきりと反・行動主義の旗印の下で,「認知心理学」という新しい心理学の誕生を目の当たりにしてきたことによる。そこから,心理学用語としての「学習」ではなく,人間の根源的な営みとしての「学び」を問おうとしたのである。(「認知心理学」自体,それまでの心理学が扱ってきた「知ること」にかかわる研究を,人間の「知る」営みの原点から総ざらえ的に問い直そうという「運動」から生まれた。)『「学び」の構造』刊行から40年近くたった今日,行動主義心理学の学習論はかなり「下火」になってきている。しかし,「学習」を「学び」と言い換えているだけで,底流には行動主義的な学習観がぬぐい切れていない面があるのではないだろうか。このことは,「教育心理学」を「心理学」の応用と見るのか,それとも,「教育」ということ自体を,人間の「こころ」にかかわる営みとして問い直すか-当然,これまでの「心理学」の問い直しと,これまでの「教育」観の問い直しの両方を含む-にかかっている。さて,本講演の題名「学びの場が生まれるとは」だが,この「学びの場」をどう考えるかを問題にしたい。ここでいう「学びの場」というのは,当然,「教育の場」の中でのものだと考える人が多いだろう。その場合,「教育」というのを,「教え(instruction)」と考えてしまうと,そのなかの「学びの場」ということが,「教えによって生まれる」学習ということになれば,いつのまにか,行動主義的学習論の呪縛にはまってしまう。そうではなく,まず「学び」そのものを,「学ばないではおられない」人間の根源的な営みとみなし,それが生まれ育つ場,つまり「学びの場」を中心に据えて,そこから「教育の場」を再定義していくこと-これは,「教育心理学」の根本的な見直しだが-を,ここで提言したい。さて,そこで,「学ばないではおられない」人間が,なぜ,「学ばないではおられない」のか。その「答え」をここで明言し,その内容は講演を聴いていただくことにする。その「答え」とは,「人間は他者と関わり合う存在であり,他者と関わり合うことなくしてはいられない存在だから」というものである。
【講師のプロフィール】
<略歴>
慶應義塾大学工学部管理工学科卒業,同大学院管理工学専攻修士課程修了後,米国ワシントン大学大学院心理学専攻に入学,昭和45年同博士課程修了(Ph.D.),昭和46年4月より東京理科大学理工学部助教授,東京大学教育学部助教授,同教授,大学院教育学研究科長・教育学部長を経て平成12年3月東京大学を停年退職し,東京大学名誉教授となる。同年4月より青山学院大学文学部教育学科教授,平成20年4月より,移籍により同社会情報学部教授。平成25年3月に青山学院大学を退職し,青山学院大学名誉教授となる。平成23年4月より公益社団法人信濃教育会教育研究所所長。平成25年4月より,多摩美術大学情報デ
ザイン学科客員教授となる。
<主な著書>
『「学び」の構造』東洋館1975年
『イメージ化による知識と学習』東洋館1978年
『認知科学の方法』(認知科学選書10) 東京大学出版会1986年
『「学ぶ」ということの意味』岩波書店1995年
『「わかる」ということの意味[新版]』岩波書店1995年
『新・コンピュータと教育』岩波書店1997年5月
『マルチメディアと教育―知識と情報,学びと教え―』太郎次郎社1999年
『「学び」を問いつづけて―授業改革の原点―』小学館2003年
『「わかり方」の探求―思索と行動の原点―』小学館2004年
『幼児教育へのいざない―円熟した保育者のなるために―[増補改訂版]』東京大学出版会2014年
編著『共感―育ち合う保育のなかで―』ミネルヴァ書房2007年
共著『子どもを「人間としてみる」ということ』ミネルヴァ書房2013年
<翻訳>
R・ド・シャーム著佐伯胖訳『やる気を育てる教室』金子書房1980年
J・レイブ&E・ウェンガー著佐伯胖訳『状況に埋め込まれた学習―正統的周辺参加―』
産業図書1993年