The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Oct 7 - Oct 9, 2017Nagoya Congress Center
The Japanese Association of Educational Psychology
The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Oct 7 - Oct 9, 2017Nagoya Congress Center

[JA02]学校からの虐待通告迅速な通告と有機的な多機関連携に向けて

羽渕由子1, 田中周子#2, 渡邊元嗣#3, 齋藤祐子#4, 田中晶子#5, 仲真紀子6, 笠原正洋7(1.徳山大学, 2.立正大学, 3.NPO法人ぴーす, 4.立正大学心理臨床センター, 5.四天王寺大学, 6.立命館大学, 7.中村学園大学)
企画趣旨
 本シンポジウムでは,現在の学校での虐待の発見から通告までのプロセスを整理し,優良事例や反省事例から対応を促進する要因や阻む要因を抽出して,できるだけ早くかつ最少の手続きで司法面接(出来事の確認のための面接)につなげるための通告プロセスについて検討することを目的とする。
 虐待,DV,知人による加害など,親密な関係の中での被害は発見が遅れがちであり,対応も容易ではない。一方で,子どもの虐待対応が社会全体のシステムとして位置づけられ,地域社会の中で学校に期待される役割は増大している。
 児童虐待防止法,改正児童虐待防止法の施行により,児童虐待を受けたと思われる児童(18歳未満)を発見した者は,速やかに市町村や都道府県の福祉事務所や児童相談所に通告することが義務付けられている(児童虐待の防止等に関する法律6条1項)。そして,学校は特に子どもが生活時間の大半を過ごす場所であるので,教職員は虐待を発見しやすい立場にあることを自覚して,児童虐待の早期発見に努めなくてはならない(同法5条1項)。
 このような流れを受けて,各都道府県や各指定都市の教育委員会では,虐待対応マニュアルを作成し,適切な対応の徹底に努めている。また,学校内では研修や勉強会がおこなわれ,教職員の虐待認知に関する知識や意識も高くなっている。
 しかしながら,平成27年度における児童相談所への虐待相談件数を見てみると,学校等からの相談は全体の7.9%であり,警察等37.3%,近隣・知人16.9%,家族・親戚10.6%の次となっている(厚生労働省,2016a)。同様に,相談先が市町村の場合でも,学校等は全体の17.1%であり,児童相談所20.6%の次である(厚生労働省, 2016b)。子どもが生活時間の大半を過ごす場であることを考えると,疑われたすべての虐待が相談されていない可能性が考えられ,学校と児童相談所や市町村との連携の緊密化には余地があるように思われる。
 また,各学校や教育委員会で作成された虐待対応マニュアルを見てみると,虐待あるいはその疑いを認知した場合,管理者である校長・教頭に相談し,情報収集・統合と校内協議を経て管理者から関係機関に通告する流れが示されている(たとえば,文部科学省, 2006)。このような段階的なプロセスは,通告の遅れや学内での抱え込みの原因となっていないだろうか。学内でのプロセスが増えると,通告までの時間がかかるばかりか,虐待の確証を得るために,学内で何度も何度も事実確認がおこなわれることになる。介入過多は,子どもに精神的な二次被害を生じさせたり,子どもの記憶を汚染して証言の信用性を低くしてしまったりして,様々なリスクを高めることをもっと多くの教職員に知ってほしい。
 虐待通告を受ける側の児童相談所では,子どもの負担軽減および子どもの供述の信用性担保のために,警察および検察と連携して協同面接をおこなう取り組みが進められている。子どもの虐待を発見しやすい立場にある教職員が虐待の疑いを“いちはやく”通告でき,かつ,学校と児童相談所や市町村が有機的に連携できるような虐待対応システムを検討することは有益であると考える。
本シンポジウムでは,学校現場で活躍する実務家から優良事例や反省事例,日々感じる課題などについて話題提供いただき,司法面接研究の専門家とともに,学校と他の機関の有機的な連携に向けて,学校における虐待の発見から通告までのプロセスを再検討し,広く議論をおこないたい。

地域活動支援センターで相談活動をしている立場から
渡邊元嗣(NPO法人ぴーす)
 地域活動支援センターにおいて地域の子育て相談に対応するとともに,地域の教育委員会にも所属し,スクールカウンセラーや心理相談員として活動している。学校・家庭・地域を行き来していると,いろいろな虐待ケースに行き当たる。ただ,教育委員会の中にいて虐待ケースに対応する場合と,学校の中にいてスクールカウンセラーとして教員とともに虐待ケースに対応する場合の違いにずれや違和感を覚える。教育委員会の中にいて虐待ケースを見るとき,既に虐待ケースとして家族全体を見ている。しかし,学校では子どもを中心に子どもが表す現象を見ている。むしろ子どもが表す現象しか見えないのかもしれない。さらに,地域で相談活動をしていると,虐待として取り上げるケースだけでなく,日常の子育ての中に子どもの取り扱い方の不適切さ,いわゆるchild maltreatment(不適切な養育)と言われるものがスペクトラム的に散見する。「児童虐待」としてのchild abuseとchild maltreatmentとは国際的には同義に使われる用語であるが,日本では,child abuseは非日常的で,child maltreatmentはより日常的なものと見られがちであるが,それらは境目なく続いているのがわかる。教育機関が,そのようなchild maltreatmentを素早く感知し,迅速かつ適切に情報を収集し,専門機関へつなぐ役割についても考えたい。

学校における虐待通告:スクールカウンセラーの立場から
齋藤祐子(立正大学心理臨床センター)
 本来は,虐待通告に虐待かどうかの判断は必要ないはずである。学校においては,子ども自身からの訴え,あざや傷の発見,家庭の状況,親の病気,子どもの障害,相談室開放時の来室頻度の高さなどから「虐待があるかもしれない」と思われる場面に度々出会う。しかし,本人からの訴えがあった場合でさえ,先生方がすぐに虐待の可能性を認識することは少ないようだ。
 学校内には,「虐待はそうそうあるものではない」という前提があるように感じる。また,「子ども本位になる」,「子どもの視点に立つ」ことの難しさや,先生が考える「中立の立場」とは「大人本位の姿勢に他ならない」のではないかということも実感する。このような状況では,離婚した母が再婚し両親が揃った家族形態になったとき,子どもにとって良い環境が整ったと安堵はしても,新たなリスクが生まれる可能性を見落とし,その後の子どものサインに鈍感になってしまうかもしれない。あるいは,虐待の疑いに対して「様子を見る」という具体策を持たない対応が取られ被害が重篤化するかもしれない。虐待の発見,通告に積極的とは言えない環境と思われる。
 勿論,虐待通告がスムーズになされたケースもある。担任やスクールカウンセラーが発見し管理職に報告,管理職がその場で速やかに通告した場合などだ。結果は様々だったが,どの子も以前とは違うほっと安堵した柔らかな様子と,どこか誇らしげな笑顔を見せてくれた。通告者側の通告のしやすさは,通告機関や担当者への信頼や,これまでの成功体験が関係しているように思われた。
 虐待通告が現在の親子を救い,その将来にも大きな役割を果たすということを深く理解することが,子ども・親・行政への適切な対応につながるのだと思う。迷わず通告し,間違っていたら素直に良かったと思えるような環境や関係性を,学校内や関係機関との間に築いて行きたいものである。

子どもの面接研究の学校における活用に向けて
田中晶子(四天王寺大学)
 「子どもから体験した出来事を聴く」ことは,日々経験するありふれた行為である。特に学校等の教育機関において,教員は多くの子どもから,「その時何があったのか」,「どのような経験をしたのか」について様々に話を聴くことがあるだろう。しかし,子どもから体験した出来事を正確に聴き取ること(事実の確認)は,一般に想像されているよりも困難である。それが,いじめや事件・事故の被害体験,虐待被害体験等である場合には特に語ることが難しく,被害が明確にならないことも多い。そのような場合にそなえ,欧米では,認知・発達心理学の領域における研究知見に基づいた司法面接(investigative interview / forensic interview)が活用されている。
 司法面接では,出来る限り誘導を排除し,正確性の高い子どもの証言を得ることを目標とする。さらに,関係機関が協同で面接を行うことで(協同面接),何度も被害経験について聴取を受けることによる精神的な二次被害も防ぐことが出来ることから,近年日本においても,児童相談所や警察・検察が連携し協同で子どもからの被害聴取を行う取り組みの中で活用されている。
しかし,子どもが協同面接を受ける前に,周囲から誘導的な働きかけを受けたり,被害を話すことへの心理的負担が大きくなってしまっていると,協同面接での事情聴取が困難になる場合もある。
 ここでは,まず,養護教諭を志望する大学生を対象とした虐待通告に関する意識調査の結果を報告する。次に,教員や幼稚園教諭,保育士を対象とした,子どもから体験を聴くことと関わりの深い研究知見等を紹介する研修活動について紹介する。それらをふまえ,教育機関における速やかな虐待通告を実現するための,学校を含む多機関連携の在り方について考えたい。

引用文献
厚生労働省 人口動態・保健社会統計室(2016a).児童相談所における児童虐待相談の対応件数,児童虐待相談の相談種別×児童虐待相談の経路別 平成27年度福祉行政報告例 児童福祉 2015年度 第26表 Retrieved from http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/38-1.html(2017年5月15日)
厚生労働省 人口動態・保健社会統計室(2016b).市町村における児童虐待相談の対応件数,児童虐待相談の相談種別×児童虐待相談の経路別 平成27年度福祉行政報告例 児童福祉 2015年度 第34表 Retrieved from http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/38-1.html(2017年5月15日)
文部科学省(2006).研修教材「児童虐待防止と学校」 Retrieved from http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1280054.htm(2017年5月15日)